閉会
何度も何度も立ち向かう永劫たち。しかしバーバラには物理的ダメージが入らない。SクラスとAクラスではここまで実力に差が出てしまうのだ。
バーバラの攻撃により、吹き飛ばされた永劫とエリオット。彼ら二人は肉弾戦の能力をもっていないうえに、強化パーツも体にいれていない。まともにやりあっても痛手を負うだけなのだ。
エリオットの音波でなんとか間合いを取りつつ、永劫たちは打開策を練る。
「格闘で渡り合えるのは刹那だけか……。俺の能力では直接あいつを倒せない」
刹那は激しい打ち合いを繰り広げているが、バーバラがやや押している。見かねた永劫。
「仕方ない。こうなったら奥の手か」
出すのが少々早すぎる気もするが、追い詰められていては仕方がない。回復に長ける永劫はともかく、刹那とエリオットはバーバラの攻撃をまともに食らうと命の保証はないのだ。
刹那とエリオットが敵を引き付けている間に、永劫は小型爆弾を取りだし、腰に装備した。軟体ちゃんを倒した時と同じ作戦を用いるようだ。
「これで終わらせてやる!」
バーバラの腰に飛びつき、がっしりとしがみつきスイッチを入れる。
強烈な熱と光が発生し、永劫とバーバラを吹き飛ばした。
「永劫さん!」
エリオットが永劫の元へ走る。再生した永劫はすぐに起き上がりバーバラを伺う。刹那も駆け寄る。
「いまので倒せていたら……」
「全然平気じゃがな」
なんと平然と立ち上がったではないか。
スーツがボロボロに焼け焦げ、メガネも割れてはいるが体は無傷。
「なんだ今なぁ。おどりゃぁは栽培男け? げふん、そがぁな小細工通用せんっつーの!」
永劫の額から冷や汗が流れる。
「Sクラスのうえに強化パーツとサイボーグ手術かよ。ドクターS。あんたはつくづく罪なお人だ」
「ここは命を懸けてでもあの化け物を止めるほかない……エリオット。腹を括って……」
あわあわしているエリオット。気を引き締める。
そんな三人にバーバラもついに痺れを切らしたようだ。
「ごちゃごちゃうるしゃぁ! わしゃぁおどりゃぁらを倒してアンザイ日本支部の次期トップきなるんじゃ!」
スーツを脱ぎ捨て迫り来るバーバラ。その目は血走り、鬼神を思わせる。
「地獄一丁目に三名様ご招待!」
「このままやられてたまるか! ヤギシフ御庭番衆の底力を見せつけるぞ!」
「おう!」
彼らが激突する寸前、
「な、これは? うぉぁっ!」
なんと今度はバーバラの腹と胸に大穴が空いた。背後から攻撃されたようだ。
「新手か!?」
崩れ落ちるバーバラの後ろから現れたのは古賀。目が虚ろになり、足取りもおぼつかない。エリオットが一番に駆け寄る。
「古賀ちゃん。怪我はないか? それにしてもさっきの攻撃はなんだったんだ? あの筋肉野郎を一撃で葬るとは」
古賀はその問いには答えず、右手を振り上げた。口元がキュッとつり上がる。
「いかん、エリオット! すぐに古賀から離れろ!」
「えっ? あの」
古賀の手から黒い塊が迸る。刹那がエリオットを助けていなかったら、彼は先程のバーバラのようになっていただろう。
「古賀ちゃん! なにすんだよ。俺だよ、エリオットだよ!」
古賀は聞く様子もなく再び攻撃態勢に。
「永劫さん、古賀ちゃんはどうしちゃったんです!? 俺らが分からなくなってるみたいです!」
「おそらく、メガエネルギーを摂取してしまったんだろうな。それも大量に」
話している間にも黒い塊が永劫たちを襲う。
メガエネルギーを多量に摂取した古賀はついに能力を会得してしまったようだ。刹那は右へ左へ攻撃をかわす。
(この能力は……もしかして……?)
彼女には思うところがあるようだが、今はそれどころではない。
永劫は古賀に訴えかけるが暴れる彼には届いていない。
「まずいな、攻撃されているとはいえ、古賀には手が出せない」
「急激な摂取による暴走……ここは私が」
刹那が古賀の後ろに回り込み羽交い締めにする。
「せ、刹那さん。危なくないですか?」
「大丈夫……それより早く……」
体を押さえられながらもなお、古賀は例の黒い塊を発射している。刹那もずっと押さえているわけにはいかなそうだ。
「今だ! エリオットいくぞ!」
加減された音波とボディブローが古賀を襲う。サイボーグではなく強化パーツもいれていない彼はばたりとその場に倒れた。
「古賀ちゃん……どうしちまったんだよ」
膝をつくエリオット。唇を噛み締める刹那と永劫。
しばらくして、会長から敵軍の全撤退が伝えられた。バーバラが倒されたころ他のボス格も撃退されたようだ。それによりトクナガ・アンザイ・サイオンジはヤギシフからいったん手を引くことにしたのだ。
かくして、ヤギシフ御庭番衆はなんとかメガエネルギーの防衛に成功し大きな犠牲を出すこともなく戦いを終えた。




