表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刹那と永劫の狭間に  作者: 吉岡 澪
叶わぬ願い
2/72

殺伐

 某年某月某日深夜。

 

 もしもこのタイミングで湊第3倉庫を訪れた一般人がいたとしたら、彼また彼女はとてつもない恐怖を覚えていたに違いない。そこはまさにこの世の地獄だった。


 それは、映画やドラマでしか見ないような殺し合いの風景。武装して襲いかかる者。素手で相手に掴みかかる者。今まさに鬼籍へ堕ちた者。爆音が炸裂し、叫び声や悲鳴が響きわたり、辺りからは血の匂いが漂う。

 敵を一人で相手取る、ジャケットを着込んだ男に何人かが発砲するが意味をなしていない。どんなに撃っても避けられてしまうのだ。人間離れした身体能力を見せつけている。


「くそっ! こいつヤ」


 言い終える前に事切れる。腹に風穴を空けられてしまったのだ。とても助かる筈がない。


 そして、戦いはあまりに一方的だった。たった一人の手によって十数人の敵はすべて葬り去られてしまった。そしてなんと、よく見ればこの男二十歳前後の若者である。


 敵を殲滅し、懐から折りたたみの携帯を取り出す。まだ小型化は進んでいない、古い型の携帯。誰かに報告をするようだ。

「こちら古賀。倉庫内部の連中は全滅しました。組同士の取引だったようです」


「よし。敵の中に例の者たちはいたか?」


 彼に作戦を指示した者らしい。この当時、まだ一般ではあまり出回っていない携帯から音がもれている。


「いえ、全員普通の人間でした。トクナガの息がかかった連中でもないようです」


「そうか。警察がそっちに向かっているとの報告だ。事件は揉み消しておくから早く戻ってこい。キミの先輩たちもおまちかねだからな」


「了解」


 通話をオフに。古賀というらしいこの男は何者かとの会話ののち、倉庫を後にした。取引をめぐっての争い、のちに相討ちというかたちで事件は公表されるのだろう。

 遠くからサイレンの音が聞こえてくる。古賀はタクシーを拾い夜の街へ繰り出した。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