宣戦
あっという間に一ヶ月が過ぎた。古賀は永劫たちと様々な任務に挑み、数多の場面で活躍した。彼らは立派なチームになりつつあった。しかし、能力のない古賀はどうしても劣等感を感じてしまう。自分にも永劫たちのような能力があったらと。
そんな時。彼らに会長から呼び出しがかかった。
「今日集まってもらったのは他でもない、四日後のヤギシフフェスタのことだ」
重々しく切り出す会長。社長もどこかそわそわしている。
「一大イベントですよね。それが何か?」
永劫が尋ねる。またも任務だろうか。
「実はその会場をアンザイが狙っているらしい。奴らはサイオンジとトクナガにも声をかけて本気で我々を潰すつもりだ。これがその声明文」
手渡された声明文には明後日の夜にフェスタの会場、つまりヤギシフ本社を襲撃する旨が書かれていた。エリオットも尋ねずにはいられなかった。
「対策はどのように?」
会長が呟く。
「とにかく持てる戦力を全て投入する。キミたちにも力を尽くしてもらいたい。ヤギシフ始まって以来の危機だ」
「あの、会長」
「ん、キミは確か古賀だったか。なんだ?」
「僕にもメガエネルギーをください。能力があればもっとお役にたてると思います」
しかし、会長は首を横に振った。
「駄目だ。キミにはまだ早い。能力を持つことがまだ分かっていないだろう」
「ですが会長!」
「だめだだめだ。メガエネルギーは生産が難しく貴重なものなんだ。ここで浪費するわけにはいかない。分かったな? これは命令だ。当日は永劫の指揮のもと敵を殲滅すること」
そこまで言われてしまうと何も言えない。古賀は引き下がった。永劫がエリオットと古賀と肩を組んでいる。仲がよくなったようだ。
その後、作戦を確認したのち解散となった。当日はヤギシフの全御庭番衆が動員されるらしい。
そして、古賀たちが帰ったあとの会長社長室。社長が会長に問いかける。
「どうして古賀にメガエネルギーを与えないんですか? 戦力になるでしょう?」
確かに古賀はメガエネルギーへの未練を捨てきれないらしい。社長もそれに気がついている。
それに対し、会長は答えた。彼にも思うところがあるようだ。
「彼からはとても強い力を感じる。実際、メガエネルギーを少し与えただけであの強さだ。あんな奴に能力を目覚めさせたら、我々に牙を剥くにちがいない。当日は殉職でもしてくれると助かるのだが……」
「なるほど」
「そういうわけだ。Sクラスの出番だな。当日はしっかりと頼むぞ」
会長は窓際に向かって話しかける。誰もいないのに。社長は首を捻る。しかし、会長には確かに聞こえた。ヤギシフが誇る最強のSクラス御庭番衆が発した、
「かしこまりました、会長」
との返答が。




