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向日葵な笑顔。

作者: 松田 悠汰

 僕が彼女と出会ったのは高校の入学式。

 一目惚れだった。

 好みの顔に好みの髪型、好みの声に好みの体型。

 彼女は僕の好きが詰まった宝箱だった。


 いつか、付き合えたらいいな。


 そう思った僕。

 そして入学式から2ヶ月程が経った。


 僕にも友達が出来た。

 その友達と帰り道に クラスで誰が可愛いのか話していたのだ。

 僕は恥ずかしくて 彼女の名前を言わずに 違う人の名前を上げた。

 そして、友達は 僕の好きな人の名前を上げたのだ。


 心臓が跳ねるのを感じた。

 友達は彼女のことが好きなのだろうか。

 可愛い って言うだけで 別に気になってる訳ではないのだろうか。


 僕は怖くなった。

 そして次の日。

 朝、教室に入ると 友達と彼女が喋ってるを見かけた。

 それだけでも 僕の心臓の鼓動は早まった。

 そして 彼女は笑っていたのだ。

 素敵な笑顔だった。ただそれは 友達に向けられた笑顔だった。


 その日から僕は友達との距離を離していった。

 僕なんかより 彼女と居た方が友達も楽しいからだ。

 毎日という訳ではないが、1週間に1度くらいの頻度で 彼らは朝 教室の隅で話している。


 またあの笑顔だ。

 僕は辛かった。

 友達が羨ましいと同時に恨めしかった。

 ただ、友達に この嫌な気持ちをぶつける訳にはいかない。

 もちろん、僕の友達というのもあるけど

 彼女達の仲を壊したくなかったのだ。


 僕が 耐えればいいこと。

 いつか諦めもつく。もういっそ、付き合ってしまえばいいのだ。

 そうすれば諦めもつくというのに。



 時は過ぎ、9月の文化祭の季節がやってきた。

 嬉しいことに 僕は彼女と作業班になれた。

 しかも、友達は他の班だから邪魔もされない!

 僕は 次の日から どう話しかけようか考えながら登校した。


 でも、彼女は作業場に居なかったのだ。

 僕は休みかな と思いつつ作業に取り掛かった。

 しばらくして トイレに行きたくなったので自分の教室の前を通った。

 教室をふと見ると 彼女が友達と喋ってる姿が見えたのだ。


 彼女は 学校に来ていた。

 自分の作業をほったらかして 友達と話していたのだ。

 彼女が そんないい加減な人だったことを残念に思った。

 それでも、好きな気持ちが変わらない自分の心が嫌だった。


 次の日から 彼女は作業場に参加するようになった。

 ただ、僕は彼女に話しかけられなかった。

 まだ自分の中で整理がついていなかったのだ。

 それに、もし友達ともう付き合ってたら 彼女に話しかけると彼氏である友達に悪いかな なんて思った。


 会話もせずに何日も経った。

 僕達の班は、予定よりもはやく作業が終わったので 他の班を手伝うことになった。

 僕は友達の班を手伝おうと思ったが その班に向かっていく彼女を見つけて 友達の班に行くのをやめた。


 もう見たくなかった。

 好きだった彼女の笑顔を見たくなかった。

 正確には 友達と話している時の笑顔を見たくなかった。

 嫉妬深い めんどくさい男だな、僕は。


 文化祭は 2日間行われる。

 1日目は生徒公開。2日目は一般公開だ。

 そして、無事に2日とも終わった。

 今は 2日目の放課後に体育館で開催される後夜祭の時間だ。

 文化祭に出た有志のバンドグループやダンス部、吹奏楽部がパフォーマンスをする会である。


 友達はバンドのボーカルをしていた。

 僕は 体育館の端から友達を眺めていた。


 そんな僕の元に彼女が訪れる。


 なんで こんな端っこに居るの?

 近くまで行こうよ。



 正直うんざりだった。

 彼女は 友達のバンドを見に行きたいだけなのだ。

 なぜ わざわざ僕を誘う?

 女子の友達と行けばいいじゃないか。


 だけど僕は彼女について行った。

 一緒になれた理由には不服だが、隣に立てる喜びが脳内を駆け巡った。


 隣をチラリと見ると 彼女がバンドを細い目で眺めていた。

 きっとボーカルを眺めていのだろう。

 嬉しい反面、こんな時間など早く終わって欲しかった。


 その時、彼女は突然呟いた。


 彼女 いるの?


 なぜ その質問に至ったのか分からないが 僕はすぐに否定した。

 すると彼女は そっか。 と呟いて またステージの方を眺める。


 そして 今度はさらに小さな声で呟いた。


 私じゃ、駄目ですか?


 心臓が飛び出るかと思った。

 鼓動が早くなる。息をするのも苦しい。

 耳が、顔が 紅潮していくのが感じ取れた。


 だだ…駄目じゃないれす。



 噛んだ。死にたい。こんな時に噛むなんて土に埋まりたい。


 彼女は隣で笑った。

 その笑顔は 1輪の向日葵のように 可憐であった。






 僕は いま下校中である。

 久しぶりに友達と一緒に帰っているのだ。


 いやぁ、やっと付き合ったかぁ。アドバイスとかするの大変だったんだからな?恋のキューピットに これからは優しくするように。



 その言葉は、今までの状況を整理するには十分だった。

 彼女はシャイだったのだ。

 文化祭の時も 同じ班になった僕と どう接するかを友達に相談していたのだ。それは朝の学校の教室の時も行われた。


 僕はなんて馬鹿だったんだ。

 勝手に友達に嫉妬して もう少しで彼女のことを嫌いになりそうだった。いや、それはないけど。


 僕は 友達にお礼を言った。


 友達は 好きなアイス1つな 。と僕に一言つけてから歩き出す。










 ママ、この味噌汁に入ってる昆布いらない。


 もう、何言ってるの!ちゃんと食べなさい!好き嫌いは大人になって恥ずかしいよー?


 そうだぞ。ママの作った料理は全部美味しいだろうが、それを残すなら 俺が代わりに食べてやる。


 もうパパったら おかわりちゃんとあるわよ。


 やった!!おかわりお願い!!


 はいはい。もう、昔から変わらないんだから。


 ママの作った料理は 世界一だぞ?


 うぅ…///もうやめてくださいっ!


 ママ〜、なんで顔 赤くなってるのー?


 可愛いなぁ、ママは。


 う、うるさいっ!!!///





 完

息抜きがてら書いてみました。

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