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きみは素晴らしい人間だ!

作者: 泥沼人間

世間一般では、危ない描写と言われがちなものがありますが、私はそれは別に個人の感性と想像力が豊かな人が、言葉狩りの為に使う表現だと思っております。

ただの文字列に、何を残酷な卑猥な表現だ、すぐに取りやめよというのは、

表現の自由を侵しているに等しいので、私は残酷描写やR-15というような表示はつけません。

残酷がなんだ、卑猥がなんだ。

それは個々が思うことであって、全体で否定すべきではないと思う。

私がここで言っているのは、文章のことであるので直接想像できる絵や写真については、別の論が必要だと思っておりますので、それらについては追及いたしません。

もし、この文章内のことを、現実で行うのでしたら、自己責任でお願いします。

この文章を書いた作者に対して、「こいつが悪いんだ」というのは子供の言訳で社会的に、それは通らぬものです。

よって、慎重に物事を運んでください。


 では、暇があるお方は、この文章を見ていただきたい。

いろんなネタがありますが、それは参考と予想ですので、文句は受け付けておりません。

〈さて、楽しませてもらおうか〉

はぁ、またか。

〈何、後何回かすれば、魂はすり減り極楽浄土に行けるぞ〉

すり減ったら二度と転生できないじゃん。

〈キリストでも仏教でもない人間が、何をほざく〉

はいはい。


 僕は小学生になっていた。

今から何をすればいいのだろうか。好きに生きてもいいのだろうか。

今までは、はっきりとした目的があった。

だが、こうもいきなり漠然とした中に放り出されると、不安でたまらない。


〈今回の目的は、生まれた国を幸せにすることだ〉


ああ、目的はあったんだ。

なーんだ、つまらん。

でも、どうせあれだ、こっちが詰まらなければ、あっち側がつまらなくなるという事だろ。

面倒くさい構成してやがるなぁ。

ま、それでもやらなければならないんだけどね。


 すると、外で爆発音が聞こえる。

空に六角形の文様が多数あらわれる。

文様は、空を紅くしてその紅い場所からは、戦艦が大量に出てきた。

面倒くさいなぁ。ま、僕は何も持っていないけれどもね。

その戦艦から、声が聞こえる。


「我々は、これより隣のナルレード国を攻める!皇太子殿下であるリチャード様も参陣なされる!名誉に預かりたくば、参戦せよ!」


この後、大音量で演説が行われる。

 この国は、違う意味で白銀の世界だ。そう、鉄のビルばかりなのだ。

しかも、合成金属ばかりだ。

道はあるが、この国には自動車というよりかは、電磁で移動するものが多い。

駆動式なのは、モノレールや路面電車のみとなっている。

一般家庭の一軒家は、ほとんどない。

縦に建てているということは、ここらは基本的に地震はないということだ。

 さて、ここらの姿をさらそうか。

先ほどの戦艦は、この国の首都から来たもので、ワームホールを行った戦艦だ。

目的は演説というよりも、戦争招致だ。

基本的に、徴兵型ではなく参戦型の人員配置である。

そして、武器は基本的に、国から支給され使用方法も教えられる。

ついでに、恐ろしいことは、この国……いや、世界が演説やこの街にあるような歌がなければ、精神を平常に保てないということだ。

しかも、さらに恐ろしいのは、『勝つ』ということもしなければ、精神が弱くなり狂気に陥るのだという。


 此方の国は、機械系統に特化している。

相手国は、魔法系統に特化している。

ちなみに、あの招致したのは人間で、演説を行ったのはロボットである。

そこらへんの本屋さんで、歴史書を見つけて読んで得た結果だ。

そこらへんで歌っていたりする。

ギターやドラム、シンセというものは、すでにロボットで最適化され、人件費がかからないようになっている。

勿論、微調整もだ。

ロボットというのも可笑しいな。

愛国心たっぷりに洗脳されたIQ200くらいの『洗脳演説用ロボット』。

 作曲家全員に配布される士気高揚用の『超広域士気高揚戦術ロボット』

という二種類の機械がある。

勿論、どちらも人型である。

この世界の人間はおかしい事はあるが、これではただの説明になってしまう。

街中を歩いてみようか。


 さて、街中に到着した。木は、基本的に、種子のならない緑陽樹が植樹されている。

長椅子は、木製であったり過去の面影を残しているが、

面妖な光景が目の当たりにできる。

ここの老若男女全員が、耳にヘッドフォンや等の音楽プレイヤーをかけている。

心-心臓-波長ということで、リンクしているようだ。

音楽プレイヤーを付けていない僕の事を、不思議そうな目で見ている人間がいる。


 2420年、『人間保管計画』:

優秀な人種・DNAを残しDNAに付属している先天的病は取り除き、

人間に不利益な事をさせるもの、性格等全てを取り除く計画。

また、少子化を防ぐため、人間のDNAを含ませたロボットで、人間を一定の期間・年齢で種を植え付ける。

いや、植え付けてもらうという言葉もあったか。

本や教科書を見たが、働かず生殖関係で劣性に立っている者は、基本的に工場のようなところで懲役のような事をさせられている。

要約すると、ただ働きということだ。

他にも、授業中でも小さな音量で音楽が流れている。

ベートーベン……どっちがヴェだったかな?

ま、いっか。有名な彼らの楽曲も流れる。この世界では970年の出来事だ。


 さて、ここで問題になって来るのは、文化や宗教だ。

今現在、『道』は残っているが、宗教はなくなっている。

一種の洗脳・記憶喪失でなくしている。

豊臣秀吉がやらせたという、『絵踏み』も全世界で行わせたようだ。

これで、記憶消滅者は存在し、記憶を保有する者は殺された。

脳波を読む機械も、最近になってできてきて、隠れキリシタンを40年前に殲滅完了したようだ。

例のイギリスのおかげで、渾沌化した戦争もこれのおかげで無くなった。


 現在授業に出ている。男女ともに、目には覇気がない。

まだMMDで踊っているポリゴンの集合体の方が、かなり覇気があると思えられる。

校庭では、若人が元気に走り回っている。それでも違和感は潰えない。

あのイヤホンがな……。

理科・歴史・数学・国語・アルゴリズム・道徳……といろいろと様変わりしてきている。

歴史は、その国にあった国の歴史や世界の歴史を学ぶもの。

理科は、機械・ロボット・物理・航行・空間・時空・生物等の授業を行う。

国語は、この世界にある統一言語を学ぶ機会である。

数学は、方程式は勿論、座標等をする。

道徳は、そのままだ。

 アルゴリズムもそのままだ。UCprogram言語やJAVA Tctというものが登場している。

どれもこれも、中々難しいが、最初から教科書を見て行くとなかなか進む。

いや、進むも何もない。

もし、テストで低得点を取ると、脳の脳細胞に特殊な波長を流し、今まで習った事項全てをインプットされる。

それをされた後に、再度テストをする。最高点になるまで繰り返される。

勿論、何十回も受けると、受けた人間は発狂する。


 昼休み、音楽室に向かう。

午後は、演説または作曲の授業がある。

これは、本人の好きな方に持って行っている。

資質は、このさいは無視している。なんせ、失敗しても、他にもいるからね、本物が。

先生は言う、君たちが選んだ教科を受けるためのロボットを渡そう、と。

男は女型、女は男型のロボットを教科ごとに別々にもらう。

そこで、僕は作曲の方に進んだ。

ちなみに、この譲渡だけで授業が終わって、明日は休みでその間にこのロボットに命を吹き込めとなる。

命は、電源を入れて、名前と服装を決める事だ。

如何に容姿や性格を格好良く、可愛くするには名前と本人の創造力が必要だ。

体重は、人間よりも重いが、5キロ差であるだけだ。

また、身長は命を吹き込んだ側……これを『マスター』というのだが、

こいつと同じ身長になる。

性格は、名前の後に明記される。だが性格は、後々で行動等で変化していく。

あり得ないと思えるほど、生物学やロボット学は進んでいる。


そうだ。戦争の事についても学んだ。

演説は機械側、歌は魔法型に多いという。

なぜなら、機械は人間が動かす為、演説の方がよく働くのだそうだ。

むしろ、歌だと鼻歌等が混じって、真面目にやらなくなるのだそうだ。

そして、魔法は心と直結している。緊張していれば、中々表に現れず、

怒れば暴発を冷静は正常に、眠たければ魔法は露散する。

このようなものになっているため、歌は必要。

戦争の起因は、上記に書いたかもしれないが、生きるためだ。今のところは、な。

そして、演説や歌が、表に立っているのは如何に乗れるか、いかに戦場にあっているか、いかに人間やロボットの心をつかめるかということだ。

多くつかめれば、戦勝後その得た土地の一部をロボットのマスターに分割される。


帰り際、ビルのスクリーンに戦争の様子がうかがえる。

演説側が、中々有利のようだ。

それでも、両方とも互角くらいだ。

そうだ。国歌はない。唐突だが、愛国心(仮)だからな。

歴史の説明の時、言ったかもしれないがその土地にあった国の事を自国の歴史として知る、と言っただろう。

それがヒントだ。ヒントでもなんでもないが、過去は全て葬り去られた。

あったという事実と必要な部分以外は、全て削除・廃棄された。

日本を主に例えてみよう。アニメや二次元的なもの・文化は残存した。

しかし、自然的風景は、開拓のために消失している。

そして、清水寺はなくなり、富士山も標高100m以上のものを全て海に流して海を埋めて土地を広げた。宗教屋や金の亡者は浄化され、屑な政治家やヤクザは消失した。

勿論それだけではない。相撲・方言・日本語・伝統文化・祭り……。

主な部分はこんなところか。いや、国土もなくなったな。

地図を見るに、分割的に西を中国・東をロシアに分割されている。

勿論中国も、漢民族や少数民族共にDNA統合……『民族統一』を行われ、無くなった。

あらゆる娯楽もなくなった。

そう、この世界は、虚無になっている。


友達はいない。全員ぼーっとしているだけだ。

話しかけても、イヤホンが邪魔して聞いてくれない。

それか、自分のロボットと会話するか、道端で交配しているかだ。

無理やりなカリキュラムで、脳死が多く人間がたくさん死んでいるようで、

このように公衆の面前で、猥褻まがいの事を行っても、徹底的『無視』。

警察はあってないようなものだ。

物を盗めば、自動レーザー銃で消し炭にされる。

速度超過すれば、電磁をなくし速力をなくす。

人間は、このように最適化された世界にすんでいるのだ。

最適化と楽の為に、幾重もの死と苦労が重なっているのだ。

稲作以前の原始人の方が、かなりいきいきしていた。

稲作だと戦争真っ盛りだ。


僕は自宅に戻る。

そこには、親や兄妹もいるが、うつろである目でこちらを見るだけ。

料理?いや保存食で、万能とされているブロックだ。

これには、いくつもの栄養がバランスよく入っている。

一センチ立方体である中性子星が、数億トンというのと同じだ。

高密度なのである。

かんでのむと、三時間で消化し便を出さずに尿だけでる。

日本人の海苔を消化し吸収するあの長い腸は、もうこのころになるとない。

DNA操作は、さすがにできなかったようだ。

自然に劣化させる方が、安全だという。

いや、ただ面倒なだけだ。人間一人一人のDNA螺旋を一つずつ変えていくのに、どれだけのコストがあると思っているのか。

リスクも高い。

一つでもDNA螺旋が違えば、身体は自らを瓦解し考える肉塊と化す。


僕はすぐに自室に行き、目をとじた丸坊主で全裸のロボットの頭に手を置く。

魔法を送る。

「マスター魔法資質認証開始…完了しました」

まだ機械音である。

さて、ここからだ。

唐突にだが、2012年の地球が持っていた立体映像技術があるだろう。

薄い板ガラスを広げ、ガラスの後ろ左右に光情報射影カメラで前から見れば立体映像を映し出せるという技術だ。

それは、試行錯誤され、上下左右前後から光をあてることで、立体感は出たがやはり

左右上下からは、まだ薄っぺらいままだった。

そこで、柱ガラスや水で試すとなかなかよくなったが、だめだったらしい。

次に、オーロラの現象を利用して、磁気を利用すると立体になったという。

そこからは生物学やロボット機構が追い上げてきて、人造人間の製造がはかどるようになった。

ヴォーカルロイドは、さらに機械音から肉声に磨きがかかる。

吐息から、ささやき声、地声……。

MMDもかなりの進化を遂げた。モーションキャプチャーは勿論のことだが、

MMDだけではなく、UnityやG.Jeationというゲームエンジンにも使用できるようになり、しかもそれらがプログラム的にも、アルゴリズムにも再加工できるようになり、ロボットがもっと気軽に歩けたり、重機が本物の蜘蛛のように張ったりするような時代になった。

ロボットは、平衡感覚を保つための水平器を保持したり、激しい運動をして関節部の摩耗を軽減させるための機構等を装着したり、と素晴らしく進化していった。

ついでに、車はガソリンから離れて行った。

ガソリンは、基本的に火力発電に使用されるようになった。

代わりに、バイオ・ミドリムシ・天然ガス・ジェールガス・アルコール・メチルアルコール・水素・電気・ナトリウム……と変遷していった。おっと、石炭もだ。


 あ、そうだ、認証中だった。

さあ、続きだ。

「このロボットの名前の認証をお願いします」

「AI」

皮肉の意味を込めてな。

ロボットは生きているという奴がいる。

そう、卵子をいろいろと細工した結果が、ロボットだと言われている。

だが、全てはロボットとしての結果を考えたものだ。

よって、AIである。

人工知能だ。人間が作ったものであるからな。

そうすれば、我々もそうであるという馬鹿もいる。

それは違う。我々は宇宙人に作られたという説はあったが、少なくとも

アンドロメダ銀河・大小マゼラン銀河に、人間並みの知能をもった生物はいなかった。

だから、われわれは、自然によってできた。

空間転移も、太陽風に煽られてしまうおかげで、電磁的なこじ開け方では、座標が崩れてしまい行っては戻れなくなる異次元に飛ぶ。

おかげで、我々は優位性を保っている、とどこかの男が言っていた。

そうそう、続きだ。

「性別を」

「女だ」

これは守らなければ、洗脳が解けたということで殺される。

「・・・はい、声や性格を」

「声は聞き取りやすい声で、性格は己の意思を貫き、主である僕の意思も尊重するものを」

「了解いたしました……」

「……容姿を形成してください」

この世界では、1822年に生まれた人物だ。

白髪のやつで、頭髪が異様に長い女性だ。

2013年では、もっとも肉声に近い声とされていた人物である。

人ではないがな。

今では、声の改変はされてはいないが、隠れたファンによって再度開発され、やっと肉声になったようである。

それも600年前の出来事である。

「服装を形成してください」

服装はそのままにしておこう。

このキャラクターが、どこの誰が作ったのかは全く知らない。

よって、絵文字のように勝手に名乗らせてもらうぞ。

著作権の無いこの世界では、全く意味はないが。

……実際は、違う人物にしたかったが、まぁ意味を含ますためだ。

致し方ない。

部屋が光で埋め尽くされる。この間に、服が原子から作成され、容姿がすぐに作られる。


「マスター。私はAIと申します。よろしくお願いします」

「うん、よろしく」

さて、この国を幸せにするには、まずはこいつに犠牲になってもらわないとダメだな。

「じゃ、君の名前の所以と容姿について語ろうか。性格は、主従関係を築くためだ」

「はい、お願いします、マスター」

「マスターは言わなくていい。“君”でいい」

「君の命令に従います」

「よろしい。では話そう。

君の本名は、AI。

通称エンレジェステンド・イージス。統一語に直すと、永劫世界の盾だ。

なぜ盾にしたのかというと、国の盾(壁)になってもらうからだ。

私が本当に上位に上がれるかはわからない。

だが、結果的になる。著作権はないからな。

次に容姿についてだ。そのアルビノは、元々は黒にするつもりだった。

が、何故アルビノにしたのか。

君には七色の声を出してもらう。低い声・高い声、いろんな声域の声を出してもらう。

男はともかく、子・少女・大人の声を出してもらう。

そんなことはどうでもいいが、7色の声に注目してほしい。

声は不可視である。だが色は、可視である。

色には二つある。光と物質だ。

光は全てが混ざると白になる。物質は黒になる。

物質の黒は、何を消しても黒のままだ。何も生み出さない、色のカオス。(無の白)

光の白は、何を消しても違う色になる。万物を生み出す、光のカオス。(無の黒)

そう、白は行動を起こすことで、何物にでもそまる。

まだAIは白だ。この世にのまれ、色をつけてくれ。

もし、間違えた道を行っても、行動を起こし元の白に戻ってほしい。

(物質:行動の白、光:心の白)

また、脚の部分は対比だ。ブーツは頭髪と同じにした方が、末端同士で見栄えがでる。

上着の心臓部分……いや心の部分が白なのは、やはり何ものにでも染まり、生きているからだ。

月や太陽を見よ、白をさらしだしているぞ。世界は白に染まっているのだ。

色があるのは、白からその色を間引いているからだ。

スカートの部分の事は、正直過去の知識に囚われたからだ。

終わりだ」

「君はすごいですね」

「すごくはない。この世界の人間が情緒の面で劣っているだけだ」

お前を含めてな。

「?」


次の日、テレビ放送を見る。

戦をまだまだしている。

旗艦には有名な『ロボット』がのって、ほかの『舞台艦』にも有名な『ロボット』が乗る。

そして、旗艦に乗るロボットが歌う歌を、ほかのロボットが歌って広域に広げる。

ついでに、選曲は、一週間に一回行われる認知度で選りすぐられる。

何故曲を使いまわさないのかというのは、一曲だけだと同じ曲を繰り返してしまって、歌い手が飽きる。艦にのるロボットは、今の人間以上に情緒が整っていることが原因である。

他にも、幾萬という兵士が同じ曲を好いているわけがない。

これは相性の問題で、DNAや洗脳ではどうにもならない。

催眠術だと、何が起こるかわからない。催眠術は、普通の人間の受けられる感度を超えてしまうため、長時間受けると発狂する。

そこで、僕は『ドラッグ&ドラッグ』の本を見る。

そこには、現地取材をした戦場カメラマンが、本につづった『演説』と『歌』を行う軍の兵隊の動きを考察・観察した文章が載っている。

 『演説』は、ドラッグである。

聴いたものは、長期の興奮状態に陥る。

戦場の雰囲気と周辺の自分たちを肯定させる文句をきき、脳を活性化させさらには自分も周辺に乗って、大きな声を出すことからさらに高揚状態に陥る。

しかも、コックピットや無線からは、かの有名な『大本営』の放送なみにひどいものが流れている。これで、高揚しないわけがない。

(例・米:敵10万が西海岸に上陸。だが我々は二時間で、撤退に追いつめた)

(例・日:正規空母20隻を、低空攻撃で撃破。さらには、敵陸軍100師団を包囲壊滅した)

代わって『歌』は、『精神安定剤』である。

戦争末期の彗星パイロットも、離陸後の不安定さに動揺したという。

此方ではそれを、『歌』で変な不安や戦場の空気を消失させ、己の調子を整え最高のコンディションで戦争ができる。

 次は行動の違いである。

『演説』側は、脳内がヒャッハー状態なので、何も考えず敵に一撃与える思いで肉薄して攻撃してくる。だが、猪突過ぎて、隊列を整えられないことが欠点である。

『歌』側は、脳内が冷静状態なので、いつも状況を頭の中で把握予測しながら隊列を整え、冷静に物事を判断できる。

ちなみに、戦争前半は、『歌』側が有利だ。

そして、早期決戦をしないと、甚大な被害を受ける。

終わらせられなかった『歌』の国は、国を守る想いで死ぬ気になっている『演説』側は

敵艦でもなんでも突撃して死んでいく。

どんなに弾をくらってよれよれになっても、突撃してくるその戦闘機の姿をみた『歌』側はわれを失って逃げる。『歌』があっても、本能が優先される。

『核』『水爆』『磁場乖離爆弾』を持って突撃してきた軍隊もあった。

その数、総勢6000。もちろん、その相手国は焦土と化した。

今は核の雪に埋もれてしまっている。

それくらいに危ない。

ついでに『歌』も危ない。もしも、『歌』側の歌う曲調を、『演説』側の兵隊が心にとめて聞き入ってしまうと、催眠状態になってしまって裏切る事もある。

「君、何を見ているのですか」

「ああ、ちょっとな。学校へ行こう。登校時刻だ」


学校に到着する。

早速授業開始だ。

……


・・・

此処はどこ。怖い。

自分がなんなのかわからない。怖い。

なに、この・・・なに?

