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上空から見下ろす、一面の銀世界。

「おじゃましま…す……」


恐る恐る、靴を脱いで玄関から続く廊下に足を降ろした。すると


「どうぞ。」


と、天堂真矢のあっさりとした言葉。


玄関には、私の脱いだブーツの他には男物のブーツ一足しかなくて、家の中もシーンとしていて他に人がいる気配もない。



「え、ねぇ、家の人とか…いないの?」


ふと湧いた私の質問に


「あ?いねぇけど?俺、一人暮らしだもん」


あっさりと天童真矢はそう答えた。けれど、


「はぁ?なんでこんな高級マンションに一人暮らしなんてしてんの!?」


そう聞かずにはいられなかった。

だって、どう見たって高校生かそこらくらいの男の子が、1人で住むようなところじゃない。


けれど


「なんなんだよ。別に人の勝手だろーが。複雑な家庭環境ってヤツだよ。」



食ってかかるように言ってきた天堂真矢のその、“複雑な家庭環境”という言葉に、これ以上は聞いちゃいけないような気がして言葉を無くしてしまった。


すると天堂真矢はそんな私の事を察したのか


「おい、そんな顔をするな。単純に両親が海外に住んでるってだけだよ。」


そう言った。


「そ、そっか…」


そんな簡単な返事をしながらも、それなら最初からそう言えばいいじゃない。そう言わなかったのは、やっぱり…


ふとそんな詮索をしてしまいそうになった。けれど、そこは立ち入っちゃいけない事のように思ったから、私はもう何も言わずにそのままリビングへと続く廊下を歩いた。



近代的なモノトーンのステキな絵が飾られた廊下を進んで、リビングへと通される。


「う、わ…すご……」


目の前に飛び込んできた光景に、思わずそんな言葉が漏れる。



そしてその光景に目を奪われた。


なぜなら目の前にあるそこは、壁一面の大きな窓。カーテンもついていないそこからは、普段住んでいる街並みとは思えない32階からの絶景。それはまるで、雲の上から街並みを見下ろしているような感覚。


それも普段見ることのない、真っ白な雪に染まる一面の銀世界ーーー



私は息を飲んでしばらくその景色に見惚れた。

すると


「あ?座んねーの?」


私の気分を一気に現実へと引き戻す、無愛想な声。


「……あぁ、もう。なんなのよ……。せっかく素敵な景色に心奪われてたのに。」


思わずそう答える私に、


「あ?おまえでもそんな乙女ちっくなことを言うんだな。」


天堂真矢は相変わらずな毒を吐いた。


「な、なによっ失礼ねっ!」


そう反論する私に対して、

天堂真矢は突然間合いを詰めてきて



グイッーーーー


「っ………/// なっなによっ!」



私の顎を…クイッと片手で持ち上げた。


そして


「心ん中も、乙女なわけ?」


そんなことを言いながら、さっきとは別人のような色気のある瞳で見つめてきた。



ドキドキドキドキ…………



自然と心臓が波打ち始める。そして思わず、呼吸まで止まって胸が苦しくなってきた。


でも、これはときめいているんじゃない。


「っ!ヤメてよ!」


私はプイッと天堂真矢から顔をそむけた。



すると天堂真矢は、今度はさっきとは別人のような無垢な笑顔を浮かべて


「ウソだよ、ばーーーか」


そう言って、くくくっと笑った。



色気のある表情の後の、ふんわりと甘い笑顔。


その笑顔は、なぜかすごく…嬉しそうだったーーー





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