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真実

自分の語彙力・表現力の無さを痛感しています。今後の課題ですね。それと前書きはこれを最後に書かないことにします。文章の前にたらたら書いても仕方がないですしね。

 僕の病気は今日も平常運転だった。

 何故そう思うに至ったかと言えば話は数十分前に遡る。朝早く僕の部屋に訪ねて来たマシロに僕は歓喜したが、今はひとまず置いておこう。重要なのはマシロと一緒に入ってきたもう一人の人物だ。年は二十半ばだろうか、藍色のワンピースドレスを身につけ、肩まで掛かる程度の癖のある髪が特徴的な女性だった。その女性は僕を品定めするかのように全身を隈無くねぶるようにして観察する。

 マシロが女性を呼ぶ言葉から、その女性が昨日言っていたシラ姉という人物のようだった。

「あなたにはゆうきしか無いのね」

 シラ姉は唐突に僕にそう言った。クスクスと可笑しそうに笑うシラ姉を前にマシロは困ったような顔をしていた。

「本当にやるの?」

 そう言うマシロは何かを心配するようだった。僕にはわからなかったがマシロにはわかっていたのだ。この後何が起こるのか、その結果どうなるかまでの未来が。

「もちろんよ」

 シラ姉の次の言葉が問題の言葉だった。彼女はまるで僕の全てを見透かすように口にする。それはまるで狙って言ったかのように僕には感じられた。

「あなたに一つ頼みたいことがあるの」

 それでも僕の病気は発症する。

「あなたには絶対にできないと確信を持って言える案件よ」

 僕が嘘をつく時、そこに意思は介在しない。

「どうかしら? 引き受ける?」

 見栄を張る。できない、その言葉は僕の病気を呼び覚ます禁断の言葉だった。

「もちろん引き受けるさ、僕にはできないだって? そんなわけ無いじゃないか、僕に出来ないことはない、例えどんな事を頼まれたとしても必ず完遂してみせるよ」

「言ったわね」

 僕の顔が青ざめるのと同時にシラ姉はいたずらが成功した子供のように無邪気な笑みを浮かべた。不覚にも見せるその笑顔は僕には悪魔の微笑みに思えてならなかった。

「なら早速内容を伝えるわ」

 シラ姉の隣に立つマシロは申し訳無さそうに表情を曇らせていた。

「だけどそうね……言うほど難しいものではないわよ?」

 安心してね、と不安をあおるように告げる。僕はもう気が気ではなかった。訂正しようにも、こういう時には僕の嘘は働かない。そう、僕の嘘は厄災しか招かない。僕を助けることはないのだ。

「この町を出て北の位置にナイリの森があるのは知っているかしら、最近そこに賊を見かけるようになったと噂されているわ。私からの依頼はその真偽を確かめること」

 簡単でしょう、とさも当たり前のように言い放つシラ姉。それでいて一切の悪意も感じさせないから質が悪い。シラ姉は本当に簡単な案件を依頼しているつもりのようだ。

「そうそう、同行者を一人用意してあげるわ」

 一人だとあなた逃げ出すでしょう? と、まるで僕の心を見透かすかのような彼女の言葉に薄ら寒い何かを感じずにはいられなかった。

「逃げたりしたらわかるわよね?」

 彼女の最後の言葉は言い知れぬ恐怖を僕に感じさせた。


 僕の病気は今日も平常運転だった。



 退路も絶たれた僕は嫌々ながらもナイリの森に向かっていた。

 ナイリの森入り口手前の木にもたれかかるようにしている青年がいる。年は僕とそうたいして変わらないように見える、すらりとした高身長の青年だった。

「お前がライアか?」

「そうだけど」

 僕が頷くと彼は険しい顔をして勢い良く近づいてきた。見覚えのない顔だが名前を知っている事からして彼がシラ姉の言っていた同行者だろうと予想する。

「よろしくな。俺は、リヲンだ」

 彼は顔に見合わぬ緊張を感じさせる口調で視線はあちこち彷徨っていた。

「ああ」

 僕が返事を返すとそれっきり会話が途切れ沈黙が訪れた。お互い挨拶を終えたが、彼に至っては落ち着かない様子が傍から見ても一目瞭然だった。

 僕が痺れを切らして、ナイリの森に入ろうとすると、彼がそれを静止した。先ほどまで緊張していたとは思えないほどの威圧感を感じる。

「待つんだ。この森はただの森じゃない」

 僕は彼の言葉の意味がわからず聞き返す。

「この森は入る者を惑わす仕掛けになっている。見てみろ」

 リヲンが指差すのは一本の木だった。何か特別な木にはとても見えないごく普通の木を指差す彼に、僕は理解が追いつかない。

「他の木も見てみろ」

 言われた通り周りの木も見ていくと、一つ違和感を感じる。全ての木が不自然に酷似していた。僅かな差はあれど、どの木も同じ形、大きさをしていた。

「これが仕掛けその一だ」

 そして、とリヲンは言葉を続ける。

「この森の木は一見等間隔に、しかし気づかないほど小さなズレを計算して植えられている。だからまっすぐ前に進んでいると思っても実際は左に大きく曲がっていたということだってあり得るんだ」