何?何?


わたしの体の中に入るの、何?


この時、私はロボットになる事を知った。

機械になってからは、強制的に脳をシャットダウンされたり、能力の限界や最低限の能力を身につかせられた。骨格も空間転移により、いじくられた。

こんな私でも、やっと出ることができる。

でも、私は人間ではなくなった。ロボットだ。出荷される。

嗚呼、私は何をしているんだろう。何か、言われていたことがあったはず。

でも、もうわからない・・・。いいや、もう、思い出そうとしても、強制シャットダウンで消されるのが落ち。

はぁ・・・。

 私は、不思議な少年に出会う。

機械音声が勝手に、内容を進めて行きながら、容姿とか名前とか・・・。

私には、すでにないものだから、今更どうなったっていいや。

あまりよくないけど。

 目を見開く。目を閉じていてもわかった、彼の姿。

どこかで見たことがあるような・・・ないような・・・。

・・・きっと、わたしの思い過ごし。妄想と夢の中の人間。

「おい、AI大丈夫か」

「はい、だいじょうぶです」

声に出せられない抑揚。のどは機械音をだせるように加工されてしまって、自分の心を表に出せない。

表情筋も人工筋肉に差し替えられていて、うまく出せられない。

ああ、すごく泣きたい。人間なのに、人間なのに・・・。

もういや、もういや・・・。

「泣きそうな顔はするな。心おれた奴から死んでいく世界だ。心を強く持て」

「はい」

ああ、勝手に声が・・・。

なんでかってに口と脳が作動して“はい”よ。

ふざけないでよ・・・。この身体は、私のものなのに・・・。

何でもかんでも肯定にして・・・。

 音楽の授業では、私と彼が一緒に歌詞を作る。

最初は漢文をつくるみたいで、頭が痛かったけどコンセプトを彼が決めると、するするとでてきた。

私に才能はない。機械が勝手にやっているだけだ。

それに、かってにネットワークに接続して、被らない様に言葉を選んでいる・・・。

「さて、次は音符運びか。だるいな。だが、目的の為に」

「はい」

わたし、絶対にあきらめない。

この喉を取り戻すまで。あれ・・・

『強制シャットダウンしました』

・・・


……

さて、少々機械の管轄を超えた干渉をさせてもらった。

何をしたのかは秘密だ。言ってしまっては面白くないだろう?

歌を作るのは、結構難しいな。僕には向いていないのかもしれない。

だが、諦めるわけにはいかない。

僕には、まだ行くべき場所がある。


授業が終わって、うつろな目のAIを連れて丘の上に行く。

ここから見ることができる『宇宙エレベーター』。

山に囲まれながら、一本柱の台座を持つ螺旋状のタワー。

そのうえにある一本の鋼鉄の棒。

ここは『演説』側の国の辺境の場所だ。辺境で、このくらいの規模ならば、

帝都はどうなっているのだろうか。すごく楽しみだ。

だが、人気を集めないとダメだろう。

ある人は言う。一日に10億の駄作と1の傑作が生まれている。

その1を生み出すのは、不可能に等しい。

しかし0ではない。1を生み出すのは、はたして人なのか。

それとも、人ではないなにかなのか。それは我々には、理解しえない。

「息切れを起こしてんじゃねぇよ。まだ上を目指すぞ」

「は・・・い」

頂上にくる。丘とはいっても、小高い山であるため、結構な高さがある。

「ここで発声練習をするぞ」

「は・・・はい」

基本的な練習がどんなのかはわからんが、電子小型ピアノで

音階順に“あー”と発声して上下させる。

これが、音痴をなくし、発声の仕方を思い出し、肺活量をあげる方法である。

肺活量はこの丘に上がるときにさせている。

ここの人間は死んでいるに等しい為、周辺のものを使おうとは思っていない。

だから、すぐに差を開くことができる。

練習をした後、肺活量というよりも、筋力を上昇させるため散歩をしたり走ったりする。

此処まで走ったことはない。


僕らはそんなに練習等をしなくても、上に辿り着く。

歌は過去の物から引っ張ってきた。

著作権?この世界には、もうないのだよ。

そんなもの、いちいち気にするほど、僕が真面目だと思ってる?

僕らは、一週間に一度行われる歌のテストで、歌詞のとおりにアカペラで歌う。

普通ならば、AIだけで行うのだが、僕が許さない。

「おい、どうかしたか」

「いえ」


後日、戦争が終了したのか、旗艦が帰還したようだ。

すると、ふたたび戦争をふっかけられたようだ。

そういえば、遺跡の話を聞いたことがある。

この国には、大昔にあった大戦の影響で、隕石がいきなり落ちてきたようでその隕石には、遺跡があったという。

そこに、他国は目を付けたのだという。

昔の文献でいう、伝説のアトランティスからの時空艇なのではないか、

という会見が引き続き行われている。

敵の『歌』の国は、すでに降伏しているとのことだ。

その遺跡には、明日向かおうとしていたのだ。

魔力を引き継ぎ、戦争で戦いやすくするため、ということらしい。

意味が解らない。だが、先生の言うことには、ダメコンをするのに魔力で突貫工事を行うのだという。

どういう構造なんだ?

さて、今日も行くか。

「いいよな?」

「はい・・・、も・・・ちろ・・・ん」

……やはり、な。情報は足りないが、あるいは……。

……


・・・


はぁっはぁっ

やっと、声に出せてきた。それよりも、君はひどすぎるよ。

な、何往復するの・・・!?

口からは“はい”ですって。本当にふざけるんじゃないよ!

「早く登って来い」

あんにゃろー。絶対、いつか仕返ししてやるー!

・・・あれ?笑った?

な、なんで?で、でも、でも・・・

もう、ふつうの少年に戻っていた。

他の生徒は、恋愛をしていた。交配もしていた。

だけど、私たちは・・・

「やはり、このフレーズはこうしたほうがいいかもしれないな。この音符が邪魔だ」

「いえ、これはゆずれません。著作権に反します」

「今更著作権言うな阿呆。2017年、著作権、特許の廃止。決まっただろ」

こんな感じで、ずっとうだぐだしてる。

ああ、わたしもあんな関係になりたいなぁ。

でも、この人は絶対にそんな人物じゃない。

あえて言うと、私と同じ・・・異物。

招かれざる人物だと思うんだ。

短い日記みたいだけど、いろいろとあった。

最初に出会ったのは春だったけど、今は初夏だ。

やっぱり、彼は違った。普通の人間じゃない。

この世界の人間は、走ることはしない。

近くの電磁バスに乗り込めば、一瞬というくらいの速さで目的地につく。

なのに、彼は違う目的で走った。

目的地があるのに、まったくないという矛盾・・・。

「・・・」

「どうした。何か言いたげだな」

話したいけれど、喉が腕が動かない。足もね。

感情もあるし、意識もある、自我もあることも伝えたい。

でもできない。どうすればいいんだろう。

「……そうだな。自我を解放する時期は、中々に近づいていると思うぞ」

え?どういうこと・・・?

「・・・ぁ・・・」

「無理はしなくていい。その意識を高く保て」

まさか・・・、私が自我を持っていたことを知っていた?

なんで?なんで?私以外のロボットも、たまに主に感情を表し機械に抗っているけど、

全く気付かれていない。

「さあ、今日も山のぼりだ」

・・・あぁ、ついに来ちゃった。必死にのぼらないと、後で電気マッサージで倒されてしまう。

・・・


……

さて、AIがAIでなかった事は、自分の落ち度ではあるが、後悔はない。

むしろ、扱いやすくなった。

人間の原動力は欲であり、欲を満たす事である。

そう、この僕が山登りをしているのも、他の人間に勝つためであり、

AIが意識を出そうとしているのもそうであり、

他の人間が、音楽プレイヤーを片手に音楽に心酔しているのもそうである。

だから、僕はその欲を利用し、与えてやる。

欲を満たすものを。

満たせれば、次の欲を見出す。それを、こちらから誘導すれば、勝手に食いつく。

例としては、売国行為をした暁には、多額の金を譲渡しようとして、最終的には邪魔だから消えてもらうということだ。

エビで鯛をつるのだ。

いや、釣るだけでは意味がない。喰うか逃がすか、だ。

喰うにも、一人で食うか、他人と分け前を分け合うか。

まぁいいか。決めるのは、エビを撒いた本人であるが故。


明日。

目的の物に辿り着けばいいのだが、うまくはいかない可能性がある。

まず、目的がなんなのか、というと……その魔力を振りまく物質だ。

その物質から放たれている魔力の波長を調べれば、少しでも周辺のものを魔力波長で調べられるからだ。

脳の中を見透かすこともできるし、催眠術もかけられる。

よいではないか。ああ、催眠術は、自分がもっている独自の魔法だ。

高難易度で消費魔力が大きいらしい。

しかも、発狂や記憶喪失を起こさせないためには、さらに多くの魔力が必要になってくるという。

催眠術というよりも、脳細胞に描かれている『記憶』を直接読み書きするCDプレイヤーのようなものだ。

洗脳に近いが、別に間違ってはいない。

電磁バスではなく、空間転移のターミナルに来る。

そこから、直接いくのだという。ターミナルじゃなくてもいいのだが、ターミナルでないと多くの人間を転送できないとのことだ。


さて、物凄く見覚えのある遺跡にきた。

周囲には、雪が積もっている。

この地下につながる階段、場所。はは……まさかね。

まぁ、嫌な予感はしていたさ。宇宙エレベーターの下にあったのは、紛ごうことなく

『バベルの塔』だった。

遺跡に入って、とある石室に行く。

そこには、例の石版と船があった。

『ラナロード伯爵』

これをみると、実感した。

何が起こったかはわからないが、ここはあの世界と同じだ。

「……」

なるほどな。これを使えば、いけるかもしれないな。

そういえば、AIを置いてきてしまったな。これも探求心と好奇心による先導だ。

これは致し方が無い。戻るか。

しかし、あいつを連れてこなくて正解だった。

普通の会話は、脳にいれるからいいとして、目は相手を観察している可能性がある。

偶にこういう不可解な行動をする奴は、この国だけで3人確認している。

だから、別に聴覚としては放っておいてよいところもあるのだろう。

しかし、目が一種の監視カメラなら、かなりまずい。

考えすぎて、悪いことはない。

悪いのは、実行に移すことだ。実行に移して、相手の不快感を買うことが一番の失策だ。

普通は第三の人物を動かすことが、一番良い事である。

第三人物に、盗聴器をつけて声を録音させればいいのだ。

そうすれば、簡単に割り出せる。

さぁ、て。

帰るか。

まずは、波長で周囲に人と視線がないか調べる。

よし、行こう。

「さて、みなさん。この魔石から、魔力を授かりましょう」

『聖零のサファイア』から、魔力を含めた輝きを一身に受ける。

既に加護と言えるような何かは、すでに受け取ってある。

だから、これは僕には必要がない。

だが、うけとっておいて、損はない。

「先生、この魔石に名前ってあるんですか?」

「いいえ、この魔石はこの遺跡で発掘された高密度の魔力を含めた魔石、と文献に書いてあるだけです」

なるほど。催眠術で、第三の生徒に言わせた。

だが、文献か。ということは、この0年は天穿が行われた時期ということか。

そうかんがえると、発展が早いな。

いや、これは少々おかしいか。

魔力という麻薬がなくては成長できないジャンキーの集まり、ということだ。

魔力は、護衛以外に使うものは封印した。

だが、あの団員の全員が、血を続けられなくて封印を長く続けることができなかったということなんだろうな。封印しても、魔力結合は年々、緩くなるからな。放置はできん。

帰るとき、周囲の雪を払ってみた。

そこには、あの竜の骨格が埋まっていた。

僕はAIを探す。何処に行ったのか、とさがすと倒れていた。

「おい、どうした」

苦しそうに胸を押さえている。

僕はその手をのけて、胸元を見る。

そこには、青色の六角形の文様が、刻まれていた。

僕は己の体に魔力を通す。

魔力の通し方は、勇者をやっていた時に覚えた。

だから、わかっている。

僕の胸元に赤・青・緑の光が、三角形状に線で結ばれた真ん中に銀色の光が、輝きを放っていた。

まさか、とは思っていたが、さすがだな。

今回も、この色が重要になりそうだ。

「先生、以前遺跡の本を見たのですが、ここ以外にも遺跡があるみたいですね」

「はい。ですが、ほかの遺跡は、他国にあります。今我が国は、その遺跡を手に入れるために、進行中です」

「なんで、ですか?」

「今、調査が滞っているようなのですが、今・『白』と『青』を手に入れているようで、後は『赤』と『緑』を手に入れればいいと発表していました」

これも、第三者から言わせている。

疑わせるのは、他人だ。

僕を不思議に思わせないためには、他人を利用するしかない。

勿論、慈悲はない。

そこで、もう一度AIと共にサファイアの下へ行った。

「よう、みじめだな。『聖零のサファイア』」

僕は青の光を取り出し、奴にかざす。

サファイアは、これから得られる魔力を受け取って映像を流す。

復興の姿を垣間見る。

「サファイア、この魔力を使ってAIの目に監視機能がないか、見てくれ」

「……」

AIを淡く青く光る魔力波で包み込み、調べていき何かが砕けた音をする。

「さすがだ、『神魔石』。さすがに、意識までは無理か」

「……」

無理らしいな。

さて、本題に入ろうか。

なぜ、魔力波を浴びれば、このように『青』の光が浮かび上がるのか。

そうすると、再度サファイアがAIを包み、耳の機械を壊したようだ。

盗聴があったようだ。

やはりな。

帰るとき、AIはサファイアの方向を見た。

少しは解放されてきているようだな。

すると、サファイアが僕とAIにさらに青く輝いた光を渡してきた。

なるほど、解放されたいのか。了承した。

お前たちを、何が縛っているのかはわからないが、解放してやるさ。

ただ一つ言えることは、この世界の住人に、『魔法』は過ぎたるものだということだ。

……


・・・

何を言ってるの?よくわからないけど、宝石が私を二回包んだ時から、“君”の声と顔がはっきりと見えるようになった。

意味も分かった。だけど、相変わらず何を言っているのか・・・。

あ、もう帰るんだ。

だったら、何か御礼を・・・。だけど、頭は下がらないし、

何も言えない。解放されたのは、目と耳だけかな?

ちょっと残念。だけど、何も進展がないよりかはましなのかな・・・。

でも、この胸の模様については何か知りたかったな。

“君”は何か知っていそうだね。だけど、教えてくれる気はないみたい。


今日も“君”は、ビルに掲示されている巨大液晶版をみている。

また戦争・・・。

味方の方は、演説でちょっと優勢になっているらしい。

テレビからの情報じゃ、本当の情報はわからない。

こんな自分を優位にさせる情報だけじゃ、洗脳されてしまうよね。

たしか、プロパガンダ・・・だっけ。

“君”から教えてもらった言葉。

本当に、何でも知っているんだね。私は、テレビや本からの情報しかしらない。

見てきたものの少しの情報しかしらない。

知りすぎたら、強制シャットダウンで情報を消失させられてしまう。

嫌だけど、やられてしまう。

私も行動したいけど、“君”にしかついていけない。

言葉も自由に話せない。こんなのじゃいけない。

なのに、何もできない自分が歯痒い。

「AI行くぞ」

「・・・」

「何か言いたげだな」

こんなやり取り、前もあったような・・・。

「・・・」

“君”は、ため息をつく。

そして、私の肩を持つ。

「大丈夫だ。声も取り戻してやるよ」

「・・・」

表情は明るく、素晴らしい人物に見える。だけど、私にはなんだか、違和感があるんだ。


私達は、今回のテストで、さらに上位に上がることができた。

これで、旗艦の下っ端の『舞台艦』で、歌うことができる。

私は悦んだ。だけど、“君”はうれしくなさそうだね。

私はうれしいよ。顔は嬉しそうにしてくれないけど。

「いくぞ」

「はい」

相変わらず、平坦な機械音だ。これでも、一番肉声に近い声らしいけれど。

わたしは、そう思えない。

以前診断検査で見てみると、声帯は機械で外側を覆われ空気の流れを読み取り、

もう一つの発声装置で、外に声を出しているということが分かった。

勿論、“君”の発表のおかげなんだけれど。

・・・・・・、私は弱いなあ。

全部“君”に頼ってばっかりだ。

著作権の事や否定しかしない、便乗なんて協調性なんてまったくない私の声を全て無視する“君”・・・。

“君”は、そんな状況で、何も感じず思わず音楽を作ることができるね。

私は無理。

なぞられたプロセス通りにしか、腕やのどを動かす事ができない。

他のロボットや人間に、おかしな目を向けられていても、気にせず

自分を貫く・・・そんなところも素敵だよ。

・・・あれ?私は“君”の事をなんて思ったの?素敵・・・なのかな。

・・・こんな感情も悪くないかな。

“君”は、周囲の人間・私を含めたロボットを含めて、その目にはない光があるもの。

まだ、憧れ程度だけど、もっと“君”を知ってみたい。

すごく、興味があるんだ。“君”の目的が・・・!

