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デスティネーション・ユニバース  作者: 小田崎コウ
第二章
10/30

第十話

これにて第二章の終了です。

「うーん……この場を離れたら、どこかへ移動するかもしれないし、いま討伐するしかないですよね」

 魔力はすでに半分ほど回復して来てはいるが、先ほどのような絡め手を使われると、対処に苦労しそうだった。

「まだ、結構な数が残ってると思いやすが、また『アレ』をやりますかい?」

「いや、死体とかがそのままだったし、同じてつは踏まないんじゃないかなぁ……」

 煙で殺そうだなんて、オークの考えるような方法だとは、とても思えなかった。


「サモンさん、ちょっと待ってくださいね……なにか有効な共通魔法は……おっ!」

 レベル四の時に覚えたっきり使っていない拡声の魔法と、さきほど覚えたばかりの魔法を組み合わせる事をオレは思いついた。

「いいですか? サモンさん。オレが合図をしたら、背後から攻撃を受けてもだえ死んだかのような悲鳴を上げてください。そしたら、なかから出て来ると思いますので」

「そんなのにひっかかりやすかね? よござんす……ストレイン殿を守ると決めたからには、従いやしょう」

「叫んだあとは、そこの岩の陰にでも隠れていてください」

(よし……落ち着くんだ……)

 オレは無詠唱で二つの共通魔法を時間差で発生させた。

「うぎゃぁぁっ! ばかなぁっ! ぐふぇぇっ!」

 オレは合図を送り、サモンさんに断末魔の悲鳴を上げさせたのだが、少し演出過剰な気もするような。

「オイラード! ホエイッ! ミストラレイ……クシイヤッ(外にいた戦士は殺したぞ! 一匹逃げたから、追いかけるのを手伝ってくれ)」

 オレはレベル六で覚えた魔物語翻訳を使い、オーク語でしゃべり、それを拡声の魔法で洞穴の中まで届けるという作戦なのだが、果たして……。


「オグレード! ホイヤッ(よし、追撃だ!)」

「アレッ! アレッ!(いけっ! いけっ)」

 オレもあわてて物陰に身を隠すと、六匹ほどのオークが走り出て来て、下り坂へと走っていこうとした。

「炎の精霊よ……ファイヤーボール!」

 オレはオークの背後から、三発分の魔力を込めたファイヤーボールを放ち、集団の中央に着弾させてさく裂させた。


「オリゲア? ホンガ?(いったい、どうした?)」

「せやぁっ!」

 次の瞬間、二回りほども体が大きいオークが洞穴から姿を現したので、サモンさんが全力で振りかぶったファルシオンで、胴体をひとなぎにした。

「フグゥェッ!」

「ちっくしょう……こいつの皮は鬼みたいに固いですぜ!」

 サモンさんの渾身こんしんの攻撃も、大きいオークには衝撃を与える事ぐらいしかできなかった。

「サモンさん、下がってください! ファイヤーアロー!」

 オレは高速詠唱で三本の矢を頭上に浮かべて、胴体に二発、右手に一発を至近距離からブチ当てた。

「ミルギェー……シルファ……エイムリィ……(勇者よ、どうか我の命を助けたまえ)」

「こいつ、命ごいをしていますね……聞きたい事もありますし、両腕の腱を切って、暴れられないようにしてください!」

「エィミヤル……フォバッタ……チムニィ……エラ(聞きたい事があるから、生かしておいてやるが、無傷というわけにはいかんぞ)」

 オレは大きいオークに告げて承諾させた上で、サモンさんのファルシオンで処置をしてもらった。


「ふむ……こいつは、オークロード……オークの小部族の王のようですね」

「マジか……もしかしなくても、大物じゃねえか……」

「よし……じゃあ、オークの耳を切って来ますから、こいつの番をしていてください」

 オレはまず、下り坂のところで団子になって倒れているオークのもとに歩いていった。

 その後、もう洞穴の中には残っていない事を確認し、すべての耳を回収した。都合二十九個と生きたオークロード一匹……さて、どれぐらいの査定がされるのやら。




「んじゃまず、乾杯といこうぜ! まさか、こんなに恩賞がもらえるとは、思わなかったぜぇ……」

「かなり危うい展開もありましたけど、さい先がいいですよね」

 結局、基本報酬が銀貨三百枚で、オークが二十九体で、色をつけてもらって銀貨千五百枚。生きたオークの恩賞が銀貨五百枚で、都合二千三百枚で、手数料の一割をはらっても、一人銀貨一千枚を確保する事ができたのだ。