「つまり人工的に作られた迷宮と言うわけか」

「その通り、これが仕掛けその二だ。そして更に厄介なのが……」

 彼の視線の先には薄紫色をした濃霧だった。それは森の中での視界を悪くし、進む上で最も難敵となる脅威だ。濃霧の中では一寸先も見えず、手探り状態で探索しなければならない。

「これが仕掛けその三だ。これでわかっただろう?」

「ああ……ぃ」

 今すぐ帰りたいぐらいだ。続く言葉はギリギリのところで飲み込んだ。リヲンの事をまだ理解していない中、不用意な発言は避けるべきだと判断したのだ。

 ここに来る前シラ姉に言われた事がある。

『この町で私は顔が利くわ。私の一言でお前をマシロの家から、いや、この街からでさえ追い出すことが出来る。それに生きて行く以上食い繋ぐためにもお金が必要よね? 私の依頼はれっきとした仕事よ。ちゃんとお金も入る。悪い話じゃないでしょう? マシロの家に住めて、仕事にも就ける。あなたの賢い判断を期待しているわ』

 シラ姉の言うことはもっとも至極なものだ。お金は大事。住む場所も大事。どちらも同時に手にできる機会は他にないかもしれない。

 だから何より僕は僕自身のために逃げるわけにはいかない。

「それでも俺達は行かなきゃ行けない」

 覚悟を感じさせる顔でリヲンは僕に言う。

「最後に今回の目的の確認をしよう」

 そしてリヲンは案件の内容を確認するように言いはじめる。内容はこうだ、一、森の探索。二、盗賊の存在の確認。三、可能であればアジトの場所を突き止める事。尚最後の内容はそれほど重要では無いようだった。

「行こう」

 リヲンは先導するようにその群青色の揺らし歩み始める。僕もそれに続く形で濃霧の中へと入っていく。



「ライア、いるか?」

「ああ」

 濃霧の中、少しでも進むのが遅いと前を行くリヲンを見失う。それはリヲンも同じで、少しでも先に進むと僕を見失う。それほどまでに濃霧は視界を妨げる。そのため森に入ってから何度も声掛けを繰り返していた。

「しかし……わかってはいたが……これほどまでとは」

 リヲンは不安を感じさせる声で呟いた。そして何かにぶつかる音が聞こえる。音からして前方を行くリヲンが木にぶつかったのだろう。

「なんて危険な森だ……」

 若干の痛みを感じさせる声音のリヲン。どうやらそれなりの勢いでぶつかってしまったらしい。森に入ってすぐ、僕に木にぶつからないように注意しておきながら、先程から何度もぶつかるのはリヲンばかりだった。

 前も後ろも、右も左も、視界の全てを奪う濃霧は想像以上のモノだった。森に入ってきた入り口にさえもう戻ることは出来ないだろう。僕たちは先もわからない中進むしか選択肢は残されていない。

 クォーーーン。

 森に住む獣の遠吠えが僕達の恐怖をさらに煽る。リヲンの話ではこの森に住んでいるのは肉食のプレデターという名前の獣らしい。目の代わりに嗅覚の発達した彼らにはここは絶好の住処であり狩場なのだろう。

