第三話 視た場所と人影
日が沈みかけ、辺りが暗くなってきた時、俺はまだ林道を歩き続けていた
バスを降りた時に比べて、大分涼しく感じられ、照り付ける日も弱くなり、過ごしやすくはなったと思う
後ろを振り向くと、来た道は暗くて見えず、この時間の経過から考えてかなりの距離を歩いてきたのだろう
今引き返すのは、はっきりいって無謀である
一方、これから進む道もやはり暗くて奥の方も完全に見えなかった
こうなってしまえば後の祭りだ
まぁ、歩き続けていればいつかはあの場所に出るだろうが、今のところは広場のような所があるようには見えない
それに人が通るような感じはしなかった
はぁ…
…本当に大丈夫なのか?
俺は歩くスピードを上げた
「…やっとついた…」
俺がようやく広場らしきところを見つけたのは、辺りがもうすっかり暗くなったころだった
そして見た風景はあの時みた場所と完全に一致した
ここで間違いない…
後はあの人影の人物がどこかにいるはずだ
そう思い、広場の奥のほうに進もうとした矢先、
「…ねぇ」
「………え」
背後から声をかけられた
振り向くと、そこには、一人の少女がいた
薄暗い中かろうじて見えたそいつの姿と声で少女だと分かった
見た感じ、高校生…ぐらいだろう
つと辺りを見回しても他に人がいるようにも思えないしさっき見た人影は多分この子で間違いない
ようやく目的の奴であろう奴に会うことができた
「…ここで何してるの?」
まぁ、こう聞かれるのが普通だろう
こういうときはなんというべきなのか
出会うことが予想できていただけに幾分返答に困る
………あなたに会いにきました
いや、駄目だ
ある意味それが目的ではあったけれど
言ったら絶対に不審がられるし第一、初対面のやつに言う言葉ではない
あ、そうだ、俺は道に迷っていたんだった
「ちょっと道に迷って…」
「………」
無言。なんの応答もない
何故?どうして?
今の発言は間違っていないはずだ
「……それで、なんでこんなところに?」
明らかに疑いのこもった言い方である
「なんでって………はっ!?」
なるほど…
いくら道に迷ってもこんなところには来ないと思われたか
まぁそれもそうなんだけど…
「…それはだな…」
言葉に詰まり、心なしかますます目の前の少女の疑いの念が強くなっているように感じていたとき、ふと、周りが少し明るくなった
月の光だ
さっきまで雲に隠れていたのか
いつの間にか結構な時間が経っていたみたいだ
そして辺りが明るくなったのと同時に彼女の姿がはっきりしてくる
やはり、疑いの眼差しを向けていた
もちろん俺の姿も見られるだろう、もう逃げられない…
すると突然疑いの眼差しを向けていた彼女の表情が驚きに変わる
そして……
「…隼人」
と、一言呟いた