仲間
「いい加減正気に戻れ!」
少々乱暴過ぎる気もするが話が通じない相手に対しては仕方ない。
いっちゃんはそのまま崩れ落ちた。やり過ぎたか。
「しめた!」
私からいっちゃんへのワンパンに職員達が気を取られているすきにアイは拘束を抜け出し、こちらへ脱出してきた。
彼に聞きたいことが一つ。
「アイ。何で石なんか持ち歩いてるんだ?」
「いやぁ俺腕っぷしが弱いからさ。この前のランニングのとき拾っといたんだ」
皮肉なことにそれをいっちゃんにぶつけることになるとは。
「殴ろうか蹴ろうが自由だが無駄だ。H-20はヤギシフが誇る超兵器となる」
所長が嘲笑うがそんなこと関係ない。
「まあいい。起きるまで待ってやろう」
彼としてはもっともっといっちゃんの力を見たいのだろう。
「う……ん?」
ほどなくしていっちゃんが息を吹き返した。目をパチパチとさせる。
「ハカナちゃんにアイくん! 私はなんてことを――――」
私とアイをかわるがわる見つめた。暴走時の記憶もあるらしい。
「正気に戻ったな!」
アイがいっちゃんの肩をガシッと掴み喜びを分かち合う。
よかった。いつものいっちゃんだ。壊れたラジオではないが叩いて直るとは。
「いっちゃんはもうお前らのコマにはならない! いい加減諦めろ!」
アイも横で力強く頷く。私達はいっちゃんを敵から奪還したのだ。
しかし、所長は気にしていない。
「キミ達は置かれている立場を理解していないようだね。私の言うことを聞きたまえ」
あまり意識していなかったのだが、講堂の中央で私達三人は銃を持った敵に周囲を囲まれている。地上へ向かう出口も近いが如何せん敵が多すぎる。
「大人しく降参したらどうだね? 今なら命だけは保証しよう」
「うるさい! 誰がお前らに!」
アイが叫ぶ。いつの間にか肝が据わったようだ。
そのまま大声で所長達を罵り始めるアイ。無意味に叫んでいるようにも見えるがどうやら私といっちゃんに作戦を立てる時間を稼いでくれているようだ。
「ハカナちゃん」
いっちゃんが小声で何か言う。
「ここは私が時間を稼ぐからハカナちゃんはアイくんと先に逃げて。」
「何を言うんだ。そんなわけにはいかな」
最後まで言わせてもらえなかった。
「このままじゃ三人とも捕まるか撃たれちゃうよ。今なら収容所の職員がみんなここにいる。この部屋を出られれば逃げられるんだよ」
確かにここさえ抜けられれば収容所から脱出できる。
「しかし……」
「ハカナちゃん、今大事なのは全滅しないことだよ。私は後から追いかけるから。さっきの力を使えばここの敵くらいなんとかなるって!」
いっちゃんはどうやら本気だ。
「よし、分かった。くれぐれも無理はするなよ」
作戦は決まった。いっちゃんがメガエネルギーの力を即座に使いこなせるようになっていたのには驚いたが、今はそれに頼るしかない。
「いい? いちにのさん、でいくよ」
私達三人の最後の作戦。うまくいくだろうか。




