第九話 いざ転校生
「えー、今日から新しいクラスメートになる神崎 隼人くんだ」
「………神崎 隼人です…よろしくお願いします」
……あの後、ようやく職員室にたどり着いた俺は、「転校生だからしょうがないだろう」という優しい考えを一切持たない担任とおぼしき先生にこっぴどく叱られた
……そして俺の転入のクラスへと案内された
やっぱり、人前で話すっていうのはものすごく緊張する
ましてや遅刻した身だからな
立ちづらい……
「初日から遅刻するという勇気ある転校生だから皆、仲良くするように!!じゃあ神崎、あそこの空いてる席につけ」
「はぁ?……すみません…分かりました」
早速この先生にもクラスメートにも変な印象を持たれただろうな…
そう思いながら指示された席に座る
はぁ、気が重いな
周りを見渡しても当然知らない人ばかり…
まあ、知っている人もいるかもしれないが、覚えてない
「………隼人」
「………………。」
という訳ではないようだ
俺の隣の席———
蓮がいた
「まさか、同じクラスになるとは」
「…ありえないことじゃない」
HRが終わった後、俺は蓮に話していた
「まぁ確かに、やっぱり田舎なだけあって生徒が少ない」
今日見た感じでは、一学年に120人ってところかな
うちのクラスが30人ぐらいで確か他に2クラスあったからな
「でもまぁ、よかったよ」
「………?」
不思議そうな顔でこちらを見る
「お前と同じクラスになれてさ〜、やっぱり独り身だと初日からきついからな」
…遅刻もしたし
「…………そう」
昨日と同様そっけない連から時計へと目をやる
まぁ、それはそうと次の授業の準備をしとかないといけない
「……………」
「…………………ふぅ」
やはりここでも問題があったようだ
「…教科書がねぇ」
昨日荷物解体してなかったからな…
朝もバタバタだったし、完全に忘れたといって間違いない
しかたない、蓮に見せてもらおう
「なぁ、蓮」
隣で着席したままじっとしている蓮に声をかける
「………何?」
「あのさ教科書見せてくれないかな?」
「…忘れたの?」
「まぁ、そんな感じ」
「…………」
「……………駄目」
「え!!」
こともあろうか、予想だにしない答えが返ってきてしまった
「え、なんで!?」
「………………」
「…………次の授業……河本先生の授業」
「…………」
「………………誰?」
「クラス担任……先生の授業では教科書貸し借り、見せるのも禁止」
「…………まじすか」
誰がこんなことを予知していたのだろうか…
その後、教科書のないまま授業を受けることになった
もちろん、河本にはまたこっぴどく叱られ、「転校初日から遅刻した上に、忘れ物までするとはまさに不良だな」とすっかり問題児扱いをされてしまった…