六章 第一話
「先の話は無かったことにしてもらう」
前日の晩餐の最後にムロギアが発したこの言葉が、キリクとハリティアの婚約に関することなのか、その条件に関することなのか不明ではあったものの、あの後は何の沙汰もないまま、次の日の朝を迎えていた。
「何か聞きたいことがあるんじゃないの?」
テーブルを挟んで向かいに座っているイセリがキリクに話しかける。この瞬間だけを見るなら、なにも変わらずダマスクで迎える朝のようにも見えた。
「よろしければ、昨日何が見えたのですか?」
「説明するのは難しいんだけど」
口を湿らせるように紅茶を一口飲む。
「私が人の感情のようなものを、体を覆う色で見分けることができるのは教えたわよね」
キリクがうなずく。
「それに加えて、物に向けられた強い意志も色になって見えるのよ」
言われて、キリクはダマスクでの日々を思い返す。
「では、宛名も見ずに手紙を選んでいたのも」
「手紙の色で、選んでいたわ。本当に必要な思いが籠もっている手紙は、それはきれいな色をしているの」
ミアタからの手紙を楽しそうに受け取るイセリの姿が、キリクの脳裏に浮かび上がっていた。
「なら、昨日見た物は」
「とてもひどい、真っ黒な陰が果物を覆っていたわ」
「それはいったどのような意味を持つのですか?」
「はっきりした事は言えないれど……」
そこで少しおびえるように顔を曇らせる。
「相手に害のある物が入っている、そう、ほとんどの場合毒だわ」
「なぜ!」
思わず強く声に出してしまうキリク。
「わからないわ。でも、あの色は確実にアリハルに害を及ぼそうとする意志が宿っていたわ」
「しかしあの晩餐はアリハル様が準備されたもの。そこにそんな物を挟み込めるものなど」
キリクがそこまで考えて、一瞬ハリティアの姿が脳裏に浮かぶ。
「本当はその果物、私か、イセリ様に出される物だった可能性はありますか?」
イセリの部分を強調するように言う。
「それはないわね。悪意は確実にアリハルへ向いていたわ」
「そ、そうですか」と答えつつ、ハリティアを少しでも疑った事に罪の意識を感じる。
「でも、問題が増えた気がするわ」
「どのような問題でしょう」
これ以上問題が増えたとしてとれる選択肢も無い状態であり、現状アリハルに向けられた悪意はこちらに影響があるのかどうかもわからない。キリクとしては後手後手に回る状態がもっとも問題だと思っていた。
「あの時、ムロギア帝はこう言ったわ「そこから見えたのか?」って。私が見る限りあの言葉は本当に驚いていたの。そして近くで果物を確認した後、さらに驚いたようにテーブルからたたき落としていたわ」
「そうですね、ムロギア帝の目から見ても、危険な物だったのでしょう」
そういった後に、キリクにもムロギアの言葉の意味が理解できた。
「ムロギア様よりイセリ様の方が見る力が強く、そしてムロギア帝はその事に強く反応されていた」
「そうみたいね。あの瞬間、とても強く警戒されてしまったわ」
「だから、イセリ様を帰すと言う話を、無かったことにと言われていたのですね」
やっかいな存在として。
「私はただ少しだけ物が見えるダマスクの小娘から、将来やっかいの種になる可能性がある要注意人物に昇格したようよ」
イセリとキリク。要注意人物が要注意人物を従えている。キリクの父も含めるなら、ムロギア帝の懸念もうなずける物になる。
「しかしかなり困ったことになりました。これでムロギア帝の意図が見えたことになります」
「やっかいな芽を摘むだけでは無く、自分の手元で管理したいようね」
「ですね。ムロギア帝はイセリ様を金銭で手放す気は無くなったと思います」
「あなたもね。あなたが望んでムロギア帝に下るならそれはかまわないわ」
あえてハリティアの元へとは言わない。
