開始
思い立ったが吉日。私は積極的に彼女に絡んでいった。今まで邪険にされていたのにと不思議に思ったようだが、性格が性格なので気にしない。
下心をもって近づいた私だが、訓練に励む日々のなかでいつしか友達という存在に飢えていたのかもしれない。
ちょっとしたやり取りが楽しくて仕方ない。十六年間他人との接触を避けてきたのが馬鹿みたいだ。外の世界では普通のことらしいが。
私たち収容所の子どもだって、熱い血の通った人間。訓練されるだけのロボットじゃない。
私が考えを改め、互いに意気投合できれば、あとは早い。
訓練や食事を共にするうちに私たちはどんどん仲良くなった。一ヶ月もかからないのだから若さって素晴らしい。
他愛もない会話。それがいい。
「ハカナちゃんさぁ次の訓練なんだっけ?」
「いっちゃん、教官の話また聞いてなかったのか……」
D-14-Evilのイーから拾ったあだ名、いっちゃん。呼ぶほうは少し恥ずかしいが、なんだかしっくりくる。邪悪なんて単語、さっさと改名させてやりたいくらいだ。
教官も他の子どもたちも、はじめは私がいっちゃんと仲良くしているのを見て相当驚いていたようだが、どうやら慣れたらしく何も言ってこない。堅物と思われていた私のイメージも多少はよくなったのかもしれない。
「H-20! D-14! 組み手を見せろ!」
教官から二人での模範演習を命じられることも。いっちゃんほど素晴らしいやられ役は古今東西探し回ってもいないだろう。
とにかく、私といっちゃんは周囲も認めるような親友になっていた。
「ハカナちゃん、ハカナちゃん。この暗号は?」
「ほら、解読表があるから見ときな」
まあ、彼女が周りの子どもと比べて出来がよくないのは変わらない。すべてにおいてからっきし。神憑り的としか言いようがない。
多少はよくなってほしいのだが……。
そしてもちろん、本来の目的も忘れていない。いっちゃんは明らかに依怙贔屓されている。理由を探らないと私の気がすまない。そのせいで彼女が周りから浮いているのも可哀想だ。
それにひょっとすると、そのことがこの収用所全体に関わる問題かもしれないから。