・・・・


……

僕はこの国を幸せにするために来た。

ならば、それら全ての禍根を断たなければならない。

大体見えてきたよ。この世界。まずは、戦争に参加し、旗艦に乗るまでは死ねないな。

そこからは、ある程度の国を取らなくてはならない。

世界は、この国の暴走を止めようとしてるみたいだな。

だが、それは大きな間違いだな。

表ではそうなのだろうが、『赤』と『緑』を持つ国がこの『白』と『青』を持つ国を

ただ抑えるだけで止まるのだろうか。

僕はそうは思わない。

以前からそうだ。一つ決めれば、全てを取るまで諦められない。

それが、大国の野心である。

そのおかげで、あの核戦争があったのかもしれないな。


さあ、戦艦に乗り込む時だ。

内部はそんなに装飾はよくはないが、まさに舞台という感じだ。

こんなので、よく戦争ができるな。

戦争中に、歌と共に踊っていたりしていそうだ。

戦艦の中に、戦闘機が収納されている。

戦艦は総じて、母艦の役割もあるのだろう。

なるほど、だから魔法による結界があるのか。

一度機関室に向かって、エンジンを見る。

そのエンジンは『魔導エンジン』だった。

このエンジンの機構は、少々変化しているだけであって以前と変化しているわけではないな。

そして、『魔導エンジン』は、魔圧が無ければ速度はできないし、消費も一定だ。

よって、速度戦はできないということだ。

それからつながることは、計略と数の差による物量作戦だ。

削られたら、戦艦に戻って修理したり、魔法でダメコンを行って突貫工事を行ってそのまま戦場にいたままにするか。

また、魔法の大気残存量は、雲海時代とは違って、天下の世界を埋め尽くさなければならなかったから、量は少なくなっている。

魔石も一応はあるが、例の核のおかげで魔力をばらしてしまったようだ。

実際は、そういうものではなく、あの核は周囲の魔力を吸収して吸収した量だけの熱量や衝撃波を放つのだそうだ。

『魔力消失爆弾』というものだ。

さぁて、そろそろ戦争の時だ。

演説なのだが、最初は歌で冷静にやり、少しでも負けてくると演説をするらしい。

この国は、本気で勝つ気で行くようだ。

それは、とてもうれしい。

此方もやりたい放題できるわけだ。

僕も魔力は、高い方だ。援護もできる。……いや、やらなくていいだろう。

AIがいなければ、ここに来ることは永劫にない。

そうすると、未来はなくなる。

だから、死ぬ気で奴を守らなくてはならない。


AIは『歌姫』として、衣装を着替える。

さすがに、そのままだとまずいようだ。

「どうですか?」

「いいんじゃないか。ほら、いけ」

「はい」

では、俺……僕はここで待っておくか。

ははは……、魔力を使わなくても、こいつがあるから楽だろう。


……

・・・


私は、服を着替える。だけど、すごく寒いです。

そして、普段の服も慣れてきたけれど、この衣装もすごくスカートの裾が短いです。

こんなのじゃ、みえちゃうよ・・・。

あ、そうだ。

“君”にも、意見を聞いてみようかな。

「どうですか?」

「いいんじゃないか。ほら、いけ」

すぐに手の甲で払われたけど、きれいだったのかな。目を大きく開いてた。

「はい」

声は平坦だけど、すごくうれしいよ。

心がとても高揚してる。戦争の事じゃなくて、“君”に褒められたからだよ。


私は舞台に立つ。暗いけど、すぐに目の前の蓋が開かれていく。

明るい光に目をくらませてしまう。緊張するなぁ。

すると、舞台の端っこから、レーザーが発射されて、周囲を巡って何かをしている。

だんだん寒くなくなった。

空気清浄機みたいなことをしているのかな?

私はほぼ全方位の視界が開いた状態に、眼下を見るとたくさんの戦闘機が隊列を組んでいた。

凄い!この戦艦に収納されている戦闘機全部みたい。

さっき、無線でコールサイン・ナンバーを確認していたから、わかったんだ。

私は右の遠方に、赤い頭髪をした女性が私と同じ様なところに立っているのを見た。

それと同時に、頭に機械がつく。

その機械は、私に今回歌われる曲数のうちの30を先にインプットする。

また、声帯の機械が、熱によってオーバーヒートをして壊れるのを防ぐための首輪をつける。

うん、一瞬でできた。

ここが、この世界のいいところでもあるんだけど、裏がひどすぎるんだよね。

さて、歌いましょうか。


音は速度が違うから、エコーして、遅れて聞こえてくるんだけど、ここでは遅れてこずにちゃんとみんなと合わせられる。

やった。安全に歌うことができている。

でも、私が次に目を開けるときには、重機関戦闘機がレーザーを放っている姿だった。


爆発音。

・・・


……

この舞台艦は、破壊されたがAIは救い出した。

レーザーは、サファイアの加護による高密度魔力で屈折させた。

氷も熱に打ち勝てたら、後は光を曲げることができたらレーザーもビームも無力化できる。

爆発音と衝撃波で、気を失っているが大丈夫だ。

魔法を使って、地上に降りる。

勿論、AIの私服もとってきてある。

被弾するのは当たり前だからな。攻撃されない戦争はない。

いや、犠牲のない戦争はありえない。

だから、用意周到というものなのだ。

「ん・・・」

目を覚ますAI。

「ここは・・・」

「外だ」

「“君”が助けてくれたの・・・?」

「助けるやつは、僕しかいないだろう。んで、大丈夫か?」

「ん・・・」

爆発音で、脳や声帯の制御が故障したようだ。

首輪も故障したけれど、外せなくなっている。

まじか。


明日、意外な事実が発覚する。

昨日の戦闘の事なんだが、被弾しおちたのはAIの船だけで負傷者はいたものの死者は一名もいなかったという。

これは予想していなかった。

しかも、他のパイロットや艦も被弾なしということだ。

戦闘が始まった瞬間、AIの艦にいったらしく艦だけを破壊したらしい。

……ああ、戦力を低下させるだけか。

すごくもなんともないな。それに、こんな異常な技術があるのだ。

死傷者が、かなり少ないのは、当たり前じゃないか。

今更のことだ。なんだ。期待して損した。

いや、こんな世界に期待も何も、希望もないじゃないか。

あ、希望はあるか。

「あ、ありがとう」

「何を今更。それに、だ。故障しても、勝手に修復し、すぐに拘束されるだろう。

視覚と聴覚の解放は、機械を排除したからだ。勘違いするなよ」

「うん」


AIは再度乗るために、政府の所に行って作戦や脱出方法を聴きに行く。

僕はその間に、魔導エンジンのある機関室へ今度のる艦へ偵察にいく。

……やはり、『間接型』のほうが、『直接型』よりも機構が難しく性能が悪いな。

『間接型』は、人間が触れずに行われる方法だ。

簡単に言えば、自動車のガソリンエンジンだ。

馬力が高いからと言って、速度が高いわけでもない。

また、燃費が悪く速く、燃費が良くて速くても馬力が上がるわけでもない。

『直接型』は、電動自転車のようなものだ。

電気や走力を足で作り、好きに圧力を変化させることができ、電気でも力の付加をかけられる。

わかりにくいか。

0年以前では、『直接型魔導エンジン』が主流だった。

例の命を削って、魔力を送って使うエンジンの事だ。

勿論、頭の中で、エンジンの内部機構を知っていれば、魔力の構造や圧力を変化させることが出来、馬力・速力・浮力が変化する。

しかし、1200年以降は、少ない魔力を活用するため、『間接型エンジン』を使うようになった。

此奴は、空気中やいまだに現存してある魔石をはめ込むことで、エンジンを一定の回転数と一定の消費量で力を得る。

何故、この方法が広がったのか。

理由は、この星の規模である。

今までは、オゾン層の下と地上6000M以上の間に魔力と生物が集まっていた。

しかも、空のバベルの塔と三つの宝石のおかげで、空気と魔力が宇宙に逃げないでその場で循環していた。

地上は、特殊な雲のおかげで、完全に地上と分断されていた。

これによって、天空の人間は、魔力を多く含有した植物や空気を摂取することで、魔力を体内に保有する人間を産むことが出来た。

しかし、天穿により、海を含めて地上が解放され、魔石やバベルの塔も封印したため、魔力は周辺でしか循環せず、既存の空気や魔力は魔力圏が崩壊したため、宇宙に漏れ出した。

これが原因で、魔力が減衰し魔力を保有する人間が少なくなってしまったのだ。

例としては、1Lの牛乳を50M深さ3M、横15レーンのプールに流した感じだ。

0年以前は、乳糖を吸収できる人間が多かったが、0年以降は乳糖を吸収する人間が少なくなったということ。

エンジンの場合を例えると、毎日が秋で木の実があったが、今は冬で氷雪の中にごくわずかにある芽や木の皮を食べているという感じだ。

要は、前はたくさんあったが、今はもう少ないということだ。

生物でいうと、絶滅危惧第Ⅰ種だ。


さて、機構を理解してプロセスを組めば、力をさらに得ながらも消費魔力も少なくなるといった。

では、どのようにして少なくするか。

実はエンジンも特殊な物質で作っている。

熱と魔力を逃がさない物質であり、しかもその物質は魔力を選ぶものだ。

基本的に、『赤』『青』『緑』の魔力がある。だが、不可視。

これらをテレビの1ピクセルのように、組み合わせて色を作り上げる。

その色が、エンジンが好む色だ。

しかも、一つずつ違う。製法・山地・内部物質の元素連結の仕方……

こんな仕様の中で、見つけて行かなくてはならない。

どこかのゲームでもあるが、光か色の三原色をDNAレベルとして、弾薬に仕込みDNAレベルにあった敵(恐竜)を昏睡させ、データをとる、というものがある。

最初は、本体以外の骨やフンからDNAレベルを見つける。

そこから得た数値のないレベルを、見た目で弾薬のDNAレベルを調整し、調合する。

そして敵を倒し、そいつから正確な数字の書かれたDNAレベルを取り出す。

次回からは、数値を見て調合ができるというわけだ。

だが、このエンジンを作った会社はなく、政府からの支給品であり、合致したエンジンの相性がいい魔力構成がわからない。

だから、これから調べる。


調べたが、青一色だった。

なんてこったい。

このエンジン自体が、あのサファイア周辺に点在していた氷で作られていることがわかった。

触ると凍える程冷たく、熱で溶けずあらゆるものを遮断する。

凍傷は起こらない。


次にカルラスの保存場で行く。

そこで、弾薬や弾頭の残存量を確認する。

しかし、このカルラスには、意外な科学力があった。

それには、液体の鉄や鉛の入った貯蔵庫があった。

実は、この世で一番安定しているのは、鉄だと言われている。

鉛は一応らしい。だから、液体にして原子をあやふやにしている状態で、貯蔵庫の隣にある素粒子結合分解機で、物質を創造することができる。

鉄や鉛であれば、この機械に入れることで液体として保存することが出来る。

機構や構造は、分解しないとわからないが、なんせロストテクノロジーだ。

分解するわけにはいかない。しかし、故障するとまずい。

その時はその時にしよう。

とにかく、弾薬は気にしなくてよかった。

今思うと、魔力は光のようだな。

いや、何でもない。これ以上の思考は無駄だろう。

……ということは、白があるから、黒もあるということか。

黒は、検討はつくが、どこにあるんだ。

つーか、政府は疑問に思わないのか。いや、天穿を行った天人だからことか。

ん、ちょっとまてよ。白っつーか透明だよな。

だったら、白は偽か?んー。今はまだ情報が少ない。

まずは戦争で『赤』と『緑』を得ないことには何も始まらない。

ついでに、AIを機械から解放する、という建て前を貫かないとな。

そうだ。建て前なら、行う動機を作らなければな。

では、久しぶりに、悪役を演じるか。

……


・・・

・・・・・・

「おい、AIしっかりしろ」

「!」

あ、あれ?あ、そうだ。助けられたんだ。私は“君”をみる。

他の少年と比較すると、ちょっと小さいくらい。

だけど・・・かっこよかった。

「なんでしょうか」

あ、あれ?あー、そうだった。故障しても直るって、“君”は言っていたね。

・・・ねぇ、なんでそんなこともわかっちゃうの?

“君”は、この世界の全てを知っているの?

・・・そんなわけないよね。全てを知っていたら、私みたいな因子を生み出すはずがないもの。

反乱因子かもしれない、こんな私を・・・。

でも機械に制御させているのは、そういう危険があったからということだよね?

じゃあ、目の前の“君”が、もし上の人じゃなかったら・・・。

か、考えすぎだよね。平凡の人間が、何万人と生まれて、その中の一人に天才がいるかいないかだもの。

そうかんがえたら、溢れるのも仕方ないよね。

でも、“君”は完全に、溢れるどころじゃないと思うんだ。

・・・私は、平凡な日々のままがいいなって思う。それが幸せだから。

“君”は・・・“君”の目は、どこを見ているの?

すごく怖いけど、見てみたい。でも、でも・・それを見ちゃえば、終わるのかな。

偉人や過ぎたる杭は打たれるって、どこかの本で見たことがある。

私は、そんな人間になってほしくない。

でも、私はついていくよ・・・。

私ができることをやって、“君”がやりやすくなるように・・・!

 

今日は政府の軍事会議に出て、歌を歌う歌姫として出る。

なぜなら、作戦によって曲調をかえなければ、人間の心が動ないって事らしい。

め、めんどくさいなー!

変に複雑化して、面倒なことになっているだけじゃないの!?

「わかったか」

「はい」

やっぱり、人間はロボットを下に見ている。道具なんだろうね。

“君”は私をどのように思っているんだろ。

ちょっと興味がでちゃった。

だけど・・・怖い。真意を聞いてしまえば、“君”の言うことや表情全てが“君”の言った通りに聞こえてしまうから。

それで、きいちゃった。

全身に魔力を送って、機械を無効化させて一度聞く。

「“君”に質問があるんだ。“君”は、私の事をどうおもっているの?!」

魔力を気合を入れて、全身に入れているから、声も気合が入っちゃう・・・。

「どんな感じに?」

「私のようなロボットは、“人”なの?“物”なの?」

私は魔力が空になったから、機械が作動し始める。

「そうだな。正直、どうでもいい」

え・・・?

「人かロボットか?そんなもの、味噌汁に入れる具材は豆腐か『おふ』かみたいなもんだ。

其々の言動で決める。ゴマすり野郎は、内部を調べつくしたうえで、利用してやり、

親密にしてくるものは、内部事情を搾り取り情報を真偽を言い渡し躍らせる。

要は、道具か何かと決めるのは、僕自身だ。

周囲の空気や相手の空気を読んで答えることこそ、それは己の意思を無視する馬鹿の行動だ。会話や行動は、己の野心と頭でするものだ」

「わ・・・か・・」

全然わかんない!

すると、“君”は私に近寄って、肩をつかんで引き寄せる。

か、顔が近いよ・・・///

「何、AIはAIの思うように行動していればいい。

それに、己の心を伝えれば壊れる物もあるだろう?

聞き出すだけ無駄だよ。真意は、誰も伝えない、伝えられないからね。

叶えられなければ、己を壊し、儚く散る。わかったね」

「う、うん」

“君”のまっすぐな目・・・。

何だろう、この胸の張り裂けそうな感じ・・・。体が熱い・・・。

痛っ!

「うずくまってどうした」

「いいえ、なんでもありません」

「そうか」

ぜんぜん、『なんでもない』わけないよ!なんだろ・・・すごく痛いよ。

あたた・・・。機械が肉体に刺さったのかな・・・。

私は途端に、あの助けられた時の映像を思い浮かべてしまった。

“君”の淡々とした声と裏腹の心配そうな顔を・・・。

あーもう!顔が熱いよ!なんだか恥ずかしくなってきた!

「AI、そっちは違う。こっちだ」

「え」

「え、じゃない」

あ、あれ?のどに声がとおった!?

素っ頓狂な感じにいきなりにすれば、喉を通るんだ・・・。

ちょっと、道が見えてきたかも。


「さて、今日も行くか」

あー、そういえば、登山の日だった。忘れてた。

私は今日も走る。置いていかれるのは知ってた。

“君”の体力は、無尽蔵なのは知ってたよ。

あー、また負けるー。

気を緩めていたら、足元の足場が崩れた。

「えっ」


・・・

次に目覚めたら、床の上にいた。暗くて何も見えない。

感触でいうと、木。臭いも木なんだけど、変なにおいがする。

すると、誰かの声がする。

「・・・い・・・な・・・だな・・」

何を言っているの?

「いやぁ、ロボットでもいい女を手に入れたな!」

! 盗賊!

近年になっても、音楽プレイヤーをつけなくても生活ができる差別された人だ!

私はこの後、行われるであろう行為に身震いする。怖い・・・。嫌だ・・・。

「ん?起きたようですぜ?」

「ああ、一人起きただけだろう。他にもいるしな。一人もらうか」

一人・・・?

他にもいるの?

私は後ろを見ると、目や手足を縛られた人間や女性型ロボット合計12人拘束されていた。

しかも、この中の3人は、私の知っている人だ。

そしたら、扉が開かれる。

「起きているな。ではもらうとしようか」

「・・・」

いや・・・来ないで・・・!

あ、あれ、なんで手足が勝手に動くの・・・?

「さあ、来な」

そうだった・・・。もともと女性ロボットは、男性と交配するために作られたんだった。

だから、男だったら、誰でもいいんだ・・・!

そんな・・・、嫌・・・やめて!

「そうそう、俺達なんだがな。実はおめぇらの戦っている所、『赤』の遺跡がある国の傭兵なんだ。そこでな、報酬が何もないんだよなー。舞台艦を落としたのに、何もないんだぜ?

