~21~
入れ替わるようにグランドにはサッカー部員が集まり始める。
「星夜行くぞ?」
勇也が声をかけるが星夜は落ち込んだ様子で「先行ってて~」と言いながらノロノロと支度をする。
勇也はフッとため息を着くと先にグランドへ向かった。
美兎がオハナツミを終え、廊下に出るとその先にある一室の戸が開いた。
出てきたのは星夜だ。
美兎は思わず近くの階段の下へ逃げ込んだ。
「私、何逃げてんだろ…」
でもやっぱり今は気まずいのでこのままやり過ごそうと身を潜めていると…
「東海林先輩!!」
聞きなれない女の子の声が星夜の名を呼んだのが聞こえた。
バレないようそっと声の方を覗いてみると、自分より小柄で可愛らしい後輩の女の子が顔を真っ赤にして星夜の前に立っていた。
女の子は勇気を出して星夜に一通の手紙を渡している。
星夜は思わず笑みを浮かべ、複雑そうに焦っていたが思わず手紙を受け取っていた。
女の子はその場を立ち去って行った。
その光景を目の当たりにした美兎は『あいつだってモテなくもないっしょ』とさっき千風に言われた言葉が頭を過る。
いつも自分にだけ構ってくると思っていた星夜も他の誰かに想われていた事実と、その現実にショックを受けている自分に気づく。
もう一度星夜の様子を見てみるとニヤニヤ嬉しそうに照れながら貰った手紙の封筒を見ていた。
「何デレデレしちゃってんの!!?」
それはまさに自分だけを見てほしいという気持ちからの怒りだった。
それに気づくと美兎は胸がギュッと痛んだ。
星夜が階段の横にさしかかる所で美兎は姿を現す。
「あっっ!!美兎!??え?!」
美兎に気づくと星夜は慌てて手紙を隠した。
「良かったね~可愛い子からラブレター貰えて!」
抑えきれず嫌味をかます。
「いや…これは、別に…」
言い訳も出ない星夜が焦っていると異様な雰囲気に。
「お幸せにっ!!」
つい思ってもいない言葉を口にすると美兎はその場から走り去った。
「ちょ!!美兎!!…んだよっ!」
星夜は追う事も出来ずその場に立ちつくしていた。
美兎は人気の無い所まで来ると身を潜めた。
一人になり頭の中に走馬灯のように流れてくるのは星夜との思い出だった。
幼少時代からずっと一緒だった。
野良犬に追いかけられて怖い思いをした時も星夜が助けてくれた。
お気に入りのお人形が壊れて悲しかった時は星夜のお気に入りのロボットをくれた。
辛いことがあっても星夜がいれば平気だった。
動物園、遊園地、いっぱい遊んだ楽しいこと星夜と一緒だと心から笑えた。
「おおきくなったら、みうはおれのおよめさんだからな!」と5歳の時にした約束は一番嬉しかった。
昔は素直に出来たのに、いつしか素直になれず喧嘩も絶えなくなったけど毎日が充実していた。
それが無くなってしまうかもしれない。
そう思うと胸が更に苦しくなり、美兎の目には涙が溢れるのだった。