~20~
体育の授業が終わり教室へ戻って来た麗加、千風、美兎。
丁度豪、勇也、星夜も戻り二組は廊下でハチ合わせた。
星夜と目が合った美兎は怒り顔になりプイッと顔を背け、そそくさと教室へ入ってしまう。
星夜はそんな美兎の態度にしょんぼり肩を落とし教室へ入っていった。
豪と目が合った千風はニコッと笑顔を見せ、お互いに合図し気を使うようにさっと教室へ入って行く。
廊下に残った麗加と勇也はそのままお互いを前に立ち止まっていた。
そして少し気まずそうにうつむいた。
「あのっ…」
「昨日は…」
同時に発した二人はまたうつむく。
「ごめんなさい」
先に発言したのは麗加だった。
はっきりと言うその言葉に勇也は言葉を失っている。
「昨日私…、突然倒れたって聞いて、邦鷹君ビックリさせちゃったよね。本当にごめんなさい…」
謝罪の理由を知った勇也は『なんだ…』と安心の表情に変わった。
「あ…、よかった…」
「え?」
勇也は昨日の告白を断られたのではなかった事に安心したのだろう。
そして今こうしてまた自分の目の前に麗加がいる事にも喜びを感じているようだ。
「まだ万全じゃないのに無理させちゃったよな。こっちこそごめんな」
勇也の言葉に笑顔を浮かべる麗加。
「ありがとう!でも、すごく楽しかった!」
麗加の笑顔に思わず勇也も微笑みかける。
「俺も楽しかった!」
そんなやり取りをしていると二人の時間を妨げる授業開始のベルが鳴り、残された二人も教室へと入った。
放課後、女子三人はいつもの場所にいた。
グランドの見渡せる校庭。
まだそこには勇也たちの姿はなかった。
「あー!いいなぁ~~!二人は『その後のお楽しみ』があってさ~!」
千風が羨ましそうにぼやく。
「二人って…楽しみがあるのは麗加だけじゃん」
美兎が否定する。
「うそつけー!自分だって東海林眺めてるくせにー!!」
「なっ!!眺めてないもん!!!あんな奴!!!」
千風と美兎は相変わらずその話題で盛り上がる。
「白状しなよ~~!!好きなんでしょ??」
千風が迫ると美兎は膨れ面だが頬を真っ赤に染めた。
「素直じゃないんだから…二人とも」
もどかしくもあり微笑ましくも思う千風はニコッと美兎の頭を撫でた。
「まだ許せないの?あの事…」
麗加が美兎に問うのは鼻毛発言の事だ。
「プッ!!ちょっと麗加ってば!!また思い出しちゃった!!!!」
千風には相当なツボだったようだ。
「でも、その事でいつまでも怒ってんじゃないんでしょ~?」
千風はとっくに御見通しだった。
美兎は少しモジモジしながら間を置いて口を開く。
「何か…もう、今更って言うか…」
美兎は体育座りをして体を小さくし、膝に顎を乗せた。
「あいつとは家が近いから幼稚園から一緒で…、親同士も仲良いし、好きとか嫌いとかってのもよく分からなくて……、ただこの先も変わらないのかなーって…」
美兎が秘めていた胸の内を語りだす。
「腐れ縁って奴か~」
ちょっと厄介そうな顔をして千風がため息交じりに言った。
「でもさ~、もういい歳だし変わりたくないならここらで決めとかないと!アイツだってモテなくもないっしょ!しかも鈍感だからアンタの気持ちにも気づいてないみたいだし、ちゃんと伝えてやったら?」
美兎は体育座りしたまま膝に顔を埋めた。
「あ~言うのほっとかない女もいるよ~?」
今のは煽りだが千風は美兎の背中を押す。
しばらく沈黙していると美兎はスッと立ち上がった。
「オハナツミ行ってくる…」
女の子らしく告げると美兎は校舎の方へ歩いて行った。