目眩
警察がマホの自宅に到着したのは、そう時間はかからなかった。
たまたま近くを巡回中だったのかもしれない。まだ外は明るかったが近所に配慮してのことか、テレビドラマのような派手な登場とは対象的に、パトカーは静かに横付けしている。
二人組の警官は、落ち着いた感じで、マホの母親から一つ一つ順を追って事情を聴取していた。細身で背の高い、まだ20代前半ではないだろうか、若く見える方の警官が、母親と対応し、もう一人の中肉でいかにもベテラン風の40代ぐらいの警官が、感情を一切表に出さない顔つきのまま、室内を一通り検索しているようだ。たまに無線で何かしゃべっている。
「わかりました。すぐ捜索依頼出します。娘さんの立ち寄るような場所はご存じですか」
「いえ・・・。わかりません。あの子は、私の事嫌ってましたから・・・」
マホと母親は血がつながっていない、義理の母親だ。産みの母親はマホが7才の時、病気で他界した。今の母親は17才の時に父親が再婚した後妻だった。その父親も、再婚後すぐに事故で亡くなっている。
以前、キョウコはマホから聞いていた。
ただ、事の成行を呆然と見守るしかなかったキョウコは、警官から基本的な質問をいくつかされたように思うが、なんと言って応えたのか、覚えていない。
はっきり覚えている事といえば、あの12秒間の音声。頭から離れなかった。
一体何なのだろう。あのパソコン・・・。
マホが話していたウィルスと同じファイルが存在している。
しかもあんなに沢山コピーされて・・・。
やっぱりウィルスのせいで壊れているのだろうか・・・。
だとしても、マホの失踪と何か関係があるというのだろうか・・・。
『イズミさん』って、なに・・・。
答えの出ない疑問ばかりが、次々と湧き出し、頭の中をぐるぐると回りだした。
見えてる景色が、ぼやけ、ゆがんでゆく・・・。
めまいに襲われた。
結局、そのまま気分が悪くなったと言って、その場を立ち去り、どうやって帰ったのか記憶にないが、気がつくと帰宅していた。