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デスティネーション・ユニバース  作者: 小田崎コウ
第五章
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第二十八話

ようやくハーピー編も終わります。

「ほう……わたしが召されてから、そのような事が起こっていたのか……」

「ええ……父はいまだに生死が不明ですが、どう考えても……」

 体をのっとられているわけじゃないんだけど、口が勝手に動いて兄さんと会話してるって、テラシュールな状況なんですけどぉ?



「それで……その、お願いしていたような事は可能でしょうか?」

『目標を固定して、魔法で追尾するのだな……。魔法は使えないが、目標の固定はわたしも行っていた』

 って、魔法もなしにロックオンできるって、何者ですかぁー!


「そういうわけなんで、お願いできませんでしょうか? ハーピー一匹にすら大苦戦しているんです」

「一匹? たった一匹でよいのか? たとえ百八匹いたとしても、そのすべてを把握する事ができるぞ?」

 あなた、本当に元人間ですか? アルミラさんの伯父さん、マジパねぇ――。



「もう少しで範囲かな……んじゃ……」

 オレは目を半眼にして、遠くのろうそくの火を見つめるような状態に持って行き、中心点以外は灰色でテクスチャがはがれたような状態に持っていった。

『一匹……二匹……四匹……六匹……いまだ』

 オレの概念が反映されたのか、接近してくるハーピーたちに、赤いロックオンマークが次々に付着され、オレは次の瞬間に合計百本近い、炎の矢を射出させた。


「うおぉ……すげえ! 数十本もの火の矢があとを追っていやすぜ」

『左のE2の個体は動きが速い。回避したあとの空間に、火の球を、”置いて”おけ』

 あなた、戦闘機パイロットでもしていたんですか? そういえば、この戦闘妖精に名前を……いや、やめておこう。



「おお……あれほどいたハーピーを、すべてたたき落としてしまうとは!」

「まだ本命が残っているようですぜ? なんだか、怒り狂っていやすぜ?」

 これまでの個体とは明らかに違う、金色の体毛と、凶悪な顔をしたハーピーが頂上付近から接近して来ていた。

 だけど、もう怖くない。状態異常を治す魔法を自分に長期間かけ続けているからもう大丈夫!


「お、そうだ……」

 オレは念のために魔物語の魔法も展開させた。っていうか、常駐ソフトみたいだよね。


「シャィヒャーイェル! フェンィリッペン!(よくも娘たちを)」

 だけど、魔物が一匹しかいないのなら、炎の剣を付与した武器を持つ、サモンさんと姫がいる限り、接近しての攻撃は困難であるはずだ。これで勝つる!


「ヒィーェンラッ……※ァヒュタール」

 どうやら魔法を詠唱しているようで、翻訳する事はできなかった。

「魔法が来ると分かっていて、じっとしていると思うのか!?」

 オレは伯父さんの助けを借りて、左右から三本づつの火の矢を放ち、中心には一発の大きめのファイヤーボールを放っていた。


「フィヘェッ!」

 次の瞬間、ハーピーが放った風属性だと思われる範囲魔法が、下方からオレたちに接近して来た。

「さ、させるかぁっ!」

 すでに現象となってからならともかく、いまはまだ魔力の塊が形をなす寸前であるとオレは見抜く事ができた。


「ディスペル・マジック!」

 オレは魔力移動の魔法で、体内に残されていた魔力の八割ほどを、ハーピーの魔法の軌道にぶつけて、散んじさせた。


「ヒュケェィッ(余裕だわっ)」

 さすがに追尾がおろそかになった事もあり、ハーピーは即座にオレの視線外である丘の影に隠れて、先ほどの魔法をかわしていた。


「魔力がもうない。向こうもすぐには襲って来ないと思うし、いったん引くべきだ」

「そうじゃな……では走るぞ」

「へ、へいっ!」

 オレたちは、ややドタバタとその場を離れようとしたのだが、ここが好機だと見たハーピーは、追撃をかけて来ていた。

「うぉぉ……あっしは足がおそいんで……追いつかれそうでさぁ」

「泣き言を言うな! わたしとて、重い鎧をまとっているのじゃぞ」

 オレ? オレは常駐魔法を維持できなくなったので、意味不明の言葉を叫びながら真っ先に逃げていたそうだ。


「ヒュェッ……ピギッ」

 だが、後詰めの兄さんが的確なタイミングで死角から矢を放ってくれたので、ハーピーは追撃をあきらめたそうだ。



「くぅ~疲れやしたぜ……生きた心地がしやせんでしたが、さすがエルネスト殿ですなぁ……石弓を選んだ事を後悔しちゃあいやせんが、あこがれまさぁ」

 サモンさんがそう言うと、なぜか姫は西○きよし師匠のように目をむいて何かを恐れていた。

「あれは難物だな……。おそらく、空気中の振動を把握できる、特殊な耳を持っているようだ」

 一度狙撃した場所からはすぐに離れる狙撃手のように、兄さんは弓を手に戻って来た。


(ふぅむ……なんかひっかかるな)

 空気中の振動か……まてよ?


