~31~
何となく千風と気まずいまま放課後になった。
ロッカーで恒例の場所に行く準備をしながら麗加が切り出す。
「あのさ、私ちょっと用があるから、先に行っててくれる?」
麗加がそう言うと美兎は「分かったー!」と笑顔で返事をした。
その場を去る麗加を千風は黙ったまま見送った。
既に教室に姿がなかった豪の事も気になる。
恒例の場所に美兎と二人でしばらく居たが千風はやっぱり気になってしまう。
「ごめん。SDの鍵忘れたっぽいから探してくる」
千風はそう嘘をつき校舎へ戻った。
そして麗加がどこにいるのか探していると誰も居なくなった教室に姿が見えた。
咄嗟に身を潜めると、そっと中の様子を伺う。
そこには麗加と豪が二人で対面して話をしている姿が見えた。
気になり聞き耳を立ててみると二人の会話を聞いてしまう。
「邦鷹の事、ホントに良いのか?」
「うん。決めた事だから…」
「俺達の事はあいつらには知られない方がいい…」
「そうだね」
この二人、やっぱり内緒で付き合ってたんだ…そう思うと千風はショックと嫉妬の感情を覚えた。
そしてその場から走り去って行った。
そんな千風の気配にも気付かないまま、豪と麗加は昨日約束した作戦の話をしていた。
二人が気付いたもの。
それは、外観プログラムの中に二人が良く知る人物と一致した外観があったこと。
その人物が近くにいること。
どう近づくか、どう始末するのか、それを実行するとなると自分達の正体が友達らにバレてしまう。
混乱させないためにも友達らにはバレないようにしたい。
実行するとなると…友達らの前からは姿を消さなくてはならなくなるだろう。
勇也の事が好きなのに、その想いを犠牲にしてしまうことになる麗加に豪は少し悲しみを感じていたのだ。
麗加は勇也を守りたい一心で生まれ変わった。
その決意は固かった。
その時が来た。
麗加の強い眼差しを見た豪も決意を固めた。
「分かった。明日決行しよう。まずは接触して確かめる」
「うん」
千風は美兎の元に戻った。
「あっ!おかえりー!鍵あった?」
千風は暗い表情をしていたが美兎に声をかけられ平静を装った。
「あった!あったー!」
鍵を見せながらそう言うと美兎の隣に座った。
「麗加遅いねー」
その名前に一瞬顔が強張る。
「そう…だね…」
千風は麗加への不信感を必死で隠し押さえていた。