表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: mahiro
13/28

出発

 土曜日。休日。

 予定が未定のまま、否応なしに考えてしまうこの日を、ついに迎えてしまったことが恨めしい。

 目を開けるとキョウコは自分の部屋のベッドに横になっていた。

 頭の回転が鈍い。体も重く、起き上がる事ができない。

 時計を見るともう9時を過ぎようとしていた。カーテンからこぼれる外の光が、いつもならすがすがしく感じられるはずなのだが、今のキョウコにとっては恨めしく思わせた。

 仕事は火曜日からいつも通り出勤し、金曜日まで何事もなくこなせた。

 いや、こなしているふりをしていただけのような気がする。周りの同僚からは、疲れ果てた顔をいくら化粧で隠しても、漠然とした違和感は隠しきれなかっただろう。自分ですら、何のどんな仕事の処理をしたのかさえ思い出せないほどだ。

 あの録音を聞いた時から、キョウコは全ての連絡手段の電源をオフにした。携帯、パソコン、それに繋がっているモデム。ケーブルも引っこ抜き、外部からの情報が一切入らないようにしたかった。テレビも一切つけないようにして過ごした。

 マホのお母さんが、連絡取れずに心配しているだろう事も、キョウコは感じていた。あの日、急に挙動不信に帰ってしまってから、音信不通なのだから無理もない。それに対しての応えも、キョウコにとってはストレスになった。


 何も考えたくなかった。

 考えるという選択をキョウコは破棄した。自分の中の常識や今まで信じてきた世界を、守りづづけたいと必死に抵抗した。

 そしてその抵抗に疲れた自分が今、ベッドの上に横たわっている。


 (一体自分は何をやっているのだろう・・・。どうしたらいいのだろう・・・)

  

 向き合わなければならない事は解っていた。先延ばしにし、自分の知らないどこかで、問題が解決したところで、キョウコ自信が納得しない限り、この状況はずっと平行線のままなのだ。

 自分の手の中にいる猫が死んでいるのか、生きているのか・・・

 キョウコはずっと手の平を開ける事を恐れている。


 (とにかく起きよう。それから・・・)

 キョウコは重い体をゆっくりと起こし、深く息を吸い込む。


 身支度を整え、旅行バッグを引っ張りだし、とりあえずの着替えや洗面用具、化粧品を押し込んだ。

 財布の中身から、久しぶりに見る免許証を確認した。証明写真の自分がまるで別人のようだ。

 最後に、自分の部屋を見渡した。部屋はずっと片付けていないせいで荒れ放題だ。

 (マホの部屋を笑えないな・・・)

 そう思いながら、部屋を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