「でも、私のために望まない所へ行くというなら、そんな事は絶対に許さないわ」
キリクはこの言葉に感銘を覚えたものの、それ故にイセリが助かるのなら自分の身などたいしたものではないように思われた。
「駄目よ」
自分の思いが見透かされているのを知り、苦笑いを浮かべながらキリクは朝食の片づけを始める。
「今日は静かな一日になるかしら」
「そうですね、昨日のこともありますし、ムロギア帝やアリハル様にこちらに来る余裕はないかと思います。私の考えが間違っていなければ、外部の人間に手を借りるような事件ではないと思いますし」
「あら、どうして?」
「昨日の晩餐はアリハル様が準備されたものです。その晩餐に毒を混入させる事が出来、なおかつアリハル様に害意がある人間。浮かび上がる人間は多く無いどころか、ムロギア帝ならばわかっている可能性もあります」
「なら犯人はすぐ捕まるのね?」
「おそらく……難しいでしょうね。犯人が分かっているからといって確たる証拠がなければ手を出せないでしょうし、おそらく実行犯の死体が上がって終わりになるでしょう」
死体という言葉にイセリが顔をしかめる。
「難しいのね」
「帝国も完全に一枚板ではないようです」
「だからこそ、ムロギア帝の平和という言葉に嘘が無かったのだわ」
たとえその平和という言葉に含まれる範囲が、帝国の中に限定されるとしても。
イセリは朝食の後、自分の部屋に戻らずに、キリクの執務机に陣取って、キリクが取り寄せてもらった本の中から、興味を引く物を広げて読んでいた。キリクは仕方なく朝食を食べたテーブルに座り、本を読むフリをしつつそんなイセリをそれと無く眺めていた。
「誰か来たみたいだわ」
イセリが本から顔を上げてキリクの方を見ると、イセリを眺めていたキリクと目が合う。
「え、あぁ、そうですね」
眺めていたのがバレた気がして少しうろたえてしまったものの、実際に入り口付近で数人の足音や話し声が聞こえてきていた。そして来客を告げるベルが鳴らされる。
キリクは、自室に戻られるか確認しようとイセリの方を見ると、問題ないわと言うように右手を振ったので、そのまま来訪者に対応することにした。
「はい、どちら様でしょう」
念のため、扉の前にいるであろう来訪者に声をかけるが、何かしゃべっているらしい小さい声しか帰ってこない。
(女性……?)
キリクは不審に思ったものの、とりあえず相手を確認するために扉を開ける。
「きゃっ!」
扉を開けるキリクの手に、何かにぶつかるような鈍い感触があり、目の前に頭を押さえてうずくまっている女性、ハリティアがいることに気がつく。
「も、申し訳ありません!」
思わず焦って大きな声を出してしまうキリク。その声にぎょっとして本から顔を上げて入り口を凝視するイセリ。
キリクは焦り、ハリティアの周りにいるはずの従者などを捜したが、伴っていないのか近くにいないようで、ハリティアは一人でそこにうずくまっていた。
「中にお通しして」
イセリがキリクに声をかける。
「どうぞ、こちらへ」
まだハリティアが一人な事に納得がいかないが、いないものはどうしようもなく、中へ通そうと外に出る。すると少し離れた建物の角からハリティア付きの侍女らしき人影が見えたが、キリクの視線に気がついてかさっと隠れてしまった。
どうぞといわれてハリティアは立ち上がりキリクの後に続くのだが、キリクと目が合いそうになるとついと視線を逸らしてしまう。
今日のハリティアはとてもおとなしかった。最初に訪れたときの自信に満ちあふれた快活な印象はなりを潜め、服も派手な体のラインを強調するようなものではなく、ふっくらとしたシルエットがフリルでさらに強調され、その真っ白な色と相まって少女のようでもあった。
キリクがどうぞとイスを引くと、ハリティアはおとなしくイスに座ったものの、そのまま黙りこくってしまう。