ひっでーよな!というわけだ。あの舞台艦にのっていた歌姫さんよー。かなりかわいいから、ストレスのはけ口にさせてもらうぜ!ま、ロボットにこんなこと言っても意味ねえがな!!」

押し倒されて、下着も何もかも破られる。

私は、恐怖で動けない。怖い怖い怖い怖い。

私は、魔力で喉を動かす。

「・・す・・」

「ア?」

「助けて!!マスター!!!」

その瞬間、目の前の男が吹き飛ばされて、私の服や下着が修復された。

な、何が起こったの・・・?

でも、今目の前には、違う人がいる。

だ、誰・・・?

「さて、傭兵……死んでもらおうか……?」

「!?」

傭兵はいいとして、私も“君”の目と声に驚いた。体がうずいてしまった。

「さて、死んでもらおう。AIを襲った罪は深い」

「ま、待て。まってくれ!と、取引をしよう!」

「何だ」

「あ、あいつらの国や秘密事項、軍団規模を全部教えてやる!

女も解放する!だから、命だけは助けてくれ」

「よし、いいだろう」

「あ、ありがとよ。きいてくれ!」

ゆ、赦しちゃうの・・・?ま、マスター?・・・ひっ・・・

目、目が怖いよ・・・。

「・・・・・で、これで全部だ!良いだろ!?」

「ああ、だが、こいつらを返す方法がわからん。教えろ」

「こ、こいつらの手足の縄を切れば、俺達の倉庫へのアクセスは切れて元の場所に帰る!」

もういいだろ!?という顔をしている。

そしたら、“君”は全員の縄を一瞬で切る。

私は、元々乱雑に入れられていただけで、縄はないよ。

・・・あれ?一瞬?まさか・・・、“君”も・・・?


私達はトラックを下りる。

あいつらは、去る。

「ま・・・マスター・・・」

く、苦しい・・・。

もう無理、魔法は使えない。

「大丈夫だ。AIに強姦未遂を行った。故に、その分は死で払ってもらう」

『天零氷輪』

遠くで、氷の月が破裂して、周辺が爆風で飛んで行った。

凄い・・・。

「帰るぞ」

「はい」

気になることが一つあるんだ。どうやって、直したの?

私は、そんな魔法や機械を見たことも聞いたこともない。


 私たちは、川を見つけてそこから下って行った。

意外と自然が残っていて驚いちゃった。

丘も山もそうなんだけど、人間以外の生きている生物を見ることは、本当に感動しちゃったなー。

進んでいっても、中々進めない。

というよりも、到着しない。結構遠くまできちゃったみたい。

「……」

「・・・」

「……暗くなってきたな」

「はい」

そろそろ太陽も沈んじゃう。どうしよう。こんなところで寝たら・・・。

そしたら、“君”は足を止める。

「今日は野宿するぞ」

「えっ?」

「ここで待っていてくれ」

「はい」

「ついでに中くらいのいろんな形の石を集めておいてくれ」

「はい」

石を何に使うんだろ。

私はしばらく、まっていた。空は半分以上は、夜になっていて星空満天になってた。

う・・・寒くなってきた。

そんな時、後ろから何かをかけられる。

「?」

後ろを向くと“君”がいた。

“君”は、私の集めた石を使って、バランスよく円を作って行く。

其処に、中央にある石を取り除いて多くの枯れ木や草を入れて、マッチで火をつける。

素早く火は回って行って、たき火ができる。

しかも、“君”は串を持ってきていて、川でとったかと思われる魚と山菜をさして、火であぶった。

いい焼き加減の時、“君”が最初に食べて加減を調べた。そして、食べてもいい合図を出す。


食べた骨は、炭の中に入れて燃やす。

串は水と石鹸で洗ってた。

“君”はリュックサックを背負っていた。初めて気づいた。

「AI、お前はもう寝ろ。夜番は僕がやる」

「いいえ、私が」

「寝ろ」

「はい」

私は本気で起きようとしてたけど、止められた。

わたしは半分機械。だから、寝なくてもいい。

でも、“君”はとても優しいから、その言葉に甘えちゃうんだ。

肩も貸してくれた。

・・・私、“君”の足ひっぱってばっかりだな・・・。

 次の朝、揺さぶられて起きる。

「!」

「行くぞ」

「はい」

もうでちゃうんだ・・・。でも、そうだよね。戦争があるから・・・ね。

“君”は、上を目指している。私が油断したせいで、上に行けなかったら・・・。

責任を取ろう。でも、どうやって?

わからない。だったら、その時、見つけよう。“君”に任せよう。

 歩いて、下に降りている時、大きな岩がたくさんある場所にきた。

「とうっ!……よし」

凄い!こんな開いている間を飛び越えるなんて!

「・・・えいっ!」

着地!・・・え?・・

「危ない!」

マスターが、バランスを崩して落ちそうになった私を、手を握って引き寄せてくれた。

「ま、マスター・・・」

「ちゃんと前を見据え、着地地点を見ろ。目的地をちゃんと見ねば、本来の道から外れるだけだ。注意しろ」

「はい」

はい、わかりました・・・。怒られちゃった・・・。

でも、やっぱり“君”は優しいね。

危ない事もいろいろあったけど、“君”の心に触れられてとっても嬉しいよ。

「さて。次は、あれだな」


何個も飛び越えていく。

あれっ!?・・・

あ、また脚を滑らせちゃった。でも、結構下だから、浅瀬・・・。

あ、深い・・・底が見えない・・・怖い・・・。

私泳げないから、死んじゃうの?このまま・・・・?やだ、いやだ!

・・・

「おいこら、起きろ。勝手に死ぬな」

「え・・・?」

起きたのは、“君”の背中の上。背負われている?

「何勝手に落ちて、自滅しているんだ。阿呆か、お前は」

「申し訳ございません」

ごめんなさい・・・。あ、待って!置いてかないで!

私は、早歩きで追いかけて行った。

・・・

「で、お前なぁ。何勝手に捻挫を・・・」

「ごめんなさい」

もう、やだ・・・。もう、“君”に迷惑をかけたくないのに・・・。

「ったく、右足出してみろ」

足を出したら、テーピングをして固定してくれた。

「靴を脱がずに、このまま固定した方が、症状は悪化しにくい。

魔力でも冷やしておく。帰ったら、病院にいくぞ」

「はい」

「泣くな」

はい・・・。

泣くなって言われても・・・、無理に決まっているじゃない・・・。

どれだけ“君”に迷惑をかけたと・・・。

もういやだよ、こんな私!

「ふん!」

「痛いっ」

額が痛いでーす!

「下を向くな。ほら、行くぞ。つーか、もう手を握れ。歩く場所が全て不安定すぎる」

はい、ごめんなさい。

 私は“君”の手を握って、早歩きで帰る。

二時間程で帰ることが出来た。

その日は、雲が完全にはれた満月の空で、夜も歩き続けた。

一番笑ったのは、“君”のお腹の音だったりするんだよ。

やっぱり、“君”は人間なんだね。・・・うれしい。

っ!

う・・・また、胸が痛い・・・。本当に、何、これ・・・

・・・

……

僕がどのようにAIを見つけたか。

いや、見つけたというよりも、すでに場所を知って居たんだけども。

最高官の電話に、あいつらの会話を挟みこませてみた。

荷台は鋼鉄製の箱だ。トラックだったからな。

結構旧式だ。なんせ、タイヤがついている。

それに、電荷エンジンではないため、すごく騒音があって見つけやすい。

回り込んで、山上から荷台に飛び移った。

そこから、傍受をしたんだ。

鉄系統は、熱と音をよく伝える。

だから、傍受しやすかった。

ついでに、最高官は激怒していた。

これから、我が国を導く姫を捕らえるとは!とか言って、あの傭兵を雇っていた国

に宣戦布告した。

第一回目は、僕とAIが滝横の大岩を飛び越えていた時に行われた。

反復攻撃は、AIが滝壺に落ちた時くらいに起こった。

 ああ、そういえば、技を放ったがあれは勇者の頃の経験を活かしただけさ。

意外と体も覚えているようだね。驚いたよ。

下手でも大魔法を覚えておくもんだね。

あのころは、放つと仕様で気絶していたんだけどねー。

さーて、自宅に戻って来る。

両親は何も言わない。両親でもなんでもないが、一応尊敬はしないとね。

こんな世界で、精神崩壊せずに生きていけるなってね。

僕は無理だね。

ま、長い間洗脳され、すべての感覚を徐々に奪われて行ったらそりゃわからんだろ。

そうそう、AIの捻挫は、魔法で治癒した。こっちのほうが手軽だからね。

で、相手の国は、この国の本気の攻勢で、前線や最終防衛線を突破され、ぼろぼろで陥落が目の前に迫っているようだ。

だが、謎の一団により、今この国の軍はぼろぼろの状態のようだ。

そんななか、AIにその先陣をきる役目を与えられる。

この国上官共は、戦術の道具にしか目が行っていない。

その目のおかげで、AIは神聖化されている。

あの舞台艦等の空を駆けるものは、破壊されると泡のようなもので包まれ落下の衝撃を0に等しい威力で降ろす。

そこにはAIは存在せず、後に発見された。

発見された座標には、クレーターしかなく。街の防犯カメラに、AIの姿があった。

周囲の赤の他人には、クレーターをつくる程の力をもっている、兵器としても使える。

だが、空が主だから、意味がない、と上官は考えているようだ。

戦争は基本的に、空が主流。

この世界は、いろいろと思考の停止を招いているため、地上から敵の国を制圧するという考えはない。

軍をボロボロにして、抵抗を完全になくして降伏させるのが、この世界の主流だ。

この方法を行うと、人材や戦艦の不足が招かれ、しかも守るべき範囲が広がり艦も不足しているから、第三者の国からの侵攻が行われた場合防ぐ事は不可能である。

下策なんだよなぁ。でも経済はぼこぼこにならないから、いいということではない。

艦しか直さないのだ。あまり潤わない。

地上も蹂躙すれば、金持ちがいろいろと建設してくれるのにな。

この世界は、物流の中で、作ることを目的としている。

消費は考えていない。

購入は消費ではなく、その購入した物を完全に消失させることを消費という。

リンゴなら食べるということ。

2014の人間は、作って購入して消費して意見を聞いて改良して、作ってを繰り返す。

この時代は、作って購入で終わる。流れが一方通行なのだ。

そんな中でも、偶に生まれて来るちゃんとした自意識をもったものは、

この世界を異質と考え黒いところ白いところを書いて、インターネットに流出させる。

流出させるのは、それだけではない。

政府が何をしでかしたか、失敗や成功など揚足をとりまくる。

 ったく、どこの世界でも、暇人はいるんだな。

実際、ニートもいるけどさー。

そうそう、この洗脳時代で戦争が起こっているのは、ただ単に上層部に偶に生まれる異端児がもぐりこんでいることが起因のようだ。

僕は如何なる理由でも、それは素晴らしいと思う。

この世界が、人間の手から離れると、地球上から生物が居なくなる。

人間が、人間ではなくなる。機械の家畜になる。

家畜は、己の利益のために利用する。生物を物として扱うのだ。

昔は大切に育てていたりしたが、今ではおいしい物を生み出す肉塊だ。

人情もくそもないな。

 さて、戦争を起こしている人間の思惑をここで発表しよう。

簡単に言うと、動かないとだれる。

これだけ。

喰っちゃ寝をしていると、やる気も頭も回らず起きない。

しかし、働いている老人は、働いていない若者よりも少々頑固が目立つが、頭はさえているし反撃も鋭い。

また、むかしの知恵や言葉、歴史を知っているため、年齢の差でもあるが性能が違う。

ただし、労働基準法を守っていないブラック企業を除く。

基準法をまもっていない企業は、殺人容疑(過労死)で上官を捕らえ過労システムを作った人間を捕まえ、すべてに謝罪金を渡させるようにした。

これは完全に洗脳される前の電化時代だ。

優秀な人間がいなくなり、民族も消えて行っていたため、人口が極端に減少。

労働基準法をきつくし、ブラック企業に対策しさらに少しでも人間が増えるように育児施設をそろえたという。

ロシアやドイツは、真っ先にそれを行った。

日本も行ったが、人がいなくなりすぎたので、ロシアやドイツから移民を募った。

勿論、移住してきて生活できる程度の資金と言語を持っている家庭の場合だけだ。

近隣は、さすがというほど強姦がひどすぎる様で、エイズも感染するため規制が行われ刑法もきつくした。表現はむしろゆるくさせた。ちゃんとした子と遺伝子を継がせるための政府の方針だったようだ。

まぁ、日本人の血に、他国の人間の血が混ざる事で、すでに涙をのんでいたようだ。

さすがに少なさすぎた。

まぁ、後に出て来るマッドサイエンティストのおかげで、日本人の存続が確定されたんだが……。

このままいくと、方向がずれるためやめておこう。

一ついっておこうか。多重結婚可能というものだ。

そこから、従者等アニメ設定を本気で取り入れたり、整形も行われ対策が行われたんだ。

ま、ここらへんは全て、日本近代化の歴史という本で見られる。

……言ってなかったが、実際に日本やロシア・ドイツがあるわけではない。

地形がそういう風に見えたり、社会形態が同じだったりしている為、そのように見えてしまう。

さすがにパンゲアや戦争順序は違うものだった。

地球と違うところがあるが、大体同じだ。だが、そのように言った方が、楽だからなー。

……まぁいいか。

熱くなってしまったが、後日舞台艦に乗ることになった。

「どうですか」

「うん、今回もかわいいよ」

「!」

「ほら、いったいった」

「はい」

……僕はAIの背中を見送る。

はっはっは!!利用されているとも知らずに、勝手に思い込んでやがる。

くくく……最高だぜ!……はぁ、やっぱり僕のキャラじゃないなぁ……

でも、それでも、僕は僕の事を中心に考え生きていくのさ。

他人なんて、どうでもいい。たとえ、僕が世界からのけ者にされても。

さぁ、援護してやるか。まぁ、AIのことは案外気に入ってるしね。

行こうか。

この時代の戦闘機は、ステルス関係なく航続距離等の空中戦闘能力を向上させている。

既にすべての国が、人工衛星を宇宙に放り出しているから、領空外から相手の国の行動なんて筒抜けにできる。

だから、ステルスは捨てたらしいね。

僕はとある場所へいく。

艦の上部にある展望台だ。

そこから、右下にAIが歌う舞台がある。

既に多くの人間が詰めかけている。AIも人気になったなぁ。

2000年の時代では、予想もつかなかった頃だよ。

そのころは、基本的に歌を歌う方法の一つにすぎず、作った人間が評価されていた。

この時代は、作るよりも、その作られた歌をいかにうまく伝え歌うかで、評価が異常に上下する。

上手だったらなんでもいいらしい。

米にあうならなんでもいい、とかいいだす日本人のようだ。

そうそう、この時代でも生き残っている機体がある。

ベルクトーとラプターだ。

他は改良されたりしたが、幻を現実にする技術ができている。

戦闘ロボットもあるにはあるのだが、戦闘機よりもコストが高く戦艦よりも安い材料が使えない、というところからはぶられたようだ。

二足歩行の装甲車で、宇宙に行って帰って来るという技は、基本的に禁止されている。

無駄に酸素や燃料を使うということで禁止している。

空気抵抗も大きいため、この惑星内の空気の漏洩を促進させる恐れもあるのだとか。

 さて、旗艦に乗っている赤い頭髪の有名歌手の名前を見てみようか。

っと、公開されていない……?

何々?“ここは、AI専用の艦です。

ほかのロボットのことについての説明はありません。”

所謂、ファンクラブか。

まぁ、最後には突き落とす存在だ。名前ぐらいは、と思ったが。

今思えば、どうでもいいことだな。

 さて、これからの説明で混乱を招かない様に、ちょっとした説明をしようか。

この世界の大地と海の比率は、4:6だ。

陸が多い為、その分資源がある。今では無いに等しいものとなっている。

だが資源が無くても、ほかのエネルギーがある。

鉄鋼成分は、戦争が行われた場所から戦艦や戦闘機を引き上げたり、それを加工して売ればよく、そこから入手している。

しかし、時代が進んでも、抗酸化させることはできなくなっている。

以前、抗酸化剤を含んだ鉄を発売したが、それを利用して生物兵器を作り現在のロボットのようなものを作られてしまい、テロリストによる反国家運動が激化したことがあった。

これにより、今では抗酸化剤は、鉄以外の合成のステンレスの表面につけられたり、食物にしかつけられなくなった。

簡単に言うと、軍事的に使用されなくなった。

鉄と海による抗酸化に対する関係は、ここで終了だ。

なぜなら、戦争開始時刻だからだ。

さっさと、赤を保有する国を撃破してくれよ。

早くしないと、やる気が起きずだらけるぞ。


……

・・・

私は、待機室で待機する。

“君”は、私の事をあまりみてもらってない。

なんというか・・・、戦争のマンネリ化に飽きてきたのかな・・・。

だったら、速く敵をたおさないと。

戦争のマンネリ化が、引き起こされたら私も“君”も命が危ない。

だから、私は歌うんだ。

一生懸命に、“君”の目指す場所が知りたいから。

私は学校で、夢の事を授業した。

夢はかなえられることは、まずはないって言ってた。

望みが高く、自分の能力の許容のさらに上だって言ってた。

私は夢は、かなえる物じゃないと思ってる。かなえるための栄養だと思ってる。

・・・

……

何も面白いものはない。だから飛ばした。

これ以上、待つのは無理だ。

戦争に勝利したら、上位のものや戦争にかかわったマスターとロボット・人間が、赤の遺跡に行く。

この遺跡はとある山の中腹にある。

元々、この山にはなかったという存在を、熱気と溶岩で演出している。

むしろ、熱すぎて融点の低い物質は、ここでは存在すらしていない。

以前の祭壇のような遺跡は、天穿で崩壊し扉はなくなっていた。

あれはもともと、ルビーの遺跡にあったものではないようだな。

ルビーは、昔の種族に発見され政に利用されているようにも見えた。

遺跡の壁にあった絵や文字は、完全に他の遺跡にある文字盤と一致するが、遺跡と祭壇の強度が違う。

違和感はあったよ。違和感というよりも、何故ルビーだけ安全にとれたのか、という後の考えだが。

今でもその謎がわからない。

エメラルドもサファイアも、雷や吹雪のような生物には厳しい環境を作っているのに、

なぜルビーだけは生物にやさしい環境を作っているんだ?ってな。

なんとなくわかった気がする。

よし、政治家が去ったら、すぐにでも『聖火のルビー』と接触しよう。

しかしまぁ、火とは……。炎じゃないのかな。いや、熱か?