 森のなかにいても日の影響は受ける。そのため夜に近づいてきたことで視界は暗いものに変わる。一層見づらくなったことでリヲンが野宿を提案した。

 正直歩き疲れていた僕はすぐさまその場にへたり込んだ。

「何が簡単だよ……」

 シラ姉が言っていた言葉は全て嘘だった。元々簡単だとは思ってはいなかったが、ここまで大変な目に合うことも逆に考えていなかった。つまり僕は楽観視していた。

 僕が座り込んだ事で先に行っていたリヲンが顔がなんとか見える位置まで戻ってきた。

「ハハ、シラ姉はいつもそんな感じだ。俺だって何度その言葉に騙されたことか……」

 何かを思い出したのか、リヲンはブツブツと呟いていた。あの時はどうだっただの、この時はどうだっただの、どうやら相当苦労していることが伺えた。

「そういえばライアの特性はなんだ? この組織に入ったからには何かしらの特性を持っているんだろ?」

「特性?」

 リヲンに聞かれた言葉に聞き覚えがなくオウム返しで聞き返してしまう。リヲンは僕のその反応を見て、心底可哀想な者を見る目を僕に向ける。

「なんだよ」

「いや、やっぱそうだよな……。シラ姉がご丁寧に説明してくれるはずがねぇ」

 暗く何かを感じさせる笑みを顔に浮かべるリヲンだがその心は笑っていないと顔が物語っていた。

「どうせ俺に説明をさせるつもりだったようだな」

 全くこれで何度目だよ、若干の苛立ちを孕んだ声音でリヲンが呟き、切り替えるように一呼吸挟む。

「特性ってのは個人が生まれ『持って』しまった突飛な才能だ。どれもくだらないし、大半の人がそれに苦しめられる。俺の場合は決戦体質グローリーといって、重要な場面、いわゆる勝負どころで強気になれるというものだな」

 俺が森に入る前覚えてるか? そう聞かれ思い出す。確かに森入る少しまでのリヲンは今とは全くの別人だった。

 今のリヲンは銀の瞳からは力強さのようなものが感じられる。

「特性ってのはだな、それぞれ肉体・精神・行動のいづれかに作用をもたらす。これが現状わかっている特性の性質だ。最も特性には未だわからない事が多いが、それでも特殊なモノであることには変わりない。人間の肉体・精神・行動に干渉するからな」

 リヲンから初めて聞かされた話はとても信じられないものだった。しかしそれと同時に、僕は一つ思い当たった。それは僕が今までの人生で散々悩まされた嘘をついてしまう行為だった。僕自身がつきたくなくてもついてしまう嘘は、今考えると特性なのかもしれない。

 そう思い至った僕はその事をリヲンに伝えた。僅かに思考を挟むと、リヲンが口を開く。

「恐らくそれがライアの特性だろうな。聞いた話からして、どうやら行動に作用をもたらしてるように思えるな」

 そしてリヲンは言いづらそうに少しの間を開けた後言葉を続ける。

「……中でも行動型の特性は最も厄介だ、自分の意思とは違う行動をする体を止めることが出来ないのだからな。肉体型の場合は少なくとも自由はある。精神型の場合であっても……いやある意味では精神型のほうが厄介かもな」

「どういうことだ?」

「そのままさ。特性が精神に干渉した場合、その本人自体が変わる」

 今の説明にイマイチピンと来ない様子の僕。それを察したリヲンは例を一つ挙げる。

「そうだな、例えばマシロだ」

 お前も知ってるだろ? というリヲンの言葉に僕は頷く。

「マシロはその精神型だ。 他がための色ノーカラー、特別厄介な特性だ」

「マシロは普通に優しくて、どこにも問題は無いと思うけど?」

 反論するような僕の言葉にリヲンは軽くあざける。無知な人間を憐れむように、この時のリヲンの目は冷めたものだった。しかしそれは別の誰か……そう、まるでマシロに向けているように僕には感じられた。

「精神型の特性持ちは人間としては壊れてるんだ」

 その言葉に興奮する僕をリヲンは、まぁ聞けとなだめる。

「お前はマシロが優しいといったな? あれはそんな生易しい物じゃねぇ。マシロには自分という者が全くもって存在しない。自分から何か行動を起こすことがない、完全に受動的な人間だ」

「だけど初めてあった時、マシロは迷子の僕を助けて、て、手を繋いで来たりもしたんだ」

 若干恥じらうように僕は言った。それに対してリヲンの顔は微動だにしなかった。

「それはシラ姉が全部作り上げたシナリオだ」

「そ、そんなわけ……」

 僕はリヲンの言葉を信じられなかった。初めて会った僕にあんなにも優しくしてくれた子を僕は他に知らない。

「それが事実だ。マシロは動く機械人形と言っても言いすぎじゃない。もしマシロ相手に恋心でも抱いてるなら諦めることを勧めるぜ」

 本当の意味で完全な受動的な人間。そこに意思は介在せず、全てを他に委ねる完全な人形。僕はその事実を未だ信じられず、そしてそれを否定する材料もなく、絶望と共に項垂れる。

 霧の中僅かに覗くリヲンの顔は切なさを帯びていた。


 

 









 


1~3日に一章で出せたら良いなと言う希望的観測は僕には難しいです。もう少し文章が早く書けるようになるまでは、とりあえず自分のペースで投稿することをお許し下さい。そして文章構成も試行錯誤しており安定せず、作り上げた設定を文字に起こすことの難しさ、読むことと書くことの違いに苦悩し、一人称・三人称の使い分けもよくわからず、とすごく課題だらけです。いつかそれら全てを楽々出来るようになれたらというのが僕の今のところの終着点だと考えています。

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