気まずい沈黙が流れる。
「き、昨日は……」
最初に沈黙を破ったのは、ハリティアだった。いったん言葉を止め深呼吸をする。
「昨日は、弟の危機を助けていただいたようで、その、礼を言いにきたのじゃ」
勢いをつけるように言う。
「たいしたことはしてないわ」
イセリが何でもないという風に言う。
「しかし助けてもらったのは事実なのじゃ。本当にありがとう」
そういって、イスから立ち上がり深々と頭を下げる。
「ちょ、本当にそんな事までしてもらうような事じゃないから」
イセリもあわてて立ち上がり、ハリティアの横に行き、背の高いハリティアの腰のあたりを持って座らせようとする。その光景に、キリクは思わずクスリと笑ってしまう。
「何笑ってるのよ。ハリティア姫にも紅茶をいれて!」
言われてあわててハリティアのためにカップを用意し、紅茶を注ぐ。そのときここに来て初めてハリティアとキリクの視線が合い、ハリティアがはにかむように笑いながら小さな声で「ありがとう」と言った。
今日のハリティアの出で立ちや物腰と相まって、キリクはドキリとしてしまう。キリクはテーブルに移動して空いた自分の執務机に戻ろうとしたが、イセリの「あなたもここに座って」という一言で、イセリのとなりの席に渋々着くことになった。
また沈黙が訪れる。
「それで、ハリティア姫、まだほかに伝えたいことがあるようだけど」
イセリがちらりとキリクの方を見る。
言われてハリティアは少し体をもじもじとさせていたが、意を決したように顔を上げる。
「昨日は、本当に申し訳ないことをしたのじゃ!」
イセリに座らされたイスからまた立ち上がり、キリクに向かって深々と頭を下げるハリティア。
「え、はい?」
驚いたキリクが反応できずに間抜けな返事をしてしまう。
「帰ってから侍女に相談したのじゃ。何がいけなかったのかと」
「そんな、こちらこそ失礼な返事しか出来ず申し訳……」
何の話か気づき、焦って立ち上がるキリクを手で制止するハリティア。
「良いのじゃ。侍女が言うには、男性にはプライドがあり、あのような物言いではキリク殿の立つ瀬が無かったのではないかと。私の中にもおごりのようなものがあったかもしれないのじゃ。その、捕虜であるキリク殿には、とても良い話なのではないかと……」
そこまで言って気落ちするようにうつむいたままイスに腰を下ろすハリティア。
「確かに驚くほど過分な話だわ。帝国のお姫様と敵国である小さな国に仕える家令。吟遊詩人が歌にしそうだわ」
ムロギア帝が噛んでるだけでロマンスから陰謀話に早変わりだけど、とはイセリは付け加えなかった。
「それでわかったのじゃ。キリク殿がこちらに来てもらうのに問題があるのなら……」
そこで言葉を切りもじもじとするハリティア。
「その、わ、わらわが……わらわが……」
「わらわが?」
イセリが促すように言う。
「キ、キリク殿の元へ、と、と、嫁ぐと言うのはどうじゃろうと、その……疎ましく思われていなければ、じゃが……」
最後の方は消え入りそうなほどか細い声で言った後、ぎゅっと目を閉じてうつむき、膝の上で手を握りしめてキリクの返事を待つハリティア。
「だ、そうよ、キリク」
ハリティアが何を言い出すか分かっていたというように、まったく驚いた様子も見せずイセリが紅茶を一口飲む。
実際イセリには、ハリティアが入り口に現れた瞬間から、その身にまとう色から何を言い出すのかだいたいの予想がついていたのだ。キリクに向けられるなんの打算もない強くまっすぐな思い。
キリクはこの時になっても、自分の中の正解が導き出せずにいた。
「疎ましく思うなんてとんでもないことです。この身に余る申し出、その、とても光栄に思います」
言葉を選び慎重に答えるキリク。
「そ、それではわらわを受け入れてくれると!?」