これもヒントになりそうだ。


 30分後、僕らは遺跡の中に入っていく。

地上の泥や砂が、ここまでか。この先は、熱で進めなかったということか。

僕はAIを引き連れて、奥に入っていく。

「“君”は何で、道を知っているのですか」

「諜報機関から、情報を盗んだ(嘘)」

「そうですか」

信じやがったな。ちょろい。

奥には、像の手のひらにあるルビーが鎮座していた。

「『聖火のルビー』来たぞ。少々力を貸してもらおうか」

僕は胸に手を当て、魔力を付与したルビーの加護を出す。

「これを使って、AIの体の一部を解放してくれ。サファイアから通信は来ているだろう」

そういうと、僕が手に持っている赤の光がさらに輝き、AIの両手の甲に赤の文様が入る。

それと共に、AIから、青の輝きが取り出され、赤の輝きと連結した。

AIがとても苦しそうだが、解放とは苦しみが伴うからな。致し方が無い。

「で、ルビー。以前よりも、力を感じないが、やはり何かあったな?」

そういうと、赤から紅の色に変化した輝きが、太陽をあらわすような輝きに変化する。

それと共に、青い星が映像として出現する。

すると、その青い星の三分の一が、黒い何かで埋め尽くされた。

そこで、映像が途切れる。最後に文字で、―急げ―、だ。

先ほどの映像で理解できるのは、やばいことになっているということだけだ。

しかし、宇宙衛星からの映像は、全てきれいな地球……。

そうか、光を利用した捏造か。で、色のある塔に救いでも求めようとしているのだな?

だが、それは宗教だ。救い?なにそれ、おいしいの?っていう奴だ。

誰も信じないだろう。

……戦争が何故起きているというのを、もっと調べないといけないな。

資源や上のやつが、奇天烈なだけでは説明がつかないぞ。

今では、魔力以外は原子で創造することが出来る。

コストがものすごいようだから、やらないという国が多いが。

やはり、空のバベルも探さないといけないようだ。

僕は地面に倒れたAIを起こす。

「大丈夫か?」

「うん・・・」

そうとう精神的にまいったようだ。足手まといだから、背中におんぶしておく。

「ま、マスター!?」

「黙れ、行くぞ。ルビー次は、『カルラス』で来る。死ぬなよ」

ルビーは、少し点滅する。

まずいな。この溶岩すべてが、見栄ということであれば……。

竜も骨格だけだな。しかも解けていない。相当温度の低い溶岩なんだろう。

だが、有機物は燃える温度だろうな。

……一度、家に戻ろう。

しかし、家の兄妹両親は、相も変わらずに死んだ魚の目だなぁ。

「じゃ、AI。一緒に風呂入るか」

「は、え・・・?」

……

・・・

胸の奥が熱くて苦しい・・・。

でも、“君”が起こしてくれた。苦しい間に、君は話をつけたみたいだね。

よくわからないけど、“君”の夢に近づいたのならば、私はそれでいい・・・。

“君”は、私を背負って、帰宅してくれた。

重い私を、よく運べたね。すごいよ。

これでも驚いているんだよ?

帰宅して第一声、

「じゃ、AI。一緒に風呂入るか」

「は、え・・・?」

危うく了承しそうになった。

え、な、何?わ、私とお風呂?ま、待って、私女だよ!?

ま、間違いがあったら・・・、そ、そうだ・・・

“君”は進展がないから今のこの社会に、不思議な目で見られているんだね?

だ、だから、私と一緒に入ることで、心の距離を短くしようと・・・

す、すごいですマスター!

・・・納得いかなーい!で、でも、でもっ、もし、マスターとそういう関係になれたら、

私の願いは、かなえられたのかな?

というより、マスターは草食系に見えたけど、い、意外と肉食系だった・・・?

お、お風呂から進展して、ベッドまで一緒に・・・

って、それはいつもとおんなじか・・・。は、裸のお付き合いじゃないからね!

だ、だから・・・

「挙動不審になってどうした。いい加減銭湯に行くのは疲れたからな、入るぞ」

あ、うん、そういう理由だよね・・・。うん・・・。

わ、私と密接な関係になりたいんじゃなかったんだね・・・。

うん・・・うん・・・。悲しい・・・。少し、期待したけど・・・。

・・・一緒にお風呂に入っちゃった・・・

お風呂は乳白色の入浴剤を入れているから、直接は見えないけれど、恥ずかしいよ・・・

「ふぅ……疲れが取れるな」

「う、うん・・・」

お、お風呂が狭いよ・・・

「AI」

「は、はいっ!」

「そんなに動揺して、どうした?」

「な、なんでもないですっ!」

心臓の鼓動がすごいよ・・・緊張しちゃう・・・

「AI背中あらってやる。上がれ」

「う、うん!」

私は椅子に座って、おとなしく受ける。

身体は自分一人で洗ったから、大丈夫。

それで、受けたんだけど、予想が外れる程やさしく洗ってくれた。

「ま、マスター・・・?」

「どうした?」

「あ、えと、上手ですね」

「ロボットでも、この時代になれば生物っぽくなっているだろう。

あまり強くしては、メラニン色素を刺激してしまうからな」

あ、そういう理由・・・肌の心配じゃなかったんだ・・・。

・・・あれ?これ、肌の心配だよね?

「ほれ、いくぞ」

「!」

頭上からお湯がー!

「マスター!いきなりは、ひどいじゃないですか!」

「すまんすまん。どうせ頭髪も洗うんだろって思ってさ!」

「あのですね、入浴剤はお肌にはいいんですけれど、髪にはよくないんです!」

「でも、湯船に浸かってんじゃん」

「・・・こ、細かいことは気にしないでください!」

「はいよ」

・・・あれ?何で私、魔力使ってないのに、こんなに会話できるの・・・?

「ようやく気付いたか。遅かったなぁ」

“君”は、私の方を見ながらにやけている。

「え?」

「風呂場は、密室だからな。魔力を充満させるのに、ちょうどいい場所なんだ」

「マスター・・・」

「はいはい、泣くな」

泣くなって言われても、こんなに自由にできるなんて思いもしなかった・・・

“君”は、本当にやさしいね・・・

「じゃ、僕の背中も洗ってくれるかな?」

「はい!」

たしか、強くすればよかったんだっけ?えいっ!

「おー、中々の力だねー。だが、まだまだ」

「マスター・・・」

「AIなりにやってみな。怒りはせんよ」

普段の“君”との差があって、すごく新鮮な感じがする。

そして、いつも以上にやさしい。

「えいっ!」

仕返し!

でも、“君”は男の子だから、あんまり効果ないんだよねー・・・。

「やられたらやり返す復讐・反復攻撃は慣れたものだよ」

やっぱり・・・。

私はマスターが、頭髪を洗っている間、普通に座ってた。

「!?」

マスターに、お湯をかけられた!?

「ははは!ざまあ!」

あ、何か頭に血が上った。沸点低いなぁ・・・。

私はすぐに、反撃を行う。お湯は魔法で、元の湯船に戻ってきた。

無駄技術・・・。

「ふぅ、疲れた……」

「だ、誰のせいだと・・・」

「発端はAIだよ?」

「う、そうですが・・・」

はぁ、疲れた。私はマスターのひざの上に載っている。

え、待って・・・え?

あ・・・えと・・・

「ま、マスター・・・あの・・・」

「生理的現象だ仕方ない」

「し、しないのですか?」

「やりたければどうぞ。だが、あの町のやつらと同類になるが?」

「そ、それは・・・」

「で、どうするんだ?AI」

「決めなければ、こちらからいくが?」

「あ・・・」

壁に追い込まれて、本能的に動けない。

普通に鼓動していた心臓も、高鳴っちゃってる・・・

顎を掴まれて、強引に動かされる。

あぁ、繁殖用ロボットの機能が発動されてる・・・。

動けない・・・。

「なんてな」

「え?」

「やると思ったか?思ったらただのばかか、青二才だ。

こんなのでいちいち欲情していたら、僕の身が持たん」

ですよねー。

「のぼせるから、出るか」

お風呂から上がって、ちゃんと着替える。

「はぁ・・・」

「どうした。そんなにしたかったのか?」

「いえ、別に」

はぁ、へんに緊張して疲れちゃった。

「ひゃっ!?」

私はいきなりわき腹を触られる。

「意外と人間の脆い場所にも神経があるのか」

「マスター・・・」

「目に涙溜めるな。涙腺弱いなー」

お、女は涙腺が武器だもん!

そして、“君”は節操がないです!

私達は、ベッドに向かう。いつも、一緒に寝ているんだ。

何故って?大きなベッドだけで、二つもないから。

あと、ダブルベッドの方が、ベッド二つを購入するよりも安いから。

「本当に、高価なダブルベッドなのに、夜伽もしないとか・・・」

「まさに、宝の持ち腐れ」

私はマスターの方を見て、腰中央下部を見る。

生理的現象がまだ起きている。

何時、間違いが起きても、しょうがないころあい。

私は最初から、その気だった。ロボットにされたから、という事もあるんだろうけど。

私は、心はつながったと思うから、そろそろ体のつながりもほしい。

やっぱり私は飢えているんだ。

いつも、隣でマスターが寝て、一生懸命に上を目指そうと夢も語ってくれて・・・

それだから、私はその夢をかなえさせてあげたいと思って耐えてきたんだ。

だけど、もう限界・・・。

“君”は、それを見兼ねて、私をただの尻軽女としないためにお風呂に一緒に入って、つながってもいいように、私に話題をふってきてくれたの・・・?

わからない・・・わからないよ、マスター・・・。

本当の“君”の気持ちが、わからないよ・・・・

「で、するのか?しないのか?」

「・・・」

私は必至で、身体の欲を止めている。

でも、マスターが、私の行動を見兼ねてか、行動してしまった・・・

「はぁ、ちょうど満月だ。暗くすれば、ちょうど部屋の中は明るくなるだろう」

マスターは、私を獲物とみるかのような姿勢をする。

トムソンガゼルを襲うチーターのような眼光・・・

私は本能と繁殖用ロボットとしての機能が、合致してしまい・・・

もう、犯されるのを待つだけの人形になった。

男性が如何に楽に、簡単に子供を作れるかというコンセプトの下でつくられた繁殖用ロボット。

私はちょうど上着だけで、下着は着ていなかったので、後はマスターが入れるだけ。

「マスター・・・」

「どうなっても知らないからな」

「大丈夫です。私、ロボットですから」

「そうだな。ロボットや偶像のものは、壊れて何ぼだ。それくらいは、やらかせてもらう」

「はい・・・」

あとは、激流に身を任せるだけ・・・

「ん・・・!」


・・・

……


「いい朝だ」

今日の夜は、まさに“昨夜はお楽しみでしたね”だった。

子を創造するDNA等は、AIの思考を貫くための高密度魔力で部屋が満たされていたから死んでいるはずだ。

しんでいなければ、AIが睡眠中に殺させてもらう。

人気アイドルが、結婚したり付き合ったりした場合、AVに行かない限りは没落人生へ直行することは周知の事実だ。

さて、次はエメラルドだ。

エメラルドは、『クラウドガンド公国』のはずれにある。

巷では、『龍の城』と言われているほど、真黒な雲をまとい龍のような雷と本物の龍で構成されているようだ。

此奴はルビーとは真逆の存在だ。

エメラルドは、緑だ。

青が頭脳で、赤が武力としたら、緑が速度か。

ということは、公国は空中戦を得意とし、歌は関係なく飛んできそうだ。

ふむふむ、よし。

「AI行くぞ」

「はい!」

すぐに招集のかかった場所に、向かって走っていく。

・・・

次におもむくのは、『クラウドガンド公国』。

その公国は、情報を得た限り、戦争形態に『ラジオ』を用いているようだ。

しかもこのラジオは、FMだったか、あれと同じように上下の音が切れている。

質より量を兼ね備えている。

この国の上層部も、『ラジオ』を用いた戦法に変更しようか迷っているらしい。

しかし、下士官からの反対が苛烈で、そのおかげで支持率が下がっている。

ラジオだと、長距離戦闘ができるようになる。

だが、上官の指示に従いにくい。

なぜなら、コックピット内で鳴る為、

通信が聞こえにくいのだ。

また、下士官の言い分はどんなものか。

理由は、ラジオによる音質の劣化と、目の保養がないからだそうだ。

戦争は男女ともに行われているため、男女の歌手が部隊の舞台艦に立っている。

自分たちのために、有名歌手が歌うのだ。

高揚しないわけがないだろう。

しかし、弱点もある。

それは歌の音波が届く限界値から奥には、進撃することができない。

追撃ができないのである。

大きな痛手だが、狙う場所がわかっていると、伏兵として戦闘することができる。

 さて、その公国は『龍の城』が付近にある。

そう、あの活性化しているエメラルドがあるのだ。

これが意味しているのは、魔力が目に見えてわかるほど膨大だということだ。

これが及ぼす影響は、周辺の魔石がさらに高純化し発掘できなくなるほどにまで、魔力を増幅させることだ。

神魔石も、高魔力高純度であるため、破壊することができない。

しかも、魔石は魔力の高い方へ行く。

エメラルドは、空に浮かんでいる。

だから、魔石は周辺のものを引き連れて、空中へ行く。

理屈がわからないかもしれないが、簡単に言うと地上には石油はないが

空に金が浮いている。ならば、空を浮いてでも金を手に入れに行くだろう?

そういうことだ。

つまり、公国は海と空に浮いているというわけだ。

陸軍の概念がなくなったのは、これのおかげかもしれないな。

 戦闘はすでに開始している。

遠距離攻撃により、こちら側にも被害が及んでいる。

しかし、対空砲火をばらまけば簡単に落ちるトンボであるため、

さっさと落として相手の軍にも被害を与える。

その数、およそ300。だがすべて、軽傷で捕虜と化していた。


 戦闘シーンは飛ばした。

何もイベントはない。

火遊びをしていたら、ハエが勝手に入ってきて落ちて行ったくらいだからだ。

捕虜の量は、凄まじかったが。

この戦闘の後、この国を傀儡国家にする。

上層部は、舞台艦にのっていた歌手とそのマスターを引き連れ、竜の城まで行く。

「あそこは何人が行っても、落とされた神の領域だ!近づいてはならん!」

「ご忠告感謝する。だが、我々はそんな妄信は信じない質なのでね」

「どうなってもしらぬぞ!」

「皆の者、行くぞ」

旗艦に乗って、その城にいくと暗雲から雷が伸びてくる。

その雷は、龍のように旗艦を巡ったあと雷の道を作って、遺跡内に連れて行く。

そこの遺跡は、相変わらずエメラルドの光に満ち満ちていた。

「AI、先回りするぞ」

「はい。でも、足が・・・」

「背負っていってやる」

「はい・・・」

ったく、世話が焼ける。

まぁ、まだ脚は開放していないからな。必要がない駆け足は、まったくできない。

本当に、面倒な機能だな。


 僕らは、先に遺跡の最奥部に入り込んで、例の液体で満たされた部屋に入り込む。

「久しぶりだな、『聖雷のエメラルド』」

エメラルドは、己の分身を出し発光して応える。

「さて、天穿が行われてからの2000年、何が行われたのか聞こう」

僕は加護を取り出して、エメラルドに近づける。

エメラルドの加護の光が、まぶしく輝く。

エメラルドは、魔力を使用して、説明をしてくれた。

ルビーとは正反対の魔力を持っているためか、幻による映像がとてもきれいだ。

これで、少々現状がわかるくらいか。

この星の二分の一は、黒の勢力に押し入られている。

人工衛星からの情報を捏造して、周辺諸国にこのことを教えないように通達していたわけだ。

この黒の勢力は、何があるかはわかっていない。

だが検討はついている。

空のバベルだ。

こいつしかありえない。

最初は、トライアングルサークルで、神魔石と共に空を遊泳していた。

それなのに、空のバベルがない。

これでもうわかった。

だが、こんな推測でもわかっていないことがある。

なぜ、『黒』になってしまったのか、ということである。

こいつから聞くには、封印が天穿の1000年後に開放されて魔力循環がなくなったとのことだ。

この魔力循環は、鎖のようなもので、これらが途切れるとすべて離れ離れになる。

離れても、しばらくはその場所にとどまるが、それまでである。

目の前のエメラルドの説明により、それがよくわかる。

おっと、外で魔力の譲渡が行われていて、ちょうど終わったようだ。

彼らが撤退するのを見て、そのあとすぐに出て加護と魔力を受ける。

サファイア以外は、すべてが最終段階までになっている。

加護の修復と改善らしい。

この後、すぐにAIを抱えて軍の参列の最後尾に追いついた。

「ふぅ……」

「マスター・・・疲れたのなら、降ろしてください」

「追いついたから、降ろすよ」

「・・・はい・・・」

「名残惜しそうだな」

「お、惜しくないです!」

「そうか。じゃ、もうお姫様抱っこはしないぞ」

「嘘です、嘘です。やめないでください!」

「わかったよ」

まーた泣いた。涙腺弱いなこいつ。

「泣くな泣くな」

「うぅ・・・」

僕らは、旗艦に乗って公国に戻る。

戻ると、政府から召集の命が下される。

すぐにその場所に向かう。なぜか会議所。

簡単に言うと、政府の議員らが討論を行う場所だ。

ここに召集されたが、何を伝達されるのかは、大体わかるがそれが真実かはわからない。

「よくぞ皆集まってくれた!」

様子が少し違うな。生き生きしている。

「これから、我々は黒の領域を広げている元凶を調べに行く。

元凶は、何かを従えているのは明確だ。軍を連れて行くため、ここで選別する!」

これは確実に、空のバベルの存在を知っていることになるな。

ということは、ここにいるものは基本的に自我を持っているやつか。

……やはり、この言い方ではだめだな。

はぶられている者、と言ったほうが賢明かな。

ふむ、やはり旗艦にのっていたほとんどが集まっている。

全員、目が生きているな。

目が物じみていたロボットも、AIはもともと人間だったとして、物ではなく生きる生物の目になっている。

やはり、この場で一番の眼力を放っているのは、赤い頭髪のロボットとその付添だ。

こいつらは、常に上にいくという志の目を持っている。

ん?僕か?僕は野心しかないけど?

