彼の、マンション
さっきの公園まで来た。そして、その向かいの超高層マンションの門をくぐる。
う、わ。なに、ここ…
高級感漂う門をくぐると、そこは真っ白な大理石張りの広いエントランスと、なにかの石像。高級感あるソファーとテーブルが並んでいて、天井からはシャンデリアの光が降り注いでいた。
おまけに、エントランス傍にコンシェルジュまでいる。
「あのーすみません。テンドウ シンヤさんて…何号室ですか?」
コンシェルジュに聞いてみる。
「天堂様のお知り合いですか?」
「あ、はい…借りていた傘を返しに来たんですが…」
「では、天堂様へお伝えしますので、少しお待ちくださいね。」
丁寧な応対をされ、少し待つ。すると
「お待たせ致しました。天堂様のお部屋は3201号室でございます。そちら右手のエレベーターよりお上がりくださいませ。」
「あ、ありがとうございます…」
案内されるがまま、エレベーターに乗る。すると押してもいないのに32階を示すランプが付いていた。
どんどん高層階へと登っていくエレベーターに、耳がキーンとするのを感じながら、あ、傘くらいコンシェルジュに渡せばよかった…なんて思いつつ、もう遅い。玄関で突き返して帰ろう…そう考えていた。
エレベーターを降りて3201号室へと向かう。白い壁にエンジ色の絨毯張りの廊下は、シーンと静まり返っていて、まるでホテルのようだ。
場違いなところに来てしまった気がして、急に緊張してきた。そしていよいよ3201号室の扉の前まで来ると、緊張感はさらに激しくなった。
どうしよう。ピンポン押してお母さんとか出てきたら…
あいつみたいに口が悪くて、メガネとか光らせながら“おたくとシンヤはどうゆう関係ざます!?”とか、あれこれ聞かれたらメンドーだ。
急にそんな想像まで膨らんで来て、やっぱりコンシェルジュに預けよう…
そう思って引き返そうとした。その時…
ガチャッーーー
私の背後から3201号室の扉が開く音がしたーーーー