うれしそうに顔を上げるハリティア。
「それは、以前にも申し上げたとおり、今は捕虜の身分であり、まして自分の主人も同じ境遇となれば、たとえどのような申し出であれお受けするわけにはまいりません」
キリクとしてはハリティアが嫌いなわけではなかった。それどころか、屈託のない明るい雰囲気のハリティアに恋愛感情は別にして、好意的なものすら持っていた。だが正直これ以上問題を増やしたくないキリクにとり、有り体に言えば当たり障りの無いようにお引き取り願いたい、そうも思っていた。
「そう、そうじゃな。キリク殿の言うとおりなのであろうな」
そう言って顔に少しだけ寂しげな表情を浮かべイスから立ち上がると「お邪魔したの」と言って出口である扉に向かう。
と、ハリティアが扉の前で立ち止まり、送ろうと立ち上がりかけたキリクへ向き直る。
「一つだけ聞きたいのじゃが、わらわの事を嫌っているというわけでは、無いと思って、良いのじゃな?」
「そのようなことは決してありません」
咄嗟に口をついて出る。
「そうか、それなら良いのじゃ!」
明るく花が開いたかのようにハリティアが笑みを浮かべ、恥ずかしいのかさっと扉を開け外に出ていってしまう。
「あっ……」
見送るために立ち上がったものの、なにをするためにか差し出した右手が空を切る。
「どうるすの?悪化しているように見えたのだけど」
イセリから見た、ハリティアのキリクへの思いについてだった。
「どうも、ならないでしょう。ここに囚われている事がお断りする理由になりますし、ダマスクに帰ることが出来れば、もう、お会いすることも無くなるでしょうし」
騙しているようで少しだけキリクの胸が痛む。
そんなキリクを見て(そう言うことを言っているわけではないのだけど)と、女心に対して意図的に意識しないようにしているらしい自分の家令にため息をつく。
その日はハリティアが来た以外何事もなく過ぎ、翌日の昼食に、またハリティアがやってきた。
「まったく父上は何を考えているのかよく分からないのじゃ」
昼食はハリティアお気に入りの料理人による豪勢なものとなり、その後のデザートを頬張りながらハリティアが不満をこぼしている。
「自分でキリク殿を勧めておいて、いざキリク殿と沿い遂げる方法を話にいったら、それはできんの一点張りじゃ」
小さく切り取ったタルトを口に入れる。
「その方法って?」
恐縮してしゃべりにくそうなキリクの代わりにイセリが聞く。
「簡単なことじゃ。イセリ姫を何らかの交換条件で国に戻して差し上げればよい。そうすれば何の心残りもなく、キリク殿はわらわと一緒になることが出来ると言うものじゃ」
何の疑いもないような顔で、そうじゃろ?と言わんばかりにキリクの方へ笑顔を向ける。
「それは、とても魅力的な痛っ!」
イセリが隣に座るキリクのすねを蹴る。
「どうしたのじゃ?」
ハリティアが不思議そうな顔をして聞く。
「な、何でもありません」
その後は天気の話や南へ遊びに行ったときの話など、当たり障りのない話をしてハリティアは帰っていった。
「駄目よ」
ハリティアを見送り、扉を閉めたキリクの背に向かって言葉を投げるように言う。
「しかし、現時点で二人一緒に帰してもらえる手が無い以上、ハリティア姫の訴えでムロギア帝も考えを変えるかもしれません」
「キリクが本気でハリティア姫と結婚したいというなら、止めはしないわ」
結婚という言葉に動揺するキリクの色がイセリには見て取れた。
「ハリティア姫と……」
キリクはハリティアとの結婚生活を想像しようとして、ただ家令として使える姿しか想像できなかった。では誰となら――
「想像してみてほしいの」
「え、いえ、そんなこと考えていません!」
イセリの言葉に、自分が浮かべた想像をあわててかき消す。
