第七話 新しい朝
夢を見た
自分の手がどうしても届かない所に
一人の少年が立っていた
近づけなかった
近づこうとしても身体が動かない
いや、違う
たとえこの身体が動いて彼の側に行こうとしてもそれは叶わないのだ
近いけれど遠い
彼はきっとそんなところにいるのだ
やがて、目の前を蝕むように赤い闇が訪れる
そして、その闇は少年を覆おうとしていた
「—————っ!!」
恐怖が込み上げる
———次は自分の番だ………
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ………
その言葉が頭の中をなんども行き交う
そして、自分は迫りくるその恐怖から逃げるように目を閉じた
広がる真の黒い闇は赤い闇よりは安心感があった
もう、未来は決まってしまったのか
「大丈夫」
そんな闇のなか、はっきりと聞こえた声
それは自分に向けられたものであった
恐る恐る目を開いたその先には
少年が笑っていた
「………ん」
妙な感じを抱いて、目を覚ます
変な夢でも見ていたのだろうか
覚えてないけど
まぁ今はそれよりも———
「どこだここ」
ちなみに、また記憶喪失になったわけではない
すでに一度失ってるわけだし
とにかく俺は見知らぬ部屋で目覚めたのだ
そこは両親の姿も流の姿もなく、俺一人だった
まさか………
「拉致られた!?」
いやいやいやいや
落ち着け、よく考えろ
部屋的にかなりいいところじゃないか
そんなはずはない
「…………あ、そうだ」
思い出した
俺昨日からこの町で一人暮らしすることになったんだっけ
そして、ここは俺の新しい拠点、つまり我が家ってわけだ
なるほど、思い出した
俺は側に置いてあった携帯を開く
7時50分か……
まだまだ眠れるな
12時になったらまた起きようかな
そう思って布団を被る
「あれ、メールもきてる…」
メールが一通届いているのに気づく
………………流からだ
「うーんと、なになに………」
『まさか今日学校だって忘れてないよな?』
……………学校?
……………………………
………………………あ
しまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
すっかり忘れていた
急いで支度しないと!!
「あー、こんなことなら昨日のうちに荷物解体しとけばよかったなぁ、全く」
身支度を急いで済ませ
ようやく必要物質を鞄につめる
今日は始業式だということもあり、持って行くものは少なかった
「よしっ、行くか!!」
腕時計を見ると午前8時5分……
この後、爆走することになることを覚悟して家を出た
—————が、
「………学校ってどこだ?」