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暗闇
何もない。ぽっかりと空いた穴。
その奥の暗闇。
その暗闇の奥をキョウコは覗こうと目を凝らす。
暗く、何処までも続くかのような、吸い込まれそうな黒。
・・・。
・・・鏡・・・?
こちら側を覗いている自分がいる。自分を見つめ返す自分。
ふと、我に還ると。パソコンの画面に映る自分の瞳。
永遠に感じられた、つかの間。キョウコは何も映っていない画面の前に立っていた。
画面に反射した自分の姿の肩越しから、怪訝な顔をしているマホの母親がいる。
「いえ、すいません。私の勘違いだったみたいです。なんでもないです」
軽い頭痛がする。
自分でパソコンの電源を切ったのだろうか?まるで覚えがない。
時間の感覚がおかしいと気付いたのは、そのすぐ後のマホの母親の発した言葉だった。
「やだ、もうこんな時間。ごめんね、キョウコさん。いろいろマホの事調べてくれて、疲れたでしょ」
時計を見ると5時を過ぎていた。