第二話 そこへ…
「………はぁ」
歩くこと2時間。
ようやく現実は甘くないことを知る
「……ここどこ?」
別に記憶喪失というわけではない
というかもう失ってるし…
そんなわけで俺は今迷っていた
よくよく考えればわかることだが、俺はこの町は知っていても初めてこの町にくるようなものだ
故に、道がわかるわけがない
ましてや、我が家となろう場所など…
「はぁ、参ったな…」
何か解決案はないのか…せめて、地図さえあればいいんだけど
「あ…そうだ」
ふと、思いつく
…未来を見ればいいじゃないか
先のことが分かるし、あわよくば我が家までのてがかりになるかもしれない
よし、思いついたら即実行だ
俺は目を閉じ、全意識を目に集中する
そして目を開く
目を開けて見たものはさきほどの景色ではない
俺は見慣れない場所に立っていた
秋と思わせないほど辺り一面に草木が生い茂って、なんというか森の中に時々ある広場みたいだ
風で木々が揺れる音しか聞こえない静かな場所
風がやんだら音は存在するのだろうか
う……そろそろ疲れが…
言い忘れていたが、この力はかなりの精神力を消費する
もちろん、それは発動している長さに比例する
だから、これ以上は止めておいた方がいいだろう
俺は集中を濁した
同時に視界がぼやけてくる
その時__
「…………!?」
人影が見えた
誰かいたのだ
しかしそれを確認する間もなく、力は解けた
「……………」
太陽が照り付ける
結局、分かったことは一つ
しばらくは道に迷うということ
今頃、未来を見たことを後悔してしまった
そう易々と見るようなものじゃないな…
それよりもなんだったのだろうか、さっきの人影は…
妙にもやもやした気分になる
まぁ、どうせそこには行くことになるのだからその時に分かるだろう
だからとりあえず今は動こう
俺は荷物を持ち直し、歩き始めた
…そういえば…
俺はどうしてあんな山の中にいたのだろうか
普通、家のある町中を目指すのに山に入ったりしないはずだ
でもあの未来では、確実に山の中にいた、そして迷っていた
……はぁ…やれやれ
俺は無事に我が家にたどり着くことが出来るのだろうか
…いやいや、ほんとに驚きだ
さっきまで歩いていた道は確実に町へと続いていた
人気もあったし、それに道のずっと先には商店街らしきものが見えた
神社らしきところを通った時は辺りに人気がなくなったりして少し不安になったけれど、とりあえずは大丈夫だと思って先を進んでいた
しかし日が大分傾いてきた今、目の前に広がるのは、完全に人の気配がない閑散とした道、そしてその先にある森の中へと続く道
間違えなく迷っていた
「はぁ、どうしたもんか…」
来た道を引き返せばいいのだが、これまでの道に分かれ道などなかったはずなので、戻っても多分無駄だ
このままだと我が家に辿り着けない
それなら先に進んだほうがいいだろう
俺はそこへ歩を進めた