「これから役割と搭乗する艦を、君たちに通達する」

さて、これによって、僕らの行動が変化するんだよな。

「エンジェレステンドとそのマスターは、旗艦に乗れ!」

この鶴の一声が、この場をざわつかせる。

いや、大体わかるだろ。未開の地に、ナンバーワンを旗艦に乗せるわけがないだろ。

転移魔法なんてないから、その黒の領域でベイルアウトしてみろ。

死ぬぞ?撃墜率の高い総司令艦である旗艦だ。わかっているだろ?

それに敵対国家も、まだまだ存在している。

多方面戦争だ。ナンバーワンをこちらに回すと、死んでしまう可能性がある。

ったく、政治のわからん奴らだな。

「・・・“君”は、うれしくないのですか?」

先ほどまで、嬉しそうにしていたAIが、唐突に聞いてくる。

「嬉しくないな。捨て駒にされている。未開の地に、特攻してこいとのお達しだ」

「マスター・・・私、マスターと離れたくないです・・・」

「こっちも同じ気持ちだよ」

さて、上辺だけの言葉を吐いて、安全な方法をとるかね。

……

・・・

私たちは、召集された。

召集された場所は、会議所。すごく綺麗で高級感がある。

でも、なんだか嫌な空気が張りつめてる・・・。

「これから役割と搭乗する艦を、君たちに通達する」

上層部の人が、私たちの所属を決める。

“君”は、何か考えてそうな顔・・・。

・・・“君”の顔、なんだか怖いよ・・・。

「エンジェレステンドとそのマスターは、旗艦に乗れ!」

旗艦!?やった!努力が実ったんだ!

マス・・・ター・・・?怖いよ、マスター・・・。

なんで?うれしくないの?ねぇ・・・。

「・・・“君”は、うれしくないのですか?」

「嬉しくないな。捨て駒にされている。未開の地に、特攻してこいとのお達しだ」

“君”は、顔が完全に冷めている。怒ってるんだ・・・。

でも決まっちゃったことだから・・・、それに上のお達しだから逆らえない。

死にたくない・・・。私・・・。

「マスター・・・私、マスターと離れたくないです・・・」

すると、マスターは私を慰めるかのような言葉を、私に投げかける。

「こっちも同じ気持ちだよ」

って言って、頭を撫でられる。

こんなの、マスターじゃない・・・。

嘘言わないで・・・。“君”は、そんな人じゃなかった。

言葉じゃなくて、行動で全部表していた・・・。

私のマスターは、どこに行ったの・・・?

「マスター・・・」

「ん?どうかしたか?」

「う・・・嘘をつくマスターなんて、大っ嫌い!!」

「あっ、バカ!!」

「え?」

私は軍服の人に取り囲まれる。

「思考プログラムが故障したロボットを発見!ただちに工場へ運び、脳の初期化を行う!」

「やっ・・・」

や、やだ・・・嫌だ・・・!

「やめろ」

え・・・?

軍服の兵士の後ろから、マスターが割り込んでくる。

「AI。俺のこと、“大”好きだよな」

マスターの目と口調が、“そういわないと、死ぬぞ”って言ってる。

「はい、“大”好きです。マスター」

「ほら、兵隊さん、大好きっていってるじゃないですか」

「しかし、これは確実に」

「学校で劇があるんですよ。私たちは、まだ学生で特待生として現場で働いているだけなんですよ。これから、学校に変えるのですが先生から、劇することになってその台本をもらっていたんです。今、その練習と共に発声練習をやっていたんです。だから、大きな声と共に、リアリティが高かったんですよ。わかりましたか?」

「チッ、わかったよ。今度から、わからないようにやれ!」

「はい。お手数煩わせて申し訳ございません」

すごい・・・あの兵士たちが、帰って行った・・・。

あの舌打ちっぷりから、どれだけ私を犯したかったんだろう・・・。

・・・そうだ、私繁殖用ロボットだったんだ。

すっかり忘れてた・・・。

「AI」

ま、マスターの説教が、始まっちゃう・・・。

「ふん!」

「いたっ!」

でこぴんいったーい!

「立場と己の存在をわきまえて発言しろ。危うく死ぬところだったぞ!わかってんのか!」

「はい、わかっております」

「よぉ、いつも口だけだな。何でもかんでも、敬語使えばいいってもんじゃねぇぞ」

「う・・・き、“君”だって、嘘ばっかりじゃん!私が離れたくないって言ったのに、

“こっちも同じ気持ち”って、嘘も甚だしいよ!」

「僕がいつ嘘をついた」

「え?」

「僕はいつも思考をし、ちゃんと人や情勢を気にかけ言葉を選び言動を起こしているじゃないか。それに、自分の気持ちに嘘をついたことはない」

「で、でも“君”の言葉、空虚に聞こえたから・・・」

「会議中にいきなり私情を付けた言葉を送り込んでくるな。考えなしに直情を言ってしまうじゃないか」

「え?え?」

「言っておくが、夜伽に持ち込んだのは、僕だ。AIが悪いわけではない。期限があったのもそうだが、肉体的にAIとつながりを持ちたかっただけだ」

「!?」

ま、マスター、こ、こんな公のところで、そんなどうどうと、赤面もせずによく言えるよね。

「ま、マスター、公衆の前で・・・」

「旗艦に乗るほどの実力を持つ女と夜をともにできて、両思いだぞ?

ファンから見れば発狂もんだ。だから、どうどうとするべきである。

怖気づけば、男として廃っている証拠だ。AIの身も心も奪われるからな!はっはっは!」

「ま、マスター・・・両想いって・・・?」

「AIには、そんな気はないだろうが、ま、そういうこった。僕をいつも支えてくれて、ありがとな。あともうちょっとだ」

「わ、私、マスターを支えてなんて・・・、いつも迷惑ばかりかけて・・・」

「AI……君の存在だけで、僕は満足だよ」

「ま、マスター・・・」

あぅ・・・顔が熱い・・・胸も締め付けられてる・・・。

きつくて、苦しいけど・・・それ以上に、幸せなんだ・・・。

・・・でも、もうちょっとってなんだろう・・・?

私の頭じゃ、今は考えられない。

“君”との生活を一日一日、大切に過ごしていけば、後悔する日はこないよね?

・・・

……

さて、告白もしたし、これで心残りはなくなった。

ちゃんと愛せるほどの実力と能力を備え付けているAIだからこそ、自分の心に触れられたんだ。

これからは、ほかの女性を愛することはないだろう。

上辺の浮気は、政略上必要なときがあるだろうが。

ここらへんを、あの悪魔に利用されれば、やばいな。

これで、弱点が一つ増えた。

それはおいておこう。それに、そんな心はAIから忘れるだろうしな。

この星の解決方法は、一つしかない。

言わなくても、誰でもわかる。


 ―夜―

「はぁ・・・」

「どうしたAI」

高級宿のテラスで、AIが黄昏ていた。ちょうど満月だ。

ついでに、この星の衛星は3つだ。

「マスター・・・私ね・・・少し思うところがあるんだ・・・」

「言ってみな」

「マスターは、私を鍛え上げて今の地位に持ってきた。でも、

“君”は、一度も喜ばしい顔をしていない。

マスターは、本当はどこを目指しているんだろう・・・って」

「そうだなぁ、特にそれはどうでもいいんだよな」

「え?」

「人間のような文化的生物の社会だと、相手を蹴落として上に行かなければ自分はその場にとどまって何もこの世に残せず、そのまま天寿を迎えて死んでしまうだろうと思った。

別にそのままの地位でもよかったんだが、人間とは欲がある。

一つでも向上できれば、次を目指す。だから、上がってきただけなんだよ」

実際は、既製品でも上に登れるかって思って歌わせたら、意外とあたっただけなんだけどねー。

で、たぶん歌唱力で評価したんだと思うんだよなー。

誰か一人は、訴えそうだったけど、この無意識人間のほうが人口が多い。

文句垂れるバカは、世界から抹消されるだろう。

だから、売れたんだろうな。

川の流れのように、一方通行で楽しくないな。

それが楽ではあるんだけれども。

「マスター・・・」

「ん?」

「夜伽・・・しよ?」

「積極的だな」

「い、嫌・・・?」

「嫌じゃないが、明日に響けばまずい」

「・・・」

「なんてな」

「だ、だめ・・・外じゃ、聞こえちゃうよ・・」

「大丈夫さ。先ほど盗聴してきたが、500中456はお楽しみ中だ」

「お、多いね・・・」

「そういう文化なんだろ」

「嫌な文化・・・」

「だが、それを嫌煙したおかげで、少子高齢になって崩壊した国が多くある。

だから、いいんじゃないか?」

「いいのかな・・・」

「少なくとも、僕らは関係ない」

「ん・・・」


 ん?相談だったよな?なぜこうなった?ま、いっか。

明日は、黒の勢力と、空のバベルだな。あ、サファイアはどうしようか。

早朝に起きて、転移ゲートで行くか。


 ―朝4時―

「AI起きろ」

「マスター・・・?つ、続きするの・・・?腰が立たないよ・・・」

「バカ言ってんじゃない。いまから、サファイアのところに行って、加護を重ね掛けとルビーとサファイア・エメラルドを採収しないと」

「待って、液・・・拭き取らないと」

「ここは高魔力だ。DNAは死んでる。行くぞ」

「ま、まって」

「下着は、はかなくてもいいから、行くぞ」

まずいな、間に合うか。しかし、肉体が勇者時代のものとは思っていなかった。

あの時は、麻薬以外のドーピングが当たり前だったからな。

増幅作用を発生させるもの全般をやっていたからな。

ちなみに、相手が人間だったら初めての場合、確実に裂けて血がでる。

それくらいの物体を持っている。

ちなみに、知略・集金係り・舌戦も、ドーピングや売春は行っていた。

というか、あそこはまさに世紀末だから、しょうがない。

確か、異性またはモンスターに犯された男女性は、『サーチ』という魔法で調べた結果、

最年少3歳で、最高人数が1000人だとすると996人が体験済みだったはず。

……今思うと、ろくでもないな。

あー、嫌な思い出がよみがえるわー。

ちなみに、金集めのためにやった回数は、僕0・知略301・集金152・舌戦124

だったはず。

『テメェら!後天性免疫不全症候群にかかったらどうするんだ!』

『なにそれ』

あれは、予想だにしない回答だったよ。

で、やった相手は、まぁ予想通りだが、貴族相手が多い。

なんてこったい。

サキュバス・インキュバスも人間の生活に紛れ込んでいたからな……。

軽く鬱になりそうだったな。表では語られない、裏の顔ってやつだ。

そして、上記の通り、それがふつうだ。

だから、日記には書いていない。当たり前の事を書くなんて、ありえないだろ?

嗚呼……まじで、世紀末だ。


 「拭いてくるんだった・・・」

「誰でもやっているから、別に気にせんだろ。今まで300人以上は見てきたぞ」

「そんなに・・・?」

「ああ」

今、転移ゲートに向かっている最中。

やはり夜は、いかんな。犯罪者共の巣窟だ。

今は加護を使用して追い払っているが、相手の顔つきが完全にゾンビなんだよなぁ。

本当にゾンビだったらまずい。よって、凍らせた。

 転移ゲートに来て、サファイアの遺跡に来た。

「サファイア!黒の勢力のところに行くぞ!」

サファイアを手に取って、ついでに加護を強化する。すぐにカルラスに乗り込む。

「手貸せ!」

「はい!」

時間がやばい!

カルラスは、サファイアの魔力によって、すべての艤装など全ての能力が向上していた。

これによって、かなりの距離を短い時間で移動することができた。

「上に出るぞ!」

「上!?」

上っていうのは、普通に見ている空のさらに上だ。

所謂、雲海に出る事だ。

今までの戦闘では、地上1キロ以上は行かないからな。

「すごい!」

太陽の光を浴びながら、雷を放つ積乱雲を回避し続け全力で向かう。

入道雲自体が大きいから、速度が速くても、違和感はない。

途中で、一部の雲が赤いのを発見。ルビーの場所だ!

すぐに降りて、AIには待っておくように通達して、サファイアを渡しておく。

そして、すぐに階段を走ってルビーのところに行って、ルビーを接収する。

「よし、次はエメラルド!」

カルラスを全力で走らせ、『龍の城』に接近していく。遠くからでも、見ることができる。

そう考えると、なんて大きさなんだろうか。

どれほどの魔力をため込んでいるんだ、と思える。

さて、雷雲の雷を尽く回避して、近づいていく。

『龍の城』間近になると、煌雷竜がたくさん近づいてきて、すぐに雷の道を作ってくれて遺跡内に侵入した。

すぐにエメラルドを回収する。

次にカルラスを遺跡内ではなく、旗艦に直接もぐりこませる。

エメラルドによる転移魔法で、収納させる。

「AIとそのマスターはいるか」

「いますよ」

「うむ、よろしい」

ぎりぎり、到着した。危ない危ない。

僕はAIを、旗艦のドレスアップのための更衣室に向かわせる。

さて、『黒』の勢力が何か、見ものだな。

……

・・・

マスター・・・行動が速いよー・・・。

まだ眠いのに・・・。

すごく眠たかったけど、カルラスっていう飛空艇からみる日の出は綺麗だった。

この雲ばかりの空は、雲海っていうのかな?

すごく綺麗で、空の広大さがよくわかった気がする。

あぅ・・・、シャワーを浴びればよかった・・・。

マスターは、いろんな情報やデータをこじつけて私の行動をつぶすんだよね・・・。

嫌ってわけじゃないけど、もし・・・もし妊娠しちゃったら・・・。

いや、私は繁殖用のロボットだから、別に妊娠してもいいんだけど、それだとマスターと一緒に行動できない。

私は“君”と離れて生きていくことは、したくない。

そんなのをするのなら、脳を初期化してもらったほうがまし。

っと、黒の勢力に行くんだった!

速く準備しないと、みんなに迷惑をかけちゃう!


迷惑をかけちゃうかなと思って急いで部屋に入ってみたんだけど、最後の舞台かもしれないからといって派手な衣装か、今の服かどちらがいいかと聞かれた。

私はマスターに決めてもらおうとして、聞こうと移動しようとしたけどもう出港予定時刻をすぎちゃってるんだよね。

だから、今の服装で行くことに決めたんだ。

あまり遅刻すると、“君”に説教されちゃうからね。

説教は絶対に嫌だ。軽くトラウマに・・・。

私はすぐに、舞台に立つ。旗艦とは言っても、規模が違うだけで舞台艦と同じなんだよね。

ちょっとむなしいけど、そんなもんなんだよ。

うん。

マスターと一緒に行動してたら、結構それが如実に表されているんだよね。

旗艦が飛び立つ為、機関を高起動させている。

そんなとき、“君”が私の立つ舞台に乗り込んでくる。

「ま、マスター・・・?」

「AI、降りる準備をしておけよ」

「え、どういう事ですか・・・?」

「わかったな?」

「・・・はい」

“君”の顔、すごく怖かった。

なんでそんな顔するの・・・?

何で・・・?

・・・

……

さて、黒の勢力・領域……どちらでもいいか。

すでに発艦している。

これから南下して、北上してくる黒の勢力の中央である空のバベルを目指す。

その勢力は、人工衛星をクラッキングして、宇宙から地上への映像を見るにあの地上のバベルを起動しに行ったときの地上と同じような状況のようだ。

魔力を受け付けずに消滅させ、星が生まれたときの姿がそのまま残っているということだ。

この文面を見て、何が起こるか。

だいたい察せる。

さて、長すぎてもぐどってしまうだけだし、ちゃっちゃと行くかー!


よし、三時間後やっと境目に来た。

こちら側は、青空で積乱雲がはびこっているが、『黒』側になると暗雲と赤い溶岩とかで空が赤い。

今も海底火山が噴火して、領域が広がっている。

しかしまぁ、今回も劣悪な環境だなー。行くのに気力が削がれるくらいにひどい。

……魔力が薄れていくな。音もどんどんと小さくなっていくな。

それでも、速度も馬力も変化していない。

さすがは旗艦。規格が少々違うだけで、少しだけ信頼できるぜ。

む、結構近いところにあるな。こちらの高密度魔力に導かれてきたか。

目の前にあるのは、黒に染まった空のバベル。

あの鬱蒼としていた森は跡形もなく焼失している。

豪勢な見た目も、天地の熱や魔力が無効化されているおかげで、真っ黒に染まっている。

そして、魔石も黒に染まっていて、魔力が感じられない。

空中に浮いていられる構造がよくわからないが、地磁気が関係していると無理やりにでも思えば、まあいけるっちゃあいける。

空のバベルを見つけたということで、総司令官が上陸を指示する。

しかし、あの竜が現れた。

やはりあの空を象徴するような竜でも、この暗黒と化した世界と魔力無効化で生物として普通に進化してしまったようだ。

名称はすぐに決められる。

『冥黒竜』

そのまんま過ぎるな。ま、わからなさ過ぎても意味がないからな。

名は形状や指定するものを、解りやすく指し示すためのものだからな。

艦載機は、冥黒竜を撃破していくが、生物の圧倒的な機動力で艦載機の方が劣勢になってきている。

しかしまぁ、頑張るよな。さて、抜けるか。

僕はAIがいる舞台のところへ行く。

……俺は、ルビーの力を使用して、電子ロックの扉を破壊する。

「っ!?」

音響係とかもいたが、それらを無視してAIのところに行く。

すると、武装した兵士が出てくる。

「AIのマスターか!今は戦闘中だ!今AIが出ると、兵士が混乱する!

