プロローグ
入学式、それは新入生にとって特別な日だ。
新しい通学路、見慣れない校舎、初めて知り合う学友。
今までの自分と別れを告げ気分一新でこの日に望む者もいれば、当たり前の様に普段通りにいつの間にか向かえた者もいるだろう。
だがどんな事情があろうと、この日が高校生活三年間の始まりの日である事は決して揺るがないのだ。
現に今、僕の居る教室では卸したての制服を身にまとい、浮き足立っている同級生で埋め尽くされている。
どこの中学から来ただの、何が目当てでこの高校に来たのか等、各々思い思いに談笑している。
くだらない内容ばかりで僕は会話に入る気にすら起きず、ただひたすら机に伏せて時が過ぎるのを待っていた。
「サッカー部の主将の波森先輩、超カッコイイらしいよ〜」
「やっぱり春明高校って言ったら演劇部でしょ!女部長がスッゴイ綺麗な人らしくてさ......」
「部活どこ入るか決めたー?部活絶対参加って意外とメンドイよねー」
「波森先輩と同じ羽黒中学なんだけど、あの人スッゲェ喧嘩強いんだよ。聞いた話によると......」
本当に、くだらない。
そんなどうでもいい話を僕の前でするな。
無駄な知識で僕の脳細胞を埋めるんじゃない。
僕は机から跳ね返ってくる自分の吐息の暖かさだけを感じながら、苦痛な時間を耐え忍んでいた。