「何を言っているの?私が想像してほしいと言ったのは、あなたをここに残した状態で私が帰ったときの事よ。キリクの中の私は、そのとき本当に喜んでいるのかしら?」
言われてキリクは返す言葉が見あたらなかった。自分を犠牲にして帰ったイセリは、おそらく申し訳ない気持ちで毎日暗い日々を送っていくだろう。その姿を想像するだけで、避けなければいけない選択肢の様に思われる。
「キリクの中の私が非道な人間じゃなくて良かったわ」
「お父様」
夕食後、ムロギアの私室にハリティアは訪れていた。部屋の中で各地から届く書類に目を通していたムロギアが、ハリティアの姿を認めるとため息をつく。
「ハリティアか」
ムロギアは前日の犯人探しと、面倒な書類の多さに辟易し、一息入れようとしていたタイミングではあったが、面倒な話が増えたとこめかみをさする。
「とりあえずそこに座りなさい」
ムロギアは忙しいと追い返そうかとも考えたが、ハリティアのまとう色から、問題を先送りにするだけで意味はないとあきらめ、書類をしまうとソファに体を沈めるように座る。
「昨日の話の続きをしにまいりました」
ハリティアは背筋を伸ばしたままムロギアが座るソファの対面に座り、自分の決意を示すかのような視線をムロギアに送る。
「キリク君の話は駄目だと言ったはずだが?」
「わらわにキリク殿におうてみよと申したはお父様のはず。いざ私がその気になったら駄目とはあまりの申しようではございませんか」
「駄目とは言っていない。だが、イセリ姫を戻すことは出来ない」
「なぜなのです。彼女を残しておいたとしても、こちらに利益は無いではありませんか」
「確かに利益はない。だが、不利益もない」
「不利益?」
「そうだ。手元に置いておく限り、コントロールすることも容易だ」
「アリハルの話では、婚約の条件にイセリ姫帰国の話もあがったとか」
「事情が変わったのだ」
「事情とは?」
「イセリ姫は、私と同じ能力を持っている」
ムロギアが言った瞬間、ハリティアの顔が厳しいものになる。
「嘘を見抜ける、と?」
ムロギアは自分の能力のことを、対外的には嘘が見抜けると伝えていた。相手を騙すには真実を少し混ぜること。
「そうだ。だから彼女が国に帰るのは好ましくない。まして、キリク君のような有能な人間と一緒になって敵対されるのは、我が国にとっては外交上とてつもない不利益となるだろう」
ムロギアがキリクを有能と評価した瞬間、ハリティアのまとう色がうれしそうに輝くのが、ムロギアの目に写った。ムロギアが額を押さえながら小さくため息をつく。
「そんなつもりで会わせたわけではないのだがな」
つぶやくように言う。
「何かおっしゃいました?」
ハリティアが聞こえ無いという風に聞き返す。
「いや、なんでもない。そう言うわけでだ。あの二人を無策のまま国に帰すのは、将来に禍根を残すことになる。さりとてイムニが言うように殺すわけにもいかない」
ムロギアが言った瞬間、ハリティアのまとう色が燃え上がるように部屋を満たす。
「イムニがそのようなことを!?」
「最初に提案してきただけだ。気を静めよ」
ムロギアが眩しげに落ち着けというように手を振る。
「私とて可愛い娘が初めて認めた相手だ。叶えてやりたい気持ちはある。だが、それにはキリク君の心からの同意と、イセリ姫の身柄の問題が絡んでくる。今は辛抱して待つんだ」
ムロギアがそう言うと、ハリティアのまとう色がしぼむように褪せていく。
「わかりました。ですが、あきらめたわけではありません。何か出来ることはないか、私なりに考えてみます」
そう言うと、ソファーから立ち上がり、ムロギアの部屋から退出していく。
ムロギアはマッサージするようにこめかみをもみ、また小さくため息をつく。
「ここまで入れ込むとは、な。これも力の一つなのか」
疲れたようにムロギアがつぶやく。