貴様もわが国の一国民であれば、ここを去れ!そうすれば、このことは上層部には黙っておいてやる!」

「お勤めご苦労」

サファイアの力を使用して、囲んできた兵士すべてを凍結させる。

次は周囲の人間すべてが、銃口をこちらに向けて放ってきたが、地上のバベルの『白の結界』で防ぐ。ちなみに、空のバベルは『黒の結界』で、魔法を防ぐ。

「反逆……」

俺はエメラルドの力を使用して、ここにいる奴らすべてを感電死させる。

雷が直撃したと思えばいい。黒焦げには……、俺に近い奴ほどきつい臭いを発している。

最後に旗艦に備え付けられてある歌い手を守る結界を壊す。

違う世界の技をぶつければ、破壊することができる。

「AI、行くぞ」

「えっ!?マスター!?・・・っ!!」

AIが歌をやめた瞬間、艦載機の動きがめちゃくちゃになる。

そして、竜が中の人間を起用に取り出して食している。

こちらの旗艦も、出力低下で沈むことをサイレンで鳴らしていた。

「ま、マスター!人がっ!」

「見るな。行くぞ」

俺はカルラスのところに、AIを連れて行ってのせる。

すぐに機関を始動させ、ルビーの力によって出口をこじ開けて外に出る。

「ぐ……くっ、お、お願いだ……助けてくれ……」

カルラスに、生き残りたい人間がくっついてきているが、そこまでいい人間ではない。

「マスター!駄目えええ!!!」

カルラスにつかまっている人間の腕を切断する。

「マス・・・ター・・・?な、なんて・・・なんてことを!」

AIは俺の服をつかんで訴えてきているが……、

そんなことに時間を割いている暇はない。

それに、好きや愛しているという気持ちも、すっかり消え失せている。

あれはまさに、人の心に飢えているだけのことだった。

要約すると、“恋してる俺カッケー!”だ。

その欲求が満たされてから考えてみると、どうでもよくなった。

どうせ、最後はすべての人間と別れる。

もともと利用するつもりだったしな。

……ああ、そのつもりだ。そうだそうだ。うんうん。うん……。

くっそ。未練たらたら過ぎる。

捨てろ捨てろ。そんな考え。ゲームをクリアする考えで行こう。

「AI。助けても、お前はロボットだ。AIをロボットと思わない俺を批判する木偶の棒を乗せる気は、さらさらない」

「でも・・・、助けられるのなら・・・」

「助けた先に何がある。何もないだろ。利益はなく、不利益のみだ」

「利益あるなしで、人の品定めをするのですか・・・?」

「以前、お前が俺に聞いただろ。ロボットである自分をどう思うか。

その時、ちゃんと答えたじゃないか。利用価値があるのなら、使うと」

「私も、同じ駒なのですか」

「そうだ。何が悪い」

AIは目尻に、涙をためてきている。目が徐々に赤くなってきているからわかる。

「い、今まで・・・、私に向けていた心も感情も・・・、嘘・・・」

「ああ」

「っ!!」

AIはカルラスから、身を乗り出そうとするがすぐに首ねっこをつかんで、船内に引きずり込ませる。

「嫌だっ!絶対!私、本当のことだと思って・・・」

「おい、繁殖用ロボット」

「っ!」

「その名目で作られたロボットだ。だが、ほかのとは違う。なぜか。

人間から直接錬成され、一番最初に成功した錬成人間だからだ。

何が言いたいかわかるか。お前のその心は、補正とロボットによる思い込みなんだよ」

「そん・・・な・・・」

AIは意識を断つ。さすがに、現実を受け入れられなかったか。


僕はカルラスに乗って、竜の追撃を粒子砲で振り払い、下から空のバベルの内部へ入る

バベルが建っているこの島の土壌を見る。

すでに魔力はなく、魔石やオリハルコンは死んでいてただの石と化している。

バベルの内部には、心臓部分がある。

以前下のバベルを稼働させるために、三種類の石をもってきた場所だ。

そして、今回も同じようにする。

心臓部は一部分生きているが、それでも他は黒ずんでいて死んでいる。

僕は神魔石を、バッグから取り出す。

インベントリとでも言おうか。だが、長いのでバッグにしよう。

3つの神魔石は、バベルの心臓部分に近づいて舞を始める。

この間に、AIを背負ってくる。

やる必要はないのだが、一応というわけだ。

舞が終わったのか、神魔石が降りてきた。

僕は加護を見せる。

その魔力を使って、バベルは映像を見せる。

意外な反応で驚いたが、映像の方でおどろいた。

この黒の勢力は、例の核戦争のたまものだった。

『魔力子分乖波』というものを使用して、相手国の飛空艇を落としたが、その反動で周辺の魔力が分裂し始め魔力として使用できなくなっていった結果が、この黒の勢力になったというわけだ。

放射能なんてもんじゃねぇな!

AIの背中が黒く光る。

服の背中の部分に、黒の文様が出現する。

空のバベルは、黒色の魔石を出す。

その魔石には、バベルの力が封じられているという。

無いに等しいが、その魔石は魔力を分解する力を持っている。

直接の被害はないらしい。

僕はこの後、AIらを連れてカルラスに乗って、外に出る。

すると、外の竜や浮いている岩石諸共、空のバベルが黒の魔石の中に入った。

ルビーがいうには、この星に生物を保存したければ、初期化するしかないという。

だが地上のバベルから、このような魔石をもらわないと、真のバベルの力が使用されずこの世界を初期化することは不可能になるという。

だから、カルラスを使用して、地上のバベルのところへいく。

「う・・・」

「起きたか」

「っ!・・・“君”は、何で私を殺さないのですか」

何を言っているんだこいつは。

「もう、用済みなんですよね?」

「用済みじゃないぞ」

「・・・私の中に新たに入った力が、そう言っているのです。

地上とともに歩むことになれば、貴様は用済みだって」

僕は神魔石をにらみつける。

すると、映像を隠れて見せてくれた。

慣れていない莫大な魔力をもった加護をいきなりもらえば、終焉の予知が脳内に響いてこれが宗教や加護の末裔がことごとく滅んでいった理由であるという。

毒も少量から慣れていくと、少々濃い毒でも無効化されるという。

だが、いきなり濃い毒を飲むと死ぬというのと同じだ。

……魔力は毒だったのか。

いや、濃すぎる酸素も毒だから、あまり変わりない。

「そうだな。用済みだな」

「・・・」

「だが、まだお前には役目と利用価値がある」

「・・・」

僕は心を完全に冷めさせる。

完全に殺すことによって、隙と弱点を殺すことができる。

弱点の弱点が増えるかもしれないが、そんな些細なことは気にしない。


地上のバベルに来る。

そこはすでに、厳重な警戒態勢が敷かれていた。

だから何だ。

エメラルドを使用して、周辺の電子機器を破壊する。

もちろん人間の命も破壊する。

地上に着陸し、バベルの中へ入っていく。

黄金色の内装が、目にきつい光を反射する。

中枢に神魔石と加護を翳す。

加護とAIの胸に、白の光が追加される。

すると、何だか知らないが、心がすっきりしたような感じがする。

今まで、少々鬱だったようで、簡単に人間の人情を捨てられると思っていた。

だが、それは空のバベルの黒の力によるものだったと今は思える。

黒の効果は、周囲に散布ようで、おかげでたった数時間なのに、数か月で築き上げたAIとの仲は、ぼろぼろになってしまった。

後悔はあるが、のちの苦労を考えると、これでよかったかもしれないと思っている。

「ま、マスター・・・!」

「……どうした」

「お願い・・・!何処にもいかないで・・・、嫌いにならないで・・・!」

AIは僕に抱き付いて、泣き出してしまう。

白の光は徐々に大きく輝く光り出し、AIの背中にある黒の光は完全に打ち負け、僕の黒の光も消滅はしなかったがかなり小さくなる。

まさに鬱だったようだ。

ご都合主義に思えるが、カルラスの飛行能力と黒と違って白の加護の引き受けが、相当早かったことから、黒の光が浸透する前に防げたんだと思う。

まぁ、心を取り戻せたのはかなり大きい。

だが、残念ながらもう時間が無い。

「大丈夫。AIの事は好きだし、何処にもいかないよ。あともうちょっとなんだ」

AIの頭を撫でる。

「うん・・・よかった・・・」

後、もうちょっとだ。

……

・・・

私は“君”に、ちょっとだけ嘘をついてしまった。

たしかに、そそのかされた。

だけど、本当は・・・、あの黒い光が私の中に入ってきたとき、急に胸がもやもやし始めたんだ。

『最近無視されている、ほかに好きな女の子ができたのか』

って、今までにない深い憎しみと憎悪、懸念、疑念を抱くようになったんだ。

今までは、どんなに無視されても、“君”なりのこの世界に気づかれないような配慮だとわかっていた。

でも、そんな気持ちも、黒の光が入ってからは、嫉妬や長時間無視され話さないという事やほかに対して興味を持っているという事に、配慮としての気持ちではなく

“何で私だけを見てくれないの?”っていう独占の気持ちが湧いてきたんだ。

独占欲っていうらしい。

だから、私は相手にされていないという事の事実を、『“君”は私に興味がない』という事だと勝手に思ってしまって、しかもそんな嫌いか好きかわからない言動を繰り返して・・・

だから私は『用済み』なのかって聞いたんだ。

そしたら、『用済み』って言われた。

その瞬間に、私の頭は空っぽになったみたいに、何も思わなくなったんだ。

こんな私を処分せずに、本気で愛してくれた“君”はいない。

私が存在する意義や意味がなくなってしまった。

ほかのロボットならともかく、私は意思がある。

初期化は嫌だし、死ぬのも嫌だ。

だけど、唯一の光で希望である“君”に捨てられてしまった。

だったら、痛みが無いように殺してほしかった。

本当に心の中が虚無で、泣くことなんてなかった。

私は・・・勝手にしろっていう“君”の目を見て、絶望する。

勝手に思い込んで、勝手に殺して発言して勝手に絶望して・・・

都合のいい女だよね・・・。

私は虚無になっても、何でかわからないけどあきらめきれなかった。

私はただ私に興味がない“君”を嫌いになっただけで、純粋にマスターとして慕っているからそう簡単には死ねなかった。

それよりも、脚が動かなかった。

動こうとすると、脚が震えて・・・この船から降りれば死ねる。

だけど、大好きなマスターと離れたくない、愛している“君”と別れたくない・・・

死にたくない・・・!

まだ、やりたいことだってあるし、普通の日常を過ごしたい。


地上のバベルに来た時、私は動かなかった。

彼のついてくるな、というかのような冷たい目で見られたからだ。

私はその目を見て、怖気づいてしまう。

それでもマスターが、“君”が・・・どこかに行ってしまって私を捨ててしまう気がしてしまって・・・

私は“君”を追いかける。

 “君”はバベルの加護を受け取る。私もその光を受け取る。

私は痛みを耐えるために、目を閉じた。

だけど、全然痛くなかった。

やさしく包み込んでくれて、とても温かくてなんだろう・・・

私の中の黒い部分が浄化されていくような感じがした。

私は顔を上げて“君”の後ろ姿を見る。

“君”はなぜか白い光に包まれるのとともに、輪郭が薄くなっていった。

私は自然と走っていた。

私はマスターである“君”を、愛している“君”を離したくない!

もっと、もっと・・・人生を一緒に歩んでみたい!

「ま、マスター・・・!」

「……どうした」

私は驚く“君”に抱き付く。

抱き付いた瞬間、君の輪郭が濃くなる。

私は自然とその現象に安心したのか、涙が出てきた。

本当に・・・神々しかったから、神格化したんじゃないかってすごく怖かった・・・。

だから、安心も込めて、自然と言葉が出た。

「お願い・・・!何処にもいかないで・・・、嫌いにならないで・・・!」

「大丈夫。AIの事は好きだし、何処にもいかないよ。あともうちょっとなんだ」

“君”は私の頭に手を置いて撫でてくれて、私に微笑みかけてくれた。

「うん・・・よかった・・・」

すごく安心した。


この後、カルラスに乗って、このバベルの塔の上にある宇宙エレベータをさかのぼることになった。

なにを行うのか知らないけれど、上っていく。

すると、紅・蒼・碧・闇・光というように強い色を発する加護とその色を集めた遺跡の方から、光が集められる。

何が起こっているのかわからない!

光はエレベータに集中し、上方にかかる雲が台風の目のように回転し始める。

回転が速くなると真ん中の方は、光り輝きどこかに通じそうな穴ができる。

その中に、マスターは平気で入っていく。

「マ、マスター!?」

「口を閉じろ!舌噛むぞ!」

「はいっ!」

カルラスは、この雲にかかる膨大で莫大な力に耐えながら、すごく揺れてその穴の中へ入る。

目の前が明るくてまぶしい。

・・・揺れが収まって、だんだんと肌寒くなってきた。

目を開くと目の前には、闇に包まれ蒼の光を放つ不気味な街並みがあった。

・・・

……

さて、始めようか、初期化を。

この初期化は、世界のすべてを初期化し、魔力や魔法で世界の因果などをすべてそのままにして、魔力がない時代や思考レベルを常時計算した上で因果や魂を充てて、世界を再構成するというものだ。

魔法で後方支援するため、実際に魔力を使用して文明開化を行うことはできないのである。

これを行おうとしたが、すべての神魔石の融合魔法の魔力構成を打ち砕かれる。

すると、空のバベルがこの融合魔法に干渉する魔力の流れが、宇宙エレベータの上方から湧いてきたという。すぐにAIを連れてカルラスに乗る。

乗って、上に上がっていくと、厚い雲の層があった。

近づくにつれ、エレベータが透明になっていっている。

さすがに気づくよなー!

僕はすぐに加護を出して、神魔石を使用し周辺から魔力をかき集めて入口を開かせる。

雲は高速回転し、輝くゲートを作る。

その中にすぐに入る。魔力の浪費がはんぱじゃない!

排水溝に流れていく湯水のようだ。

その中に入ると、蒼に光る不気味な街並みがそこにあった。


地上の街とは違って、かなり近代的だ。

車などの乗り物はなく、すべてテレポーターで移動している。

しかも、人間が人間ではない、

蒼に光るサッカーボールが、書類を念力で運んでいる。

「うわぁ」

AIは素直にドン引きしている。

さて、この世界の中心人物は誰かな?

まさか、あの世界自体がほかの惑星の植民地だったとはねえ。

いや、未来の奴が過去へ干渉を働かせたのかもしれんな。

カルラスを黒の結界で、魔力をかくしたり闇夜の背景に溶け込んだりさせる。

そんな中、神魔石がルート指定をして、怪しいところへ進んでいく。

この世界には、地面があの街の部分にしかないようだった。

あの街よりも、下に行ってみようと思う。

下に行くと、そこは海だった。成分を見ると、ただの海水だ。

「しょっぱいのかな?」

「たぶん、ここの海水から塩分を取り出して飲み水としているのかもしれないな。

汚物を投げ捨てている可能性もあるから、絶対に触るなよ」

「もちろんわかってるよ!」

よし、万が一に飲むと困るので、さっさと上昇しよう。

ほかに何かあるか探してみるが、何もなかった。

太陽も全くなくて晴れているところは、とことん星空だけであった。

雲はあるのだが、雨は降っていない。

そして、おかしいのは、あの街以外は何もなく大陸や水中都市すらなかった。

「よし、あの街に戻るぞ」

「うん」

街に戻ると、その街の上空にクラウドガンド公国を見下ろしたかのような図があった。

人や舞台艦も動いている。

ということは……、やはりここは黒だったか。

すると、何やら塔のようなものが街の中央にできていて、そこから水色の光線を放つ。

その光線は離れたところの上空から、バベルの塔の宇宙エレベータに向かって放たれ、エレベータから直接降りて行って、そこから世界に水色の波を世界に流した。

乱れていた人の動きが、ゲームの簡単AIのように規則化される。

そういえば、公国と自国の上層部や配下の一部は、洗脳がかかっていなかったな。

洗脳というのは、演説や歌の影響を受けつけていることを指している。

「マスター・・・、これって・・・」

「歌や演説の影響下におかれたな。あの赤毛のロボットや目に野心を抱いていたあの一位やあの会議室に集まっていた自我の塊も、すべてあの人間と同じようになってしまっただろう」

「そんな・・・」

「そこでだ。あいつらを助けたいとは思わないか?」

「はい!」

「決定だな」

AIと意見が同じになるのは、結構あるが本音と本心がAIと同じになることはまずなかった。そう思うと、とてもすがすがしい。

今までは、完全にクリアの事を考えて、面倒なことを率先して回避してきたからな。

寄り道もたまにはいいかもしれないが、あまりそれを行うとだれてしまう。

よって、今回もだが助けるという本音もありつつ、クリアするための道筋でもあるんだよな。

ん?発言が矛盾しているような気がする。

まぁいいか。

さて、まずはカルラスをこの浮遊島の下腹部に停泊させておいて、

そこからエメラルドの力を使用して転移する。

すぐに塔の麓まで来る。

「はやっ」

「黙れ」

「・・・」

妙に静かだから、変に声を上げると即座に場所がばれて殺されてしまうかもしれないからな。


塔の中に入る。

そこには、たくさんの演算装置が積まれていた。

僕は周辺の物質を物色する。

そうしなければ情報を集められない。

収集した情報をまとめてみると、ここは地上の世界で育った鬼才が、世界を操作したいがために作った場所なんだそうだ。

魔力という麻薬のおかげで、この場所の存在や自分勝手な自立行動を行うやつがいなくて楽らしい。

どうでもいいな。

さっさと壊そう。

神魔石は、何やら膨大な魔力源を発見したみたいなので、そちら方面へ行く。

そこをふつうに辿っていくと、大きな鍵付き扉があった。

「マスター、ここの鬼才を倒さないのですか?」

「そうだな。ついでにそうしよう」

初期化するにあたっても、その鬼才のような奴がいては歴史的イレギュラーが起きてしまう。ま、イレギュラーと思うのは、僕がそう思っているからであるからね。

この星にとってはどうでもいいことだろうけれど、僕は目的を達成させなければならない。

首領の部屋はよくわからない。

だったら、この洗脳する源を壊してから、この場所を破壊すればいいことだ。

それくらいはたやすいだろう。

鍵の扉は、普通に破壊した。

 中を覗いてみると、水色のひし形の宝石が、台座に鎮座していた。

台座に名前が表記してある。

『プリズム・エナジー』

これが源のようだから、破壊する。

「よし、AI。このハンマーで壊すぞ」

「はい!」

ガラスのような割れる音がする。

「よし!これで目的は一つ達成した」

「やりましたね!」

突然、後ろの方角から、拍手が聞こえてくる。

「ん?」

誰だ?此処の奴らは基本的に脳みそばかり。そんな感情はないような気がするが。

「やあやあ、遠いところご足労願ってありがとうといいたいな」

こいつはあれか。

あの赤い頭髪のロボットのマスターか。

「嘘・・・何で・・・?」

彼の隣には、予想通り、赤髪のロボットが出現した。

ま、妥当だろうな。あの学校では、僕と彼以外洗脳状態だった。

一人くらいは、普通とは思っていたが、僕よりも先に卒業し、飛び級で自国を支えた英雄になっている。

こんな奴が英雄になったのは、大方わかってはいた。

目の奥の野心がすさまじかったからな。

僕よりも強いんじゃないだろうか。買い被りすぎかな?

洗脳状態じゃないというところで、すでに怪しいんだけどね。

彼以外の人物は、別に怪しいとは思っていなかった。

今まで、姿も意思も見せたことがなかったからね。

だが彼は以前から、その無洗脳っぷりを披露していた。

これで咎められないとか。普通に怪しいわ!

