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デスティネーション・ユニバース  作者: 小田崎コウ
第六章
29/30

第二十九話

ご心配をおかけしましたが、

諸般の事情により、突然の中断をしてしまい、

申し訳ございませんでした。

ついに第六章の開始となります。


※姫様の画像を、最新のものに変更しています。

「ここで……いいのかな」

 オレたちはアインツヴァル湖で兄さんと別れて川をくだり、矢文が記した合流地点に着いたんだけど、ここ何?

「うぅむ……なにやら、みなあわてておるのぉ……」

「あの、建てかけの小屋はなんなんですかね?」

 アデナの西から徒歩で一日弱。かつてのワルゲンの村の横を流れていた川が硬い地盤の土地に阻まれて、湖のようになってるのはいいとして、水害のあとみたいなんですけど。



「冒険者? もしや、土の部族からの……」

 サモンさんの後ろから誰か近づいて来てるんだけど、見覚えのある声だなぁ。

「って、山口さんじゃないですか! なんでこんなところに!」

 サモンさんの前に出ると、山口さんが例の現地で生産させた麻スーツを身にまとい、陽気のせいか汗をハンカチでぬぐっていた。

「ストレインさん!? ずっと探していたんですけど、連絡が取れなかったもので!」

 山口さんも仰天して、オレに駆け寄って来た。

「あぁ、どこにいるとか言ってませんでしたね」

 いずれホルクスの件を報告しようと思っていたんだけど。


「おお、ヤマグチではないか。久しいな……」

「って、アインツヴァル姫! 姫がなぜこのような――」

 姫がお花摘みから帰って来て、山口さんに気づいて気さくに声をかけていた。

「いくらアデナでも、姫が出奔した情報ぐらいはつかんでいるんですよね?」

「ええ……ですが、こんなところにまで現れるとは思いませんよ」

「ここなに? 何の工事してるの? ひどいありさまだねぇ……。こんな土地を所有する事になった人には先見の明がないよね」


「ここは、ストレイン殿に下賜される予定の城を作る現場なのですがねぇ……」

「ぶふぅっ!」

 水差しに生じさせた水を口にしかけていて、吹いてしまった。

「ちょっ! なにがどうなったら、そんな事になるんですかぁ?」

「いや、公的には日本国が租借地として借り受けたって事になっていますが、王子はストレイン殿の事をご存じのようで」

「あー……」

 あの件にたいする口封じもかねたお礼であり、オレと姫にたいするけん制ってところかな?

 オレの脳裏には、ぺろりと舌を出すレンカの姿が一瞬浮かんで消えていった。

「じゃあなに? ここオレたちで使っていいわけ? けど、ぬかるんで、ちょっと雨が降ると水没するような土地……」

 だけど、水上バイクモードなら数時間でアデナに行けて、水路という面ではここはアインツヴァル湖なみの要地なんだよね。王子もその事に気づいていたのか。

「まぁ、城というのも比喩ひゆでして、木製だと水没した時に困るので、石造りで城館を建てるって事なんです。事務所の分館として、一部屋空けておいてくだされば。あと委員会の開催地もここにしようかと」

