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cyber girl ~REIKA~  作者: No_318
使命
53/68

~17~

「センセー!何か面白い話してよ~」


千風が須吾に振る。


「そうだな~、では課外授業を始めよう!」


「えーー!!俺ら遊んでんだぜー!?」


文句を出したのは星夜だ。


千風にも余計なこと言うなとクレームをつけると鉄拳をお見舞いされた。


それを見て須吾はクスクスと笑う。


「じゃぁ、僕が今までに行った国で、一番印象に残る国の話をしようか」


そう切り出すと須吾は語りだした。


「僕の一番好きな国はインド。ここ日本と共通しているのが多神教で、実に沢山の神の存在があるんだけどインドではヒンドゥー教が有名なのは知ってるよね。ヒンドゥー教には中心となる3つの神がいて、シヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマーこの3人が最高神となる。それぞれ役割があって、ブラフマーは創造、ヴィシュヌは維持、そしてシヴァは破壊」


「ちょ!!先生!!他の2人はともかく、そのシヴァって神悪い奴じゃん!!」


さっきは文句を言っていたのに一番真剣に話にはまり込んでしまった星夜が問う。


須吾は話を続けた。


「そうだね。1人が物を作り、1人がそれを維持するけど、1人がそれを破壊する。悪循環に見えるけどこの3つの行動は色々な物事に当てはまるんだ。日常も人も、この世界「宇宙」にまで当てはまる。そしてこの3神は3つで1つとされたり、シヴァ神の化身であるともされている」


「どういう事?」


千風が須吾に問う。


「創るのも、維持するのも、壊すのも、みんなが出来たり、していることだよね。例えば、ほら、あそこで調理をして作っているシェフがブラフマー、出来た調理を維持して運ぶスタッフがウィシュヌ、それを食べる僕らがシヴァ。それをしている僕らは皆「人間」と言う1つであるよね。つまりは誰もがブラフマーであり、ウィシュヌであり、シヴァであるという事。この3人の神は単に「何かの神様」と言うわけではなく、存在する全てのものに共通していると僕は思う。世の中はこの3つの繰り返しで成り立っているんではないかな。当たり前のこの日常もいつかは終わりが来る。そしてまた新しい日常が始まる。破壊と言っても悪い意味ばかりではないと思う。……と、こんなところかな」


6人の生徒はいつまでも開いた口が塞がらないでいた。


「ちょっと、難しかったかな?」


須吾は黙り込んでしまった生徒たちに苦笑する。


「いや…、深い話だと思って…」


「うん!!すっげーおもしれーー!!」


勇也に続き興奮する星夜。


「さぁ~っすが須吾センセーだね!」


千風が絶賛した。


「あはは、実はね、これは現地のある人のうけうりなんだ。でも僕もとても共感してね。深く考えさせられたんだ」


「んでもさー、この日常がいつか終わるとか考えられないよね。ずっと続けばいいのに」


千風が複雑そうに言った。


「そうだね、そう思うのは今すごく充実してるって事だし、楽しい時間は長く続いてほしいよね。でもそれはやっぱり不可能だから、大事なのは1日1日を大切に生きる事。人生一度きりなんだから後悔しない人生を送る事。そう言う事が少しでも伝わってくれたら嬉しいかな」


「今を精一杯…後悔しないようにか……」


星夜が思いつめるように呟くと、意を決したように立ち上がった。


そしてメンバーの1人の前に立つ。


「なっ…何!!?」


その相手は美兎だ。


「美兎!!このまま言わずに後悔しないように言っておく!!」


「えっ!?ちょ…やめてよ!!はずかしい!!!」


まさかの展開に焦る美兎。


他のメンバーも目を点にしている。


真剣に見つめる星夜に頬を染めて俯く美兎。


「美兎…」


「うん…」


息を呑んで見守る一同。


「俺ずっと……鼻の下に付いてるのが抜けた鼻毛なのかまつ毛なのかが気になって仕方なかったんだ!!」


思わぬセリフが飛び唖然とする一同。


次の瞬間星夜が思いっきり吹っ飛んだ。


美兎の怒りの平手打ちを喰らったのだ。


「もうっサイッテーーー!!そんなことみんなの前で言う事ないじゃん!!!」


美兎は慌ててトイレに駆け込んでいった。


「イッテーーー!だって…後悔しないように……」


誰もが愛の告白だと思ったので期待を裏切られた驚きと、やっぱりな展開にドッと笑いが沸き起こった。


「おっと、すっかり長居してしまったね」


須吾は時計を見ると何か用事の途中だったとでも言うように切り出すと席を立つ。


「じゃぁ僕はこの辺で失礼するね。みんな夜遊びはダメだからね!」


「もー、わかってマース!!」


千風がタルそうに言う。


須吾はニコッと微笑むと礼を言ってその場を後にした。


店を出ると足早に目的の場所に向かう。


狭い路地の間に座り込む1人の中年男性の姿を見つけるとその場に寄った。


「ごめんね、さぁ帰ろう」


須吾はその男性に優しく声をかけ手を差し出した。


男性はやつれており、まともに会話も出来ない様子だった。


おびえる様子で須吾に何かを訴えようとしている。


「大丈夫、僕が必ず守るから心配しないで」


男性にそう伝えると須吾は男性を支えながら街から姿を消した。

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