表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刹那と永劫の狭間に  作者: 吉岡 澪
二人の少女
28/72

試練

 よく眠れぬまま当日を迎えた。


 いつもの朝礼を終えたあと、教官が私たちを講堂に集めた。いよいよ死線越えが始まるらしい。いつもより物々しいムードだ。


 よく見ればこの収用所の職員が勢揃いしている。それほどに重大な行事のようだ。いっちゃんの話もあながち的外れではないのかもしれない。


「これより死線越えを始める。規定は特にない。どこへ逃げてもいい、とにかく時間まで生き残れ。それだけだ」


 続いて壮年の男性が教官を除け、進み出た。黒衣を纏ったなんとも禍々しい人物。マイクを使うこともなく、


「諸君の健闘を期待する」


 昨夜の放送の声の主だ。この男こそこの収用所の所長。彼から漂う異様な雰囲気に私は体が震えるのを感じた。


 宣告。


「それでは、はじめ」




 それと同時に窓ガラスを破ってスーツの集団が内部になだれ込んできた。全員フルフェイスのマスクをしている。ざっと十数人。この訓練の正体はこいつらとの戦闘のようだ。しかし、数のうえではこちらが有利だ。


 身構える訓練生たち。窓に近い者はスクラムを組んでスーツに立ち向かう。H組のリーダーもその一人。真っ先にスーツに殴りかかった。


「がっ!」

 しかし、その実力はあまりにも圧倒的。リーダーは関節を外され、取って投げられてしまった。命に別状はないだろうが、かなりの大怪我をしているに違いない。


 あれほど厳しい訓練を積んでいたのにも関わらず瞬殺だ。バタバタと倒れていく先発部隊。その様子を見て慌てふためく集団。


 スーツは倒れた訓練生を片っ端から縛り上げる。


 その勢いで前衛を一瞬で突破したスーツ達は、手当たり次第訓練生を襲い始める。蜘蛛の子を散らしたような大騒ぎとなる。


 何もここで奴らとデスマッチをする必要はない。あくまでも生き残ればいい。ここは逃げるのが得策だろう。


 私はなんとかいっちゃんを見つけた。


「ここは危険過ぎる! 血路は外だ、はやく出よう!」


「う、うん!」


 私はいっちゃんの手を取り講堂の外へ。講堂内の同じ組のみんなが気になるが、仕方ない。


 

 とりあえず収用所の外へ。この島の地理は頭に入っている。まずはここから離れなければ。


 ひとまず森に身を隠すことにする。すぐには見つからないだろうし、時間を稼ぐのにうってつけだ。


「ハカナちゃん、さっきこんなの拾ったんだけど」


 いっちゃんが私に小瓶を見せる。先ほど講堂でスーツのうちの一人が落としたらしい。 

 よく見るとアルファベットで何か書いてある。


「なんだろうこれ。 め、めぐあ? いんえ、るげえ?」


 あいにくいっちゃんはアルファベットに弱い。受け取って私が読む。

「メガエネルギー?」


 その無色の液体のどこがメガなのだろう。よくわからないが、重要なもののような気がする。私は小瓶をいっちゃんに返し、近くの川に水を確保しにいくことにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