 うわぁ……人がいない間に、堀を埋めてくるなぁ。

「ふぅ……それにしても暑いですな……」

 なんか、オレの水差しをガン見してるんだけど。

「ああ、気がつきませんで」

 オレはいったんひっくり返して飲みかけの水を排出した。

「なっ……」

「ああ……実は、オレ……。水の元素魔法も使えるようになったんですよね」

 オレは水差しの中に、魔法で新鮮な水を発生させて、山口さんに手渡した。

「火に続いて水ですか……。たしか、水は……」

 のどの渇きはいかんともしがたいのか、山口さんは冷たい水をぐびりと飲んで、オレを見つめた。

「ええ。この水流操作……水を作り出す事もできるようになったんですが、これ以外は回復魔法ばかりなんですよね。おかげで生存率は上がったと思うんですが……」

 この事については、あえて考えないようにしていたんだけど……。


「なにか問題でも?」

「よく考えてみたらですね……。オレのファイヤーアローがオレに直撃したらフツーに死ねます」

 ハーピーの攻撃魔法をくらいそうになった事を思い出して、冷や汗をかいた。

「あぁ……火力に特化していて耐久力もなく、鎖かたびらすら装備できないのでは……って事ですか」

「それにレベルが上がっても体力が上がるってアレ、上限値はそこまで上げてやるから自分で鍛えろよってやつですよね」

「えぇ……まぁ……戦士とかなら、そういう心配はあまりないのですがね」

 まぁ、なんでも楽する方面に特化してたよね。反省(ry

「ただ、水流操作……もとい、水流創造をボートに使用する事で、水上バイクのような運用が可能になって、上流へもこがずに移動できるんですよ」

 現時点では最大の利点かな。それにサモンさんや姫がけがするような事態も起きていないんだよね。

「ほう……ならば、東はアデナまで。西はアインツヴァル湖から別れる川のすべてに移動可能ですか」

「このあたりに家でも建てたいな……って実は思っていたんですよねぇ……まさか、国の予算で建てていただくとは」

「いや、ストレイン殿も半分支払っていただきますよ? あぁ、これまでの功績によるプール金を当てましたから」

「そんな勝手な……まぁ、けど……悪くないかな」

 ちょっ……オレを地球に返すつもりあるのかな。けど、アルミラさんを迎え入れるにはいい感じじゃない? いつまでも水の部族の隠れ家ってのも気を使うだろうし。


「えぇと、あっしたちは土の部族から、任務の依頼という事で来たんですがね? いったいなにをしろって言うんですかい?」

 さすがにじれて来たのか、サモンさんが問いかけてきた。

「ほう……ストレイン殿の城の建築のための問題解決に土の部族に頼んだら、ストレイン殿が派遣されたと……はは、笑えますな」

(なーんか笑えないけど、表向き日本の租借地なら土の部族も知らない……わけないよね)

 オレは、オルテナの王子の身に起きた悲しい出来事を思い出して、冷や汗を流した。


「三日ぐらい前に南部で大雨が降ったのですが、その際に巨大な水生の魔物がさかのぼって来たのですよ」

「はは……サケじゃあるまいし……」

「で、水がそこそこ引いたあとでは海に帰れない事に気づいたのか、暴れまくりましてね……」

 山口さんは水分を摂取したせいか、これまで以上に汗を流していた。

「うーん。ですけど、火の矢や火の玉は潜られてしまえばそれまでですし、水流操作で与えられるダメージはしれているでしょうし」

「仰る通りだとは思うんですが、土の部族も何か考えがあっての事かもしれま……アレです!」

 話している最中に山口さんが指さした先には、水生のドラゴンのような魔物が顔を出して咆哮ほうこうしていた。


「なっ……なんじゃ? あのような魔物見た事がないぞ?」

「ひぇぇっ……でけえ口ととがった牙で、かみつかれたらどうなるか……」

 姫とサモンさんも恐怖に震えているようだった。


「って、アレをオレたちで退治しろって言うんですか? ムリムリムーリムリ! 紅い三本ツメのやつか、青いやつでもないと、無理ですってば!」

 オレは高速で手をブンブンと振って、否定してはみたものの、水の部族が全員槍を手にして潜っても余裕で全滅しそうだし、ほかに頼れそうな人間がいないのもたしかだな。


「わたしも頭を抱えましたよ……租借地の協定をして二日後にこれでしたからね」

「そういえば……城を作るのならボートで乗り込めるようにして欲しいんですよね。水位が上がった時用のも含めて」

 あんな魔物を倒さないといけないのなら、それぐらい主張してもバチは当たらないって。

「はぁ……たしかに、委員会を開く上でも便利なので検討していましたけど」


「その水路はどうやって掘るつもりだったんですか?」

「ああ、土の部族にお願いするつもりですが。そろそろ土の部族の代理人をしている人間が来るので話を聞いてみましょうか」

 まずはそれからかな。仲介をルジェネさんに頼まないといけないかもしれないけど、引き受けてもらえるかなぁ……。





次回は一週間ほど先になりそうです。

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