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刹那と永劫の狭間に  作者: 吉岡 澪
出会いと希望
50/72

経緯

 前田荘にやって来てから三日経った。コミュニケーション能力に乏しい私だが大家さんの仲立ちもあって他の住人ともうまくやれている。


 ここでの生活は特に不自由がないし、大家さんがこちらの彼是を私に仕込んでくれるので実はかなり快適だ。


 ただ一つ不満を挙げるとするならば。そう、私が求める収容所やヤギシフの情報が一切入ってこないのだ。前田荘にその関係者がいないというのなら仕方ないのだがあれからフクイもエリオットも姿を見せない。


 本当ならすぐにでも体勢を立て直して敵討ちに向かいたいのだが如何せん今の私には奴らに対抗しうる力がないのだ。


「はぁ……」

「何ため息ついてんのさ。これハカナさんの分ね」


 三木が私の平皿にカレーを盛った。今日は朝からカレー。松風監督が食事を担当するといつもカレー耐久生活になる。カレーは島でも時々食べていたがこちらのほうが断然美味しい。


「おかわりはたくさんあるぞ。みんなじゃんじゃん食べてくれ!」

「まだあるのか……」


 ゲッソリとするマーと青野。逆にいえばそれ以外のメンバーは抵抗がないということだ。


「そうイえば三木さんハいつから夏休ミなんデすか?」

 こんもりと盛られた福神漬けをエゴスバラに押し付けつつ尋ねるマー。


「19日からだってさ。部活も総体終わったらほとんど練習ないし暇になるよ」

 これだからゆるい部活はいいよねと三木。


「そうか。足名稚さんと松風さんはどうだい? 休みはどんな感じかな」

 それを聞いた大家さんがカレンダーに何か印をつけている。各々のフリーデイを調べているようだ。


「夏はまとまった休みがもらえそうです。ありがたいことですね」

「こっちも仕事はないですな」


 うんうんと頷く大家さん。

「みんな実家に帰ったりするだろうから無理にとは言わないんだが、もし都合がつく日でもあれば前田荘でどこかへ旅行にでも行かないかい?」


 おおと歓声があがる。


「わたぁしは、くぁごしぃまのさくらぁじまが見たいでぃす」

「俺は北海道で農業設備の見学がしたいな」

「わしは輪島塗を体験したいです」

「修学旅行は奈良京都に行くらしいから大阪に行きたいな」


 どいつもこいつも勝手なことを。


 私は当然ながら学問の徒ではなく勤労の徒でもない。だから確実にその旅行とやらに行くことになるだろうが……。


 呆れながら改めて思った。


 ここでの生活はこれまでにない安定したものだがこのままではいけない。前田荘はあくまでも一時の避難先であって住人たちとの平穏ライフを楽しむために来たのではないのだ。


 このままのほほんと暮らしていてはいっちゃんとアイに会わせる顔がない。何のために二人は命を投げ出してまで私を助けてくれたのか。


 敵であるヤギシフは本社ビルを見るに表舞台では一流上場企業として名を馳せているようだがその裏では私たちがいた収容所のように何やら反社会的な活動を進めている。そこにどんな目的があるのかは分からない。


 とにかく私にはそれらに立ち向かう義務がある。


 旅行の話題で盛り上がる面々を尻目に私は収容所、そしてヤギシフへ挑む手立てを考え始めた。

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