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 先輩の変化に気づくのには、そう時間はかからなかった。

座り込み、がくがくと顔を覆う手は震え、覆われた手のひらの隙間から見開かれた目は、何を見つめるでもなく虚空を見つめていた。

「おい、先ぱ―――」

「―――――うっ」

 

 先輩は短く嗚咽を繰り返すと、小走りで走り出し、やがて我慢が出来なくなったのかその場でしゃがみ込み、液体の跳ねる音が聞こえた。

「――――先輩?」


 胃の中のものを全て吐き出しても、嗚咽を繰り返す先輩。やがて脱力したかのように、音もなく倒れ込んでしまった。

「先輩――?先輩ッッ!!」

 呼び掛けても、反応がない。誰もいない廊下の中、オレと気を失った先輩だけが佇んでいた。



「ごめん……なさい、良人君」

 こぽこぽと、加湿器から白い湯気が立っている。

 白いベッドに腰掛けた舞先輩は、しきりに謝罪の言葉を並べていた。

「気にすんなって、ぶっ倒れた時はさすがに驚いたけどな」

 そう、ここは学校の保健室だ……ここだけの話、ここへ先輩を運んだときに気付いたんだが、先輩って意外に体重が重―――


 ゴス――――ッッッ!!

「いってえぇぇぇーーーっっ!!」

「良人君?顔に浮かんでるから」

 触れてすらいないのに、どうして分かったんだ……鳩尾に拳を一発喰らったオレは、冷たいリノリウムの床板を転がっていた。


「――で?何か見えたのか?」

 互いに落ち着きを取り戻したオレ達は、早速本題にとりかかろうとした。

 しかし、オレの記憶を見た肝心の舞先輩は眉間に皺を寄せたまま何やら考え込んでいた。

「……それがね、何も見えなかった。いいえ、正確にはあなたの(・ ・ ・ ・)記憶は見えなかったの」

 どういう、事だ――――?


「私が人の記憶を見るときはね、白黒の写真として断片的なものとして写るの。でもあなたの記憶に触れたときは、違った」

 眩暈がしたわ、と先輩は呟く。

「こんな事は初めてよ。良人君、過去にあなたの身に何があったのかしら――?」

「それが分かりゃ苦労しねーよ」


 どうして、オレは自分の記憶に鍵をかけたのだろうか?

 そして、どこで鍵をかけたのだろうか?

――ドクン。

 ひどく、心臓が鐘を鳴らす。

――ドクン。

ああ、決まってるじゃないか……

――ドクン。

でも、そう決めてしまったら、オレは認めてしまうことになる。

彼女が、両親を手にかけた事を――


「――良人君?」

「何でもない……きっと、絶対、そんなハズない」

オレの目を覗きこむ舞先輩。その視線から逃れるように、オレは身体を捻った。

「そう、あくまで目を反らすのね。いいわ、どちらにしろあなたはすぐ――現実を目の当たりにするでしょうから」

「そりゃどういう――――」


ガラリ――――ッッ

立て付けの悪い扉が軋む音。振り返ると、そこには見慣れた顔が立っていた。

「――あれー、良人じゃん。どしたの?こんなところで」

「こっちが聞きてーよ、皐月。まさかお前みたいな、厚さ30cmの鉄板でぶん殴れてもへっちゃらな頑丈女が怪我だなんて――ぐほぇあっ?!」


さっき先輩に打ち込められたばかりの鳩尾に、今度は幼馴染の鉄拳がめり込む。

「何で殴んだよっ?!」

「わ、私そんなバケモノみたいな身体じゃないもんっ!!友達が捻挫しちゃったから包帯貰いに来ただけなんだもんっ!!」

「ふぅん……この子があなたの幼馴染なのね?」


彼女の存在を忘れていた。

「あれ、もしかして――生徒会長さん、ですか?」

もしかしねーよ。

「こんにちは、皐月さん。私のことは――もう知ってるわよね?ああ、そんなにかしこまらないで頂戴。私のことは舞と呼んで構わないわ。私、自分の苗字と肩書きで呼ばれるのは嫌いなの」

「え、あ、ああおう、はいっ!よ、よろしく…お願い…します」

すげぇ。あのライオンですら睨みだけで卒倒させる皐月があそこまで縮こまるとは。

生徒会長、コイツは想像以上に脅威かもしれない。

牙の抜けたように呆けた皐月と、静かにベッドに腰を据える先輩。活発な幼馴染と魔女のような生徒会長、対極的な二人だが――――この二人には、似たようなオーラを感じた。


「皐月さん、ちょっといいかしら?」

ふと、先輩が皐月に声を掛けた。

――と、瞬間怪訝な表情の皐月を思い切り抱き寄せた。

超・久し振りの更新です

学校が忙しくてもう…アイデアも浮かびませんし、助けて下さひ……

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