「それに、アデナまで移送の護衛も、なかなかおいしい仕事だしな。あっしは、笑いが止まりやせんぜ」

「その護衛の事もあるし、酒はほどほどにしておかないと、明日がつらいですよ?」

 生きたオークロード……しかも最近の統率のとれたモンスターの襲撃の事を考えて、オレが転送されて来た場所でもある、首都のアデナへの移送が決まり、オレたちも護衛に参加する事になっているのだ。



「ストレインさん! サモンさん! 来てください!」

 魚の煮付けの骨をよけていると、顔を見た事のある警備の人間が、酒場に駆け込んで来た。

「敵襲ですか? もしや、オークロードを奪い返しに?」

「なぁに、そんなの返り討ちにしてやりましょうぜ!」

「いいから、来てください!」

 オレたちはわけがわからないまま、オークロードを閉じ込めていたおりの前に連れて来られた。



「そんなばかな……ここに着いたばかりの時も、ピンピンしていやしたぜ?」

「これ……病気とかじゃないですよね。顔の色が妙ですし、毒でも盛られたんですかね……」

 おりの中では、巨体を誇るオークロードが、大量の血を吐いて絶命していた。

「魔物が町の中に入って来られるわけもないですよね……。という事は……」

 警備の人間は震える声であたりを見渡した。


「人間の中に……裏切り者がいるという事ですね――」

 オレは、その結論を口にしながら、背筋に冷たいものを感じてしまっていた。




「ケホっケホッ……。片道で五日ですかぁ……。けっこう遠いですよねぇ……」

 砂ぼこりの舞う街道で、強風が吹くたびに布で顔を覆いながら、オレは弱音をはいた。

「はぁっ! どっちみちアデナに行く事になったとはいえ、気が重いですなぁ」

 オレはアデナの冒険者ギルドの本部に出頭しての報告を命じられてしまい、経費程度しかでないというのに、サモンさんも同行してくれる事になったんだよね。

「魔法で高速移動とかできればいいんですけど、風の元素魔術になるんで、現状使えないんですよね」

「まぁエルプシィの町にはもう、めぼしい依頼もなかったですし、首都のアデナ付近で稼ぐのも、悪い手じゃないですぜ?」

 珍しい動物を狩って皮や肉を持ち帰るとかの依頼はオレに向いていないのもたしかだった。まだ微調整が効かない事もあり、もれなくウェルダンにしてしまうからだ。

「回復ができて、そこそこ戦える人……神官戦士か聖堂騎士でもいるなら、討伐の依頼とかも受けやすいんですけどね」

 神官戦士と聖堂騎士の違いは、戦士と神官の割合の違いで、神官戦士の方が高度な神聖魔術を使えるんだよね。

「たった二人で行けってのも、ちぃとムチャな話ですぜ。まぁストレイン殿とあっしなら、なんとかなりますわいな」

 エルプシィの町にいるという冒険者も、異世界由来ではなく、サモンさんのような現地の人だった上に、ふだんは民兵をしていて、ちょっとした仕事を休日にしているような日曜冒険者だったので、参加するわけには行かなかったんだよね。

「でも、サモンさんがアデナに行った事があるから気が楽ですよ。オレは別のルートだったんで、エルプシィからの行き方を知らないんですよね」

 この世界の地理はまだ把握できてない。アデナ地方のアデナ王国に属する町や村でも、行った事があるのは五分の一程度なんだよね。




ちょっぴりサスペンスな展開にできました。

で、犯人を捜し出すために、一日一人を投票で(それは違うw)

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