圧倒
「ど、どうやって入った。外は永劫さんたちが守っていたはずだ!」
少々パニックになりつつも、落ち着いて時間を稼ぐ古賀。懐の拳銃に手を伸ばす。
「簡単なことだよ。俺の能力さ」
鉄製の仮面で顔を隠した敵は言うがはやいか、消失した。
古賀は辺りを見回すがどこにもいない。完全なるディスアピアー。
「ははは。ここだよ」
不意に後ろから声がする。振り向くと鉄仮面。
「俺の能力は体を気体にすること。侵入は十八番中の十八番ってね」
確かにそれでは守りをいくら固めようと、貯蔵庫の隙間から入られてしまう。これは会長の采配ミスである。永劫たちと比べて戦闘力が泣きたいほど低い古賀には過酷な状況。
相手が気体とあっては殴ろうが撃ち込もうが効き目がない。つまり物理的な戦いではいけないということ。
「とにかく、メガエネルギーは頂、おっと!」
古賀が放った銃弾を鉄仮面は上半身を気体化させることでかわした。それが戦闘開始の合図。古賀は決定打を模索することにした。
一方、こちらは貯蔵庫の外。撃ち込まれる銃弾を音波で防ぎながらエリオットは敵との間合いを詰めている。彼の相手は小柄な男で、手持ちの拳銃で攻撃をしてくる。
「おいおい、飛び道具はせこくないか? 御庭番衆なら能力使ってみろよ!」
銃弾をさばきながら、エリオットは敵を挑発する。
「ケケケ、なら使ってやるよ。葬式費用は自己負担するんだな」
笑い方こそザコ敵だが、彼は恐ろしい能力を持っているに違いない。エリオットは相手の出方をうかがう。
「ハッ!」
敵が体に力を込めた瞬間、彼の周囲が真空になった。エリオットは音波を飛ばすが、当たらない。もちろん真空の状態でいる能力者自身にダメージはない。
「お前の音を操るってのも悪くないと思うぜ。でも、音ってのは、いってみれば空気を伝わる波だ。俺の能力とは相性がよくないんじゃないか?」
言いつつ真空の範囲を徐々に広げる。このままではエリオットは真空の餌食。既に戦いの場を貯蔵庫前から移した刹那と永劫にも危険が及ぶかもしれない。
「やっぱりせこいな。男なら音波だろ」
吐き捨てながら、じりじりと追い詰められるエリオット。もし彼に永劫と同じ力があればこんな敵、なんでもないのだが。
「まったく、お前にそんな余裕はないだろ?」
偶然にも、古賀とエリオットは同時にピンチを迎えていた。反則としか思えない能力者。彼らはどう立ち向かうのだろう。そして、姿の見えない残りの二人はどこに……?
メガエネルギー争奪戦線はまだ始まったばかりだ。




