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  作者: mahiro
16/28

同調

「昔むかし、食べると不老不死になれるという人魚の肉を、誤って食べてしまった女性がいまして・・・。800年もの寿命が延びてしまったため、尼になって全国を旅し、最後には若狭の国、現在の福井県南部なんですが・・・そこのある寺の洞窟で生涯を閉じたといわれている伝説です。旅人、もしくは当の本人なのかもしれません。何せ時間はたくさんあったわけですから・・・。行く先々で地元の人達に語って聞かせることで、いろいろな解釈がなされつつ伝説が定着したのだと思うんですが・・・。全国各地で似たような話が伝説として残っていまして、なかには浦島太郎の話とごっちゃに語られている地域もあったりするんです。興味深いと思いませんか?」

「・・・はあ・・・」

「僕はですね・・・、今回のこの都市伝説を調べていくうちに、なぜか八百比丘尼の話が思い起こされてしかたなかったんです。どこがどうと、はっきり言う事ができないんですがね。なにかこう・・・、人の意思というか、普遍的な真理とでもいいましょうか・・・。無意識下の欲や好奇心、恐怖や罪悪感・・・それらすべてが混在するさまざまな感情が、心の根底から泉のように沸いてくる感覚・・・。そういったものが同調し、伝説を増殖させるに至った・・・。そう考えることができませんか?」

「あの・・・。ごめんなさい。なにを言っているのかよくわからないんですが・・・」

「いえ、いいんです。僕の勝手な解釈ですから。お気になさらずに・・・」


 探偵は、再び立ち上がり窓際に立つと、窓を開け、胸ポケットからタバコを取出し、火をつけた。


「・・・不思議ですよね、この都市伝説。おそらく始まりは、たった一人の女性が、自分の所在を示したかった・・・。ただそれだけの理由だったのでしょう。・・・しかし、中には恨みや妬みを未練として残して亡くなっていった人も大勢いた。自分と同じ境遇に引き込もうとする力。その力が増幅し、混在したことで、その目的は別の目的に変わってしまった。この都市伝説のタイトルが定まっていない所以(ゆえん)はそこにあると思うのです」


 探偵は、深いため息のように煙を吐き出した。


「受け手が共鳴する波長は人それぞれですが、ネット上を行き来し、パソコンを介してある種の波長が送られる。パソコンから発する周波数帯に受け手が同調を許した時、音声や画像として具体化し、影響を与え始める。その人の一番根底にあるもの(・・)を揺さぶって壊そうとするのです。そして原点回帰へ意識させる。もともと同調しやすい人は、心に何かしらの病を背負っている。自殺という選択をしやすいものです。行方不明者の多くが、自殺志願者である事もまた事実ですから・・・」

「・・・・・・。あの・・・」

「話が長くて申し訳ないんですが・・・。それにも理由があるんです。響子(・・)さん。あなたを探し出して欲しいと頼んだ依頼人。実は、清水 真帆(マホ)さんなんですがね・・・」

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