~27~
「あ、あはは、フラレちった」
どこかで答えは分かっていたので、そっかと残念ではあったが気持ちを伝えられた千風は笑顔だった。
「ううん、こっちこそごめんね。私の片想いって事は分かってたし、でも気持ち伝えたかったんだ」
千風の素直な気持ちに、ただ一言で終わらせて良いものか。
豪は複雑そうな顔をしていたので千風は逆に不安になる。
「あの、ホント大丈夫だから…」
すると、豪は静かに語りだした。
「俺、好きな子がいる。俺の家族は両親が早くに死んで、幼い弟妹たちがいた。そして…」
豪は誰かを想い少し言葉を詰まらせた。
「彼女は体が不自由だったけど、弟たちの面倒を良く見てくれてあいつらの母親代わりだった。俺はそんな彼女を支えていこうと思ってた」
突然始まった豪の告白を静かに聞いていた千風だが、途中からの違和感に気付き豪の顔を見る。
「彼女、死んだんだ」
思わぬ発言に千風は驚き言葉を失う。
豪は当時を思い出したのか唇を噛み締めて悔しそうな顔をした。
「この街に来て、皆と出会って、正直楽しませてもらってる。君の気持ちも正直嬉しい。でも、俺の中でしかもう彼女は生きられないから。別の人を想いながら、君の気持ちを受け入れる事は出来ない。だからすまない。でも、大事な友達だとは思っている。構わないかな?」
豪は自分の想いを伝えた。
誰にも話すつもりはなかったが、本音をぶつけてくれた千風には自分も応えるべきだと思った。
黙り混んだ千風は次第に鼻をすすり出す。
失恋させ、悲しませてしまった事に変わりはない。
やっぱり余計な話だったか、と自分の判断の間違いを認めようとしていると、
「…………っ、ぅ、……りがと」
千風は声を絞り出した。
「え?」
うまく聞き取れず、聞き返す。
「うっ、うぅ、ありがと、そんな、大事な話、してくれて………」
どこかミステリアスで、クールな男だと思っていたがそんな過去があったなんて知りもしなかった千風は堪らず泣き出してしまった。
失恋の悲しみはなかったが、豪が自分の為に初めて胸に秘めた想いを話してくれた事が嬉しかったのだ。
「ちゃんと応えてくれてありがとう。凄く嬉しいよ」
千風はニコッと笑顔を見せた。
ただ好みじゃ無いからとか、めんどくさいからと言う理由ではなく、ちゃんと千風を想ってくれた返事に納得が出来た。
「これからも仲良くしてね!友達として」
「あぁ、もちろん」
豪も安心し笑顔を見せた。
その頃、気を使い控え室を出た4人はそのまま会場をブラブラと歩いていた。
屋台などまだ沢山の人で盛り上がっている。
美兎と星夜ははぐれないようくっついているが、麗加と勇也には少し距離がある。
人混みの中はぐれかけ、麗加は少し焦った。
その時、麗加は一瞬意識が飛びそうな感覚に襲われた。
体にビリビリと電流が走るような違和感に立ち止まる。
「何……?」
すると突然手を引っ張られた。
そこで我にかえり、見上げる。
「大丈夫?」
はぐれそうになる麗加の手を取ったのは勇也だった。
一瞬の間に何が起きたのか分からなかったが、麗加の様子の異変を感じた勇也が心配そうにしていた。
「気分悪くなっちゃった?」
「う、ううん、大丈夫」
麗加が微笑みかけると勇也も安心し、二人はしばらく手を繋いだまま人混みの中を歩いた。