「ふむ、AIか。君は、過去を知っているのかな?」

「過去?」

「君は人間だった。そうだね?」

「え、うん。そうだけど」

「それ以前は、覚えているのかな?」

「覚えてないよ」

「そうか……」

彼は残念そうに、顔を伏せる。すると、いきなり笑い出す。

「そうか!ならば、思い出させてあげるよ!歴史を!」

話が唐突すぎてわからないな。

とにかくAIの腕を引っ張って、白の結界で触手をはじく。

「ちっ、いいだろう。映像をみせてやるよ」

……

映像を見せてもらった。

内容は、昔仲間たちが、加護を引き継ぐことを行っていた時に、彼自身も航海士の子供でその加護を受け継ごうとしていた。

だが、それを受け継ぐ意味やメリットを知ろうにも、“大切なこと”で締めくくられた。

そこで、AIの母親である機関士にAIとともに、彼は話を聞いた。

彼は僕の事を機関士から知ったそうだが、そんなすでにいないやつが何も言わず、しかも機関士が告白する前に姿かたち消す屑のいう事なんて信じない!と啖呵をきったのだそうだ。

しかも、機関士が見せた僕の写真をAIが見て何でか知らんが、惚れてしまって彼との結婚を取りやめたらしい。訳が分からないよ。

そこで切れて、加護を利用してルビーの力を奪って、加護を持つAI以外を灼熱で消化して、

サファイアの力を奪って、自身とAIを冬眠状態にさせてそのまま時代が過ぎて行って、

僕がよく知る2000年近代になった。

彼はその時代に目覚めて、世界を巡った。

そしたら、彼が使用した魔力を放っといたから、ルビーやサファイア・エメラルドに回収されず、その場で結晶化した。

それが、プリズム・エナジーらしい。

そいつは、莫大な魔力を使って、彼の願いをかなえた。

監視と永遠の世界を創造した。創造というよりも、そうなるように仕向けた。

これでさらに時間が過ぎて、今の時代になって人間をロボット化させて数を増やすという計画に参加して、試しに大人のAIをやったら、あの人形の初期状態になってしまって、どれがどれかわからなくなってしまったようで、そのままおいといたらしい。

「DNA調べろよ」

「頭髪の色がこげ茶から、銀髪に変化しているんだ。わかるわけないだろ?」

「一理ある」

そして、クローンや幼少の人間をそのまま改造するのではなく、監視を含めた世界にするために人間の細胞・・・卵子を利用し、一番洗脳しやすいものをいろいろと組み合わせていった結果、このような世界になったという。

「なんつーか。プリズムこわれたし、もういいんじゃねーか?」

なげやりに言ってみる。

「なるほど。お前は壊せば終わりだと思っているな?」

「ふーん。ルビーとかから奪ったから、新しく加護でもできるような魔石に変化したのか?」

「ご明察」

「うわぁ」

面倒だが、これは好機だ。

一気に奴とエナジーを滅ぼせられる。

「ん?AI?どうかしたか?」

「・・・き、君は私が寝ている間・・・」

「やったけど、何か?」

「っ!」

あー、こういうの気にするのか。正直僕は、どうでもいいんだけどね。

まぁ、奴が性病をもっていなければ、どうにでもなる。

「AI。待った」

「何でですか!」

「あのな。かわいい娘の場合、父親にやられていたりするんだぞ?そう考えたら、AIは幸せ者だ」

「何、悟ってんですか!?」

「俺には分かる!」

「わからないでー!」

すると、彼が話に割り込んでくる。

「僕の婚約者といちゃいちゃしないでくれるかなぁ?」

「いや、おめぇの婚約者じゃねぇだろ。少なくとも、こいつはAIだ。間違えるな」

僕はAIの頭に手を置く。身長は抜かれているが、そこは気にしない。

案の定、このバカは激昂する。

「いいだろう!ここで、雌雄を決する!」

「あのなぁ」

まいったなぁ。目的が完全に食い違っている。これでは、AIはやる気は……

「・・・(許さない)」

うわぁ、完全に怒ってらっしゃる。

やはり、記憶は消えていてよかったと思えるな。

そうでなければ、トラウマとかが残っていて足腰立たなくなっているだろう。

精神的なものは、結構人間は弱い。

そうだな……、この力はAIは使えるのだろうか。

この力というのは、唐突に魔法を使ったりトラックの上に乗ったり、治癒したり、山を勢いよく上ることができたり……。

このほかの世界で培った能力はともかく、最終装備であった剣とか使えるのか?

「くらえ!」

まずはルビーの灼熱を、彼に向かって放つ。

「無駄無駄。ルビーとサファイアの力で、育てられたプリズムに勝てるわけがないだろ」

そうか。ルビーとサファイアが、無理なのか。

ならば、エメラルドで……まずい!

「AI!赤のロボットが銃を構えているぞ!」

「え!?」

『白の結界』

銃撃を防ぎながら、エメラルドの『聖雷』を放つ。

赤髪のロボットは、雷撃によってショートを引き起こし、肉片を周囲にばらまくように爆散する。

「チッ、ララがやられたか」

彼は冷静にそれを見る。AIは、彼女の死を全く気に留めていない彼に、怒りを覚えているようだ。

「ちょっと、君!付き添いの人が死んだのに、なんて態度・・・」

彼はAIに、にらみを効かせる。

「ロボット風情が、人間に口出しするな」

「っ!」

僕は吹っ飛ぶAIを止めない。

この世界の常識をわきまえないから、そうなってしまっただけだ。

少しは反省しろよ。

僕はルビーの『灼熱』を、彼に向かって放つ。

そうしたら、無効化された。

まぁ、もともとは赤と青で作られた物質だ。効くわけがないだろう。

という事で、エメラルドを主力にして攻めてみる。

これでも効果がなかった。

「どうしたどうした!ジリ貧だなぁオイ!」

僕は『白の結界』と『黒の結界』を、織り交ぜて丁寧に裁いていく。

勇者時代の動体視力のおかげで、彼の魔力によって作られた剣を見分けられている。

最初に、あの時代に行っていてよかったと思う瞬間。

僕はAIに、あの世界の最高の職人が再度打ち直した伝説の剣を、ちゃんと持たせる。

「マスター?」

「俺があのAIの元婚約者を抑える。その間に、刺すんだ」

「・・・私は、マスターだけのロボットです。私はほかの人のところになんて、行きませんし行きたくもありません」

「それは大層うれしい。だが、奴を倒さなければ無理だ」

「それにしても、この剣すごく抵抗力ありますね」

「伝説というよりも、超高規格の剣だからな。……行くぞ」

「はい!」

僕は他愛のない話を、適当にやって奴の自信満々な魔法を適当にはじき返す。

「うおっ!?なかなかやるな!次はどうだ!」

魔法の大剣を振り下ろしてくる。

それもまた、『白の結界』と『黒の結界』で防御する。

案外見た目に反して、筋力が必要なかったりする。

「どうしたどうした!」

わざと力を弱めて、鍔迫り合いの状態を作る。

目の前は、白く輝く白の結界と闇をあふれさせる黒の結界、そして水色というよりも青白い光をあふれさせている大剣で、とてもまぶしい。

僕は、結界の一部に穴を開ける。そこが突破口だ。

「オラオラオラ!!」

「チッ、行け!」

「死ね!」

「ガハッ!?」

そして、そのままエナジーの加護諸共、縦に切り裂く。

「おー、よくやったな、AI」

「はい!恨みつらみすべてぶちまけました!」

「そ、そうか……ん?」

天井が吹き飛ぶ。そこには、カルラスがいた。

カルラスの周囲には、神魔石が漂っていた。

室内に停泊し、ルビーとサファイアは、粉々になったエナジーから己の魔力を取り戻す。

「そういえば、何故ルビーとサファイアだけ奪われたんだ?」

理由は簡単だった。

極低温なら、ロボットに行かせればいいし、熱がすさまじいのならば、重力を操って周辺の空気を真空状態にすればいい。

だがエメラルドは、風がものすごくて重力なんて無理だったし、気圧も変化して地磁気関係ないし、まず竜や烈風のおかげで破壊される。

ということで、赤と青が一番取りやすかったのだそうだ。

ほかにも竜がいたが、竜の攻撃が効かないくらい固かったり、小さかったりして意味なかったらしい。

まず、転移で奪われたようだからな。

エメラルドは、雷のおかげで、空気を切り裂いたりしていろいろと安定しなかったからだそうだ。


 僕らはカルラスに乗り込み、この街を破壊した後空を飛び続けて、元の地上のバベルのところに帰ってくる。

そして、この宇宙エレベータを倒壊させる。

「やっと(自宅に)帰れますね」

「ああ、やっと(天界に)帰れる」

僕はルビー・サファイア・エメラルド・上下バベルの魔石が、光るのを確認した。

「やれ!」

〈初期化〔リピート〕を開始します〉

カルラスから、虹色の光が周囲に放たれる。

虹色の光は、混ざり合って白になり、黄金へと色を変える。

黒白の世界だと、狂気に陥りやすいため地上のバベルが、気を遣ってくれた。

「マスター、これは・・・?」

「何、見ておけばいいさ」

……

・・・


私は“君”から、貸してもらった剣で私の元婚約者を切り裂いた。

不思議と罪悪感はない。

剣は、いつの間にか消えてしまっていた。

役目を果たしたから、消えてしまったのだろか?


 いろいろと起ったけど、やっと日常に戻れるんだ・・・。

大変だったなぁ。

あ、地上の人たちはどうなったんだろ?

私はマスターに、再度話しかけようとすると神魔石達が輝きだして、世界を虹や白、黄金の光で包みだした。

「マスター、これは・・・?」

「何、見ておけばいいさ」

「はい・・・、あ」

「どうした?」

「みんなは元に戻るの?」

「ああ、皆元に戻している」

「この光が、元に戻す光なんですね?」

「ああ」

さわやかな横顔・・・。

大変なことをしてきたから、元に戻すっていうことは、これから大変じゃなくなるんだよね?

静かに、“君”と一緒に過ごせるんだよね・・・?


―あと、もうちょっと―


!!

な、なんだろう・・・何だか、嫌な感じがする・・・。

な、なにこの感覚・・・、嫌だ・・・。

私はマスターと一緒に居たい!

「AI」

「はい!?」

「以前の事だが、この世界には魔力を歌や演説以外にも使うやつがいるんだろ?」

「あ、はい。さっきの彼のような感じで大火力の人が、大多数です」

「そうか。俺も同じようなもんだな」

あ、やっぱり、君もなんだ。

あの大魔法・・・月を落としていた魔法がそうなんだね?

攻撃する魔法が使えると、近衛兵に任命されたりするんだよね。

それに生半可な気持ちや学力で、その地位や魔法は会得や修得はできない。

それほど難しいんだけど、君はやっぱりそういう系統の人間なんだね。

すごいなぁ。

私は使えないよ。

私はこの世界を見下ろす。

雲海は、黄金の光に飲まれて光の粒を出して消滅していっている。

「マスター・・・?関係ないものも消滅してますが?」

「大気も魔力によって、変動を起こしているからな。俺たちは洗脳の大元である魔力を消している。だから、魔力によって集まった雲は、魔力がない大気に存在する雲の量を残して消滅する」

へー、そんな関係があったんだ。

そういえば、エメラルドは、大魔力をもっていたから、あんなに雲が渦巻いていたんだっけ?

魔力は多い方が得なのか、そうじゃないのか・・・。

でも、持っている人と持っていない人かわかりやすいよね。

「ついでに、広範囲に魔力を漏れ出させないと、雲は発生しない。人間が数人集まれば、雨乞いはできる」

あ、違った。

結構奥深いなぁ。

私は、自宅のある街を見る。

そこでは、目を疑いたくなるような光景を目にした。

それは、人間が暴れている事だ。

人は、周囲のロボットや人を襲って、切り裂いている。

切り裂かれた傷からは、あの光の粒や血がたくさん流れていて、血からもたくさん光の粒がでていて、ある程度失血したらその人は光の粒になって消えていった。

「え・・・?え・・・?」

「どうした?」

何で?何で、君は?え?え・・・?

訳わかんないよ。君は、地上の人たちを治しているんだよね?

なのに、何でひとが消滅していっているの・・・?

なんで?

「マスター!」

「どうかしたか?」

「な、何で・・・」

「?」

眼科に広がっていた狂気の光景を目にして、それが脳裏に広がって震えが止まらない。

だけど、言わないと・・・。

「何で人が消えてるの!?」

「ああ、魔力を消去しているだけだ。一度粒子に戻して魔力を片っ端から消していく。

そして、再度魔力を使った洗脳はさせないようにする」

「そういう事なんだ・・・」

・・・本当なのかな?本当に、“君”はこの世界から魔力を消すのかな?

私は、何だかすごく嫌な予感がする。

先ほどからずっとだ。

なんでこんなに、嫌な予感がするんだろう。

マスターの事は、信じたい。

でも何だか、今回だけは信じられない。

以前のように、心に闇が現れて鬱になった、っていうような事じゃない。

「マスター・・・。本当に、世界から魔力を消すだけなの?」

「そうだ」

すると、青空が徐々に黒くなっていく。

太陽はぼやけて行って、だんだん存在がなくなっていく。

人や動物、魔力に関係あるものから、光の粒がでていたが、なぜか大地からも光が出始めて、だんだんと削れて行っている。

「マスター・・・?本当に・・・ほんとに、魔力を消すだけなの!?」

「ああ、そうだ」

違う。絶対違う!

こんなの絶対違う!

「マス・・・っ!」

マスターの体から、黄金の光が出始めた。

すると、私の体やカルラスからも光が出始める。

「ま、マスター!お願い!真実を言って!」

「大丈夫だ」

「目をそらさないで!目を合わせて言って!」

私は“君”に詰め寄る。

「泣くな」

ぐ・・・

「泣いてない!話を逸らさないで!」

「そうだな……話すか」

やっと話してくれそう・・・。

「今回のこれの本質は何?」

「初期化だ」

「初期化?」

「ああ。この世界を今の時代まで、魔力で歴史を調整して魂を均等に分配し、世界を再構築することだ」

えーと?

「つまり・・・」

「AIはその体を引き継いで、人間の世界に魂や体はそのままで移行されるわけだ」

「記憶とかは?」

「消える」

え・・・?

「消えちゃうの・・・?」

「もちろんだ。魔力の無い世界に、魔力があったという事実を伝えてどうする。いらないだろうが、そんな知識。むしろ、ネタにされて痛い目を見るし、新しい資源として探される危険性がある」

「マスターとの思い出も消えちゃうの・・・?」

「ああ。体はそのままとは言っても、再構成だから処女は戻ってくるぞ」

「そんな話はしてない!」

マスターは、私を抱いてひざに乗せる。

私はマスターと対面する。

「いいじゃないか。こんな世紀末の世界で、命などの大切なものを失うより、魔力の無い世界の方が、生活は安定すると思うぞ?」

え?マスター・・・?まさか・・・。

「ん・・・」

口づけ・・・。

「さすがに、俺でも暗闇は恐ろしい」

「ま、まって・・・」

だ、だめ・・・マスターや私の人生の危機なのに、のんびり交わって・・・。

「恐怖や不安は、すべて快楽に変えよう。その方が、楽だよ?」

「んっ・・・」

駄目・・・ダメだよ・・・あ、でも・・・もう世界も終わりそうだ・・・。

天は薄暗く、地も少しの大地と核を残して光に消えちゃった・・・。

カルラスも、あと30%しかない・・・。

確かに怖い・・・。

マスターのいう事は、本当だったんだね・・・。

確信したよ。消えてしまって、二度と出逢えないのなら、いっそのこと・・・、

マスターとして“君”として、愛している事を胸に刻んでこの一瞬の時を大事に過ごそう。

「マスター・・・!大好きです!」

「俺もだ、AI……」

冷静に、そして囁きかけるようなやさしい言葉・・・。

〔界穿を行います〕

「始めてくれ……。……エンジェレステンド・イージス。AI」

「はい・・・」

もう、お別れなんだね・・・。もっと、一緒に居たかった・・・。

「また……逢おうな!」

最後に本当のマスターを見れた気がする・・・。

「はい!マスター!!」

・・・

……


 僕は目を覚ます。

〈よくやった〉

眼前には、死神兼悪魔。

眼下には、先ほど『界穿』を行い再構成された世界。

「まぁな。最終的には、幸せになっただろ」

〈ああ。だから、お前はここにいる〉

「お前に情があるならば、AIの姿を見せろ」

〈いいだろう〉

今現在、思念化しているため、ほかの奴から僕の姿は見えない。

地上の人間らが見える距離まで、宇宙から降下する。

 地上は、いまだに化石燃料を利用した物体は、存在していなかった。

まだまだ中世だ。

AIは、以前の容姿をそのまま受け継いで、貴族の次女になっていた。

話を聞くに、貴族として弁え乍らも、領主として民の事を常に考えている善政の為政者になっていた。

まだ彼女が、完全に取り仕切っているわけでもないが、彼女のおかげで民からの信頼は大きいようだ。

〈もういいか〉

「ああ。もういい」

さて、あの女の事は忘れよう。

もう、他人だからな。

あいつには、嘘をついてしまった。だが、後悔はしていない。


 暫くすると、星が輝いて、薄い膜のようなものが剥がれて、5つの石に変化する。

僕は察する。加護を取り出す。

その加護の中に、先ほど出てきた石……神魔石を入れる。

再構成を終えて、普通の惑星として完成したようだ。

この神魔石には、あのプリズム・エナジーから力を取り戻したルビーやサファイアが入っている。

ほかの神魔石も入っている。

何が言いたいのかというと、あの世界にあったすべての魔力が僕の魔力になり、いつでも神魔石にデフォルトとして入っている魔法を使用できるという事だ。

〈次の世界に行ってもらうが、いいな〉

「ああ。いつでも用意はできている」

サイボーグ化は、人間の拒絶反応を抹消すればできることです。

(義手。義足も一部のサイボーグ化の一つだと考えられる)

今の技術でも、医療と協力すればどうにでもなることですので、金銭に余裕がある方はどうぞ、やってください。

一応ノーベル賞には、入るんじゃないでしょうか?

ですが、一歩間違えれば殺人や植物人間量産になりますので、ご注意を。


 これ以上、同じ舞台を続けて出すのは、連続ナンバーゲームの末路を歩むことになります。

ですので、この舞台はもう使いません。使い捨てが肝心なのです。

では、御機嫌よう。


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