~25~
「ただいまー」
麗加は帰宅すると玄関から声をかけるが今日は誰の出迎えもなかった。
いつもは仁か真純が出迎えてくれる。
今日はいつもより早く帰宅した為だと思い、そのまま研究室へと向かった。
戸が開き改めて声をかける。
「ただいま…」
部屋に入ると何やら慌ただしい雰囲気であった。
「あ、麗加。お帰り。早かったね、丁度良かった。ちょっと来てくれ」
仁が麗加を呼んだ。
向かう先には賢を中心に1つのパソコンを囲んで豪と真純もいる。
麗加も加わると賢からそれの説明が始まった。
「集めたプログラムデータを組み合わせたら表れたのがコレだ」
そう言って賢は1つのファイルを開いた。
開くとウインドウには人の形をした3D画像が表れた。
「これはA-D2Xの設計の一部で外観プログラムだと思う。体格と顔がこれで分かるハズだ」
長い月日をかけ、バラバラになっていたデータをようやくまとめ上げ、遂にA-D2Xの情報を得ることができたのだ。
全員息を飲むように食い入り画面を見つめる。
賢は違う画面に切り替えると顔のアップ画面になった。
「だが厄介なのは、こいつには何通りか顔を変える機能が備わっているんだ。変化可能なのは瞳の色が12色、髪の色が12色、頬骨の位置が10通り、鼻の高さが10通り、耳の位置が10通りに変化できる。つまり144000通りの顔があると言うこと。そして現在がどの顔かがわからないと言うこと」
気の遠くなる数字に落胆の色を浮かべる仁と真純だったが豪だけは違った。
「これがあれば奴を探し出せる可能性はグンと上がったな。ある程度的も絞れる。何食わぬ顔で町を歩いてるかもしれない。必ず探しだしてやる」
豪の強い意思に仁は落胆したことを恥じた。
「遊んでる暇はなくなったな」
麗加に向けるように豪は本格始動を乗り出した。
麗加も気を入れ換えるように表情を変える。
「とりあえずこの全パターンの一覧データをくれ」
「分かった」
豪が頼むと賢は了解し、一覧製作にとりかかる。
A-D2X抹消計画がいよいよ始動する。
-翌日-
いつもと変わらない光景が今日も教室にあった。
ただ違ったのは…
「ちょ、今なんつった?!!」
あまりの驚きぶりに他のクラスメイトから視線を浴びる千風。
「シー!!声大きいよ~!」
顔を真っ赤にして慌てるのは美兎。
「だってさ、ちょ、マジで?!!展開早くね?!!ほんとに?!!」
今度は声のボリュームを極端に下げたがやはり興奮はおさまらなかった。
「なんか、ね。勢いで……」
照れくさそうにするが美兎は嬉しそうにしていた。
美兎は昨日星夜と気持ちが通じあったことを親友に打ち明けていた。
「マジで?!マジか!!いやぁ~~ビックリだぁ!!!でも良かったじゃん!!!」
千風は心から喜び美兎の頭を優しく撫でた。
「えへへ、ありがとー」
「そうかそうか、私はてっきり麗加と邦鷹が一番最初にくっつくと思ってたんだけどなぁ~~、ねぇ、麗加はどうなのよ!」
千風は半分冷やかしで麗加に振った。
美兎と二人で盛り上がっていて気付かなかったが麗加はさっきからずっと上の空だった。
「?……おーい!聞いてる?麗加!」
「え?あ、ごめん。良かったね美兎!おめでとう!」
考え事をしていて話に乗り遅れてしまった。
千風は少し疑問に思ったが、美兎に先を越されて焦ったのだろうと思った。
「麗加どうするぅ?麗加も告っちゃう?」
「えー?」
千風に急かされほほを染めた。
「あー良いなぁ~~!」
千風は駄々をこねる子供みたいに手足を目一杯伸ばしてバタバタさせた。
一瞬そのまま動きが止まる。そして、
「よし!決めた!!!」
と、千風が突然宣言をした。
「何を決めたの?」
美兎と麗加は顔を見合わせ、千風に注目した。
「私も丹波君に気持ち伝える!」
「おぉ!ちーちゃん本気になったの!?」
突然の決意に驚く麗加と美兎はまたも顔を見合わせた。
「今度ダンス祭があるからさ、全力の私を見てもらって全力で気持ちも伝える!」
自信に満ち溢れていたかと思うとちょっと不安そうな顔をする。
「正直自信無いけどね。でもやっぱさ、今伝えたいことは今伝えないとさ!後悔だけはしたくないし!」
自分に言い聞かせるように言うとまた元気な笑顔を見せた。