「オレに提案があります。主力は兄さんで、サモンさんと姫はオレの護衛をお願いします」



「ふむぅ……。本当にそのような事で……」

「あっしには良くわかりやせんな……」

「それが実現できるのなら、可能だ――」

 兄さんは笑みを浮かべて肯定してくれた。


「だから、さっきからなんなの? 姫」

 オレは、割って入ろうとする姫の腕をつかんだ。

「いや……気にするでないぞ……」

 姫は挙動不審だけど、あの日なのかな。だとしたら悪い事を……。



「ファンファンファンファン、ファンタジー! ファンファンファンタジー!」

「ピィゲルタァ!?(なんなの!?)」

 オレはハーピーのボスが視認できるところで、準備万端すませて、歌い始めた。


「ふぉぉっ! 耳栓をしていても、相当なものですぜ!」

「まさかストレインが、これほどまでに音痴だったとはな」

 一度カラオケに誘われたら二度と誘われなくなり、仕方なくヒトカラでリサイタルを開いていると店から追い出される始末。そんな特技(?)が役にたつとは……。

 オレはボスのいるあたりに放射状にスピーカーの魔法を展開し、さらに強弱をつけるため、伯父さんが脳内のミキサーを操作してくれていた。

「ピュヘリュワァ……シャイアァン!(信じられない、音痴)」


「ファンタジーの世界に来てぇ、最初に困る事は~トイレがない。ファンファン(ry」


「トゥリファー、ミケィルスァー(もうやめて。とっくに(ry)」

 ハーピーは耐えきれなくなったのか、音の発生源であるオレの元に一直線に向かって来た。


「うぉぉ……大丈夫なんですかねぇ」

「信じるしかないのぉ……あの勢いの突進を受けたら……」

 サモンさんと姫はオレを警護しながらも、脂汗を流していた。


「ピヒャァーッ!」

 眼前に迫ろうとしていたハーピーは、横合いからの兄さんの矢を受けて地面にスライディングした。


「みんな下がって! ファイヤーアロー!」

 オレも二十歩ほど下がってから、三半規管が狂った上に側頭部を撃ち抜かれてもがくハーピーの腹に、十倍の魔力を込めたファイヤーアローを撃ち込んだ。

 例の薬草がなければファイヤーボールで良かったんだけどね。


「うぉぉ……死んでいやすぜ……」

「お、恐ろしいのぉ……これが間違えて当たりでもしたら」

「うーん。ここまで効くとは……」

 火の矢の先端にくぼみをつけて、モンロー効果を狙ってみたんだけど、ハーピーのボスの腹部はぼっこりと穴が空いて即死していたんだよね。

「おや……これはなんじゃろうな」

 姫が、ハーピーの首に、首飾りがあるのを発見した。

「もしかして、それがあったから魔法が使えるようになっとか。体のサイズ的にはあまり変わらないですしね」

 これまでの憑依された系のボスとは違うみたい。

「ほぉ……。だがまったく素養がないわたしやサモンでは意味があるまいな」

「これでさらにストレイン殿が強くなるのなら、大歓迎でさぁ」

「そう? じゃあ……。実はこのデザインは好みなんだよね」

 オレは翡翠のような宝石のはまった首飾りを身につけた。


「おお、うまくいったようだな。さすがはおれの弟だ」

「いえ、兄さんの弓があっての作戦ですから」

 兄さんが弓を手に歩いて来た。木に登ってもらって狙撃してもらうだなんて、兄さんじゃなかったらそもそも検討もしなかったよ。

「だから……なに?」

 姫の手がピクリとしたので、オレは問いかけたが顔をそらしてしまう。



「うぉぉ……なんですかい、この弓は。あっしでも三分の一も引けませんぜ」

 (うわぁ……やけに直線的に飛んでると思ったんだよね。伯父さんといいこの一族……。アルミラさんも……)

 オレは恐ろしい想像をして、ごくりとつばを飲み込んだ。



『そのまま動じずに聞け……。背後で何者かが監視しているぞ』

(うぉっ……。本当にうしろに目がついてるんですかね。でも何者でしょうか)

 アルミラさんの事で失礼な事を考えていたので、オレは大量の汗を流しながらも、表面上は平静を保てた。

『その気なら、とっくに攻撃しているしな。見えたぞ。あれは土の部族の人間だな……』

「えぇっ?」

 オレは思わず振り向いてしまい、奇妙な面をかぶった何者かが、走り去ってしまった。


「どうかしたのか? ストレイン……」

「まさか、まだハーピーにおびえているんですかい?」

 いや、さすがに倒した事で克服できたって……半分ぐらいは。


「土の部族らしい何者かが監視していたみたいだけど、堂々と出て来ればいいのにね……」

「土の部族か……。かつての大乱のさいに一度だけ歴史に姿を現したにすぎず、おれもその一端しか聞かされていないな」

 兄さんはサモンさんから弓を受け取って、背中の方に回しながら、何者かが逃げた方をむいて、遠い目をしていた。


『矢が飛んで来るが、心配はいらん――』

「みんな! その場を動かないで!」

「はぁっ? なんなんですかい?」

「ストレイン……まさか、そなた……」

 なんか姫は青ざめてるんだけど、どゆ事?


「うぉぉ……びっくりしやしたぜ」

 次の瞬間、弧を描いて飛んで来た矢が、オレたちの眼前の草むらに突き刺さった。

「矢文か……古風な事をしているな」

 そう言って、兄さんはひるむ事なく、矢を地面から抜き出して、矢文を開いた。

「いったい、なんなんですかい?」


「任務の完了を確認した。追加の任務を要請したいそうだ」

 兄さんの言葉にオレたちは顔を見合わせた。



ちょっとやりすぎかとも思いましたが、映画ドラゴンロードを見たら、これぐらい序の口だからいいかと思いましたw

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