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毒舌天使と、子猫と、傘。


「え?あぁ。そーよ。だからなに?」


なんとなく彼に腹を立てていた私は、そんな可愛くない物言いをした。すると


「いや、だっせぇーと思って。」


彼も心の無い言葉を放った。


「あーもう、あんたと話してるとだんだん腹が立ってきたわ。ねぇ、そのこ、あんたが飼ってくれるんでしょーね。」


「あ?おまえが飼えねーなら仕方ねぇだろう。俺が飼ってやるよ。」


「………っ !そ。ありがと。よろしく頼むわよ。」



失礼な物言いに腹が立った。けれど、子猫を抱く彼の手は優しくて、子猫もゴロゴロと気持ち良さそうに懐いているのは分かった。


きっと彼は猫が好きなんだろうな…それなら彼に子猫を任せるしかないじゃない。私は飼ってあげることが出来ないんだから…。そう思った。


すると


「おい、おまえ、ちょっと預かってて」


突然子猫と傘を渡された。


「え!?」


そして彼は、私の返事も聞かずにフードを目深にかぶると、舞い散る雪の向こうに走って

行ってしまった…


「な、なんなのよ…」


すると。少しして彼が戻ってきた。


「ん」


差し出されたのは温かいココアの入った缶。


「え?」


「やる。こいつ(猫)…拾ってくれたお礼。」


「あ…ありがと。」


「あと、右手出して」


「え?」


「いいからっ!ほらっ」


そう言って、彼は無理やり私の右手を掴むと、



ドボドボドボドボッ


「なっなにすっ…」


「うるせぇ」


ペットボトルの水を私の右手の甲ーつまり子猫に噛まれた傷に掛けはじめた。


「はぁ?ふつう消毒するとこじゃないわけ?」


「あ?消毒液かけたら肌にいるいい菌まで死んじまって治りが悪くなるだろーが。洗うくらいでいいんだよっバカ女。」


「あーもうっ!なんなのよっ!」



彼の口調に腹が立つ。けれど、濡れた手をハンカチで丁寧に拭き取ってくれる彼の手つきは優しかった。


「ほらよっ」


そして彼は…手の甲全体を覆うくらいの、あり得ないくらい大きな絆創膏をそこに貼った。


「ちょっ、ちょっと。いらないわよ、絆創膏なんて。ダサいじゃない。」


「あ?こいつが噛んだところが化膿したとか言い掛かりつけられたら、飼い主の俺が困るだろーが。もともとだせぇんだから、絆創膏くらいいいだろう。」


「は?もぉ!なんなのよ…あーもう!この子、頼んだわよ。私、帰るっ!」


私は、預かっていた子猫と傘を彼に突き返すと、家に帰ろうと立ち上がった。


すると


「あーおまえ、ムカつく。待て。」


そう言って彼は子猫を自分のダウンジャケットの中に入れると、傘を私に突き出して来た。


「なによっ傘なんて…いらないわよ。」


「あ?うるせーな。こいつを拾ってたから熱が出たなんて思われたら嫌だから使えよ。」


「イヤよ。私に傘貸したから風邪ひいたとかあんたに思われたらイヤだもん。」


「あ?思わねーよ。俺んち、そこだもん。じゃあな。」


パタパタパタパタ……


「えっちょっ…」


…なんなのよ。突っかかる様な物言いだったくせに、彼はそんな言葉を残してあっさりとその場から駆け出して、公園の目の前のマンションへと消えて行ってしまった……





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