膠着
戦闘開始直後、いきなりバーバラに殴りかかった古賀。ボディーブローを打ち込んだ。彼にしてはいい動きを見せたがしかし。
「おどりゃぁは資料に載っとらんかったな。Bクラス以下に用はなぁんじゃあ。さっさと失せぇ!」
あっさり止められ、その拳を握り潰された。そして首を掴まれ持ち上げられる。ジタバタともがくも抜け出せない。細身のバーバラだが怪力を誇るようだ。
「邪魔じゃ。どっか行っとれぇ!」
「がはっ!」
つるし上げた古賀の腹に突きをいれる。あまり強く打ち込んだようには見えなかったが、古賀はセキュリティシャッターを突き破り貯蔵庫の中まで吹き飛ばされた。
「古賀!」
永劫としては助けにいきたいが、バーバラの戦力を考えると下手に動けない。刹那とエリオットに任せきりというわけにはいかないのだ。
「まだゆうとらんかったな。俺の能力は筋力の増強。人間の動きゃぁすべて筋肉に依存しとる。そりょをおさえ、サイボーグ手術もした俺ぁ史上最強ゆうわけじゃ」
身体の強化。シンプルなだけにある意味一番恐ろしい能力である。
「よくもかわいい後輩を!」
エリオットの発する強烈な音波も頑丈なバーバラの肉体には通じない。その潜在筋力は攻撃にも防御にも威力を発揮するようだ。
「刹那、エリオット。一人ずつ攻めてもだめだ。三正面攻撃で迎えうつぞ!」
「了解した」
「はい!」
三人はバーバラを囲み、一斉に襲いかかった。音波と高速の打突、細胞に直接ダメージを与える能力を付加したローキックなど無限増殖でもしていなければ、即御陀仏となるようなAクラスならではの技の数々がバーバラを襲う。
「おいおい、三人がかりじゃけどこの程度け?」
しかし、彼はそれぞれの攻撃を捌き永劫とエリオットを撥ね飛ばした。勢いよく飛ばされたが、積んであった段ボールに突っ込んだのでとりあえずクッション代わりにはなったようだ。
バーバラの攻撃をなんとかかわした刹那。彼女の速さをもってしてもバーバラは厄介な相手のようだ。
「あまり……調子にのらないほうがいい……」
彼女はさらに能力を強めに発動し、バーバラとの距離を詰めた。いわゆるインファイトである。
拳、蹴り、手刀の激しい応酬が続く。やっと起き上がったエリオットには刹那とバーバラの動きが全然見えない。昔見た少年漫画での、対異星人戦のようだと彼は思った。
「この速さについてきている……?」
刹那の攻撃はたしかにバーバラを捉えてはいるのだが、その筋力によって防がれ、しかも彼はもっと重くて速い打撃を返してくる。能力持ちの刹那でもバーバラは手強い相手のようだ。
刹那もついに壁に叩きつけられてしまった。エリオットが慌てて助け起こす。刹那は頬に擦り傷をつくってしまった。
「神速と言われた刹那さんの動きを捉えるとは……」
「おいおい、もう終わりけ?ヤギシフの御庭番衆もてゃぁしたことないんじゃの」
「くそ! 何か打開策はないのか!」
一方。再び貯蔵庫内へぶちこまれた古賀。
彼は様々な色が混ざりあった液体を湛える巨大なカプセルの中に沈んでいた。実はこのカプセルこそがメガエネルギー生成装置。ヤギシフの要である。
カプセルの上部を飛ばされた衝撃で割り、古賀はメガエネルギーを体全体に浴びながら気絶している。
相当なダメージを負ったらしく体がピクリとも動かない。しかし、彼はメガエネルギーをその体に取り込んでいる。このような形ではあるが念願が叶ったのだ。
最強を名乗る御庭番衆バーバラ。果たして永劫たちに勝ち目はあるのだろうか……?




