毒舌天使が舞い降りた。
雪の降る日。私は公園に捨てられている子猫を見つけた。
「キミも捨てられたの?」
段ボール箱の中で震える子猫が、彼氏に振られたばかりの自分と重なって、なんとなく拾い上げた。そしたら…
「痛っーーーー」
子猫は私の手の甲にかぷりと噛み付いた。
捨てられたせいかな、人に対して警戒心があるらしい。
「…よしよし。大丈夫。怖がらないで。温めてあげるだけだから。」
私はしばらくそっと子猫を抱きしめ、ただずっと撫でていた。
ーーーシンシンシンシンーーーー
子猫はだんだんと慣れて来たけど、舞い散る雪もだんだんと激しくなって来て、私の身体も冷えて来た。けれど
「ごめんね。私の家、猫は飼えないんだ…」
子猫を見捨てることも出来なくて、ただ、その場でずっと抱きしめながらしゃがみ込んでいた。するとーーー
ザッーーーー
「え?」
突然目の前に男物のブーツが現れた。
見上げると、キレイな男の子が私の頭の上に大きな傘を開いてくれている。
多分、高校生くらいだろうか…
ふわふわとした天然パーマ風の柔らかな栗色の髪の毛に、
長いまつげ、茶色がかった瞳、色白な肌ーーー
少しベビーフェイスな甘い顔立ちの彼は、
まるで天使の様に見えた。
私はその、天使くんに “ありがとうございます” そうお礼を言おうと思った。けれど先に話しはじめたのは彼の方だった。
「おい、ブス。その猫拾ったんならちゃんとメンドー見てやれよ。」
「っ!?」
え、な、に!?この人っ。口悪っ
あまりにもルックスと言葉との印象が違い過ぎて、驚いて声も出ない。
すると
「おい、聞いてんの?その猫、まさか拾ってまた捨てたりしないだろうな。」
「…!? あ、えと…うち、猫飼えないし…」
その男の失礼な物言いに驚きながら、しどろもどろしながら彼の言葉に返事する。すると
「あ?飼えもしねーのに優しくすんなよ。」
その人はそう言うと
ザッーーーーっと、私の腕から子猫を奪うと、私の頭上に開いていた傘も自分の方へと引き寄せた。
「え!?」
「勘違いすんな。傘、お前にさしてたんじゃなくて猫にさしてたんだよ。」
「っーーーー!!」
なんとなく返す言葉が見つからない。けれど初対面とは思えない彼の物言いに腹が立つ。
「あのねぇ!あんた…鬼?こんな雪の日に、女の子に対して優しく出来ないわけ!?」
「あ?女なら、初対面のヤローに優しくしてもらえて当たり前とか思うなよ。危機感ってものがねーのか。」
「………っ!!!」
な、なんなのよ、こいつ…
そう思った時。
「…っん、くしゅんっ!!」
冷えた私の身体が、くしゃみをした。
「…おまえ、手、噛まれたのか?」
くしゃみの時に思わず口元にやった私の手を見ながら、彼はそう聞いて来た。