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呪い

「な……っ!な………っ!!」

突然の出来事に、オレも皐月も驚き戸惑っていた。

「なっなななな何ですか先輩急にっ!?」

「あなたを見たときに思ったのよ、肌が綺麗だと思ってね」


……そこで、オレは一つの結論にたどり着いた。

勿論コレは百合のご褒美シチュでも何でもない。

彼女の能力――――そこに、彼女の行動の真相がある。


「――――あら、ごめんない。つい、ね」

「つい、ね、じゃねーよ、この百合ヤローがっ」

すぱーんと、オレの平手が先輩の後頭部に炸裂する。反動で二、三歩よろめくと、二人の体は離れた。

「あああああっ!?生徒会長さんに何て事をっ?!」

「痛ったぁー……ちょっと良人君?!力加減ってものを知らないのっ!?」


ダムダムと、保健室の机を叩く舞先輩。怒る方向性が思いっきり明後日の方向に向かっているが、気にしてはならない。

ガシ――――ッ

気づくと、般若の如く恐ろしい顔をした皐月がそこにいた。

「なーにしてくれちゃってるのかな、良人……」


事ここにいたって、自分の行動は決してしてはならない事だと気づかされた。もしもオレが機械だったら、首を曲げる行為でさえギギッと油の切れた音が聞こえていたであろう。

爽やかな、しかし目は完全にキレている皐月の表情の目の前で、彼女自信の拳がぐーぱーしている。オレはささやかな自分の死期を悟った。

オレは来るべき最期の時を待ち、目を瞑った――――


『部長ー?まだ包帯見つからないんですかー?』

保健室の外から声が聞こえる。部長というのは、無論皐月の事である。

「あーっ!!うん、今行くーーっ」

大声で応答すると、皐月はチラッとオレの顔を見た。

後でちゃんと説明してもらうから。

彼女は口の動きだけでそう伝えて行ってしまった。




「で?どうだったんだよ」

皐月が部屋を出ていくと、オレは先輩に声を掛けた。

「……どうって?」

「とぼけんじゃねーよ、見たんだろあの時。アイツの記憶ん中」

オレの質問を聞くと、彼女の目は妖しく輝いた。


「へぇ…気づいていたの。そうよ、私はあの子の記憶を見た」

「……で?」

「でって?」

「だから、アンタがわざわざ覗くって事はオレの過去と何かしら関係あるんだろ?それを聞きてーんだよ」


ギシッと、ベッドのスプリングが軋んだ。先輩は立ち上がると、窓からグラウンドを見ながら答えた。

「あの子の記憶、面白いものだったわ。ええ、そうよ。あなたの予想通り、あの子はあの原発事故……もとい、殺人事件に加担(・ ・)している」

――――は?


「ちょっと待てよ、殺したのは茜なんだろ?何たって皐月が―――」

「私は加担してる、と言っただけよ。殺したなんて、一言も言ってないわ」

今朝の出来事が脳裏に浮かんだ。何かを取り繕うような、彼女の氷のような笑み……

彼女達は一体、何故両親を殺害したのだろうか?

いや、それ以前に――


「――どうやって殺したんだろうな」

「そう、それよッッ!!」

オレの素朴な疑問は彼女の思考に波を立たせたようだ。

「茜さん、あの子は生まれつき体が弱い――いや、例え皐月さんだとしても子供の頃の力では殺す事は――出来ない。一体彼女は、どうやって両親を殺したのかしら」


そして彼女は、思考の世界へと入っていく。梅雨明けの夕日は美しく、彼女の髪を紅く染めた。

先輩が言ったように、子供の力で両親――内一人は女だとしても――つまり大人二人を殺す事など到底不可能だ。

刃物?いや、それだとしても身長差で刺すことも切ることも出来ない。

ならば、彼女達はどうやって――?

「――――呪い?」

考えた末に出た結論は、自分でも腹を抱えて笑いたくなるほど馬鹿げた答えだった。


――でも、彼女は笑わなかった。

「呪い――そう、呪い。呪いよっ!!」

そして彼女は声を荒らげる。呪い……その一言が彼女の疑問を埋めたのだろうか。

「確かその当時は皐月さんも茜さんも影響を受けやすい時期――偶然知ってしまった、いや、故意に呪いを掛けて両親を手に掛けた」


馬鹿馬鹿しいと思った。呪いなんて、それこそ非常識極まりない。

だが、何故だろうか?彼女の言葉は、信用してしまう何かがある。そしてオレはそれに……呑まれた。

「呪い、ね…仮にそうだとして、その呪いが何なのか」

オレの言葉を聞き取ると、彼女はクスリと笑った。


「とある国の村に、こんな伝承、いえ、呪いがあるわ――――」

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