~05~
-放課後-
「じゃ、私ロッカー寄って帰るね」
「うん、またね~」
授業が終わり麗加は千風と美兎と別れ、帰り支度をしに廊下にあるクラスごとに設置されたロッカーへ向かう。
そこにいた一人の男子生徒の姿を見つけると麗加の足が止まった。
「あ・・・」
麗加の胸がドキッと大きく鼓動した・・・
男子生徒は麗加に気がついた。
「よう」
「ども・・・」
そう言って声をかけてくれたのは同じクラスの邦鷹勇也だ。
勇也は普段は特に目立つタイプではなく、クールな性格もあって少し落ち着いている。
他の生徒のように制服を着崩したり、着飾ったりもせず普通の背格好だがダサいイメージはなくそれが良く似合っている。
青みがかった髪は短く、逆立てる前髪がスポーツマンらしさを匂わせた。
勇也は部活動のための準備をしていたのだ。
そんな憧れを目の前に緊張しながらロッカーから荷物を取り帰り支度をする。
沈黙の中・・・
「さっきの話さ・・・」
勇也が麗加に話し掛ける。
話し掛けられるなんて思ってもいない麗加は緊張が更に増した。
「は・・はい?」
麗加は『生意気だと思われたんではないか』と不安を隠せなくなった。
どうしよう・・・そう思うと手が震えた。
しかし次に勇也が発した一言に麗加は救われることとなる。
「俺もかっこいいと思うよ」
「え・・・?」
「その叔父さん。なんつか、英雄・・・みたいじゃん」
そこには優しく微笑みかける勇也の姿があった。
「あ、ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい・・・あんなこと言っちゃって内心不安だったから」
麗加は思わず安堵の表情をみせた。
勇也はそんな麗加の表情を見ると一言言った。
「そこが暮内の良いとこなんじゃない?」
麗加は嬉しさで一杯になった。
今にもうれし泣きしてしまいそうな勢いだった。
「それじゃ、俺部活だからまたな」
「うん・・・頑張ってね」
「おう!」
勇也は笑顔で返し走り去っていった。
夢のようなひと時に麗加はカバンを抱きしめ、赤面しながら嬉しさを隠せずにいた。
麗加はその足で駅へ向かい、家族が先に待つ叔父のいた街、レッドタウン行きのモータートレインに乗車した。
この街ブルータウンからモータートレインで約15分程で着く。
麗加が窓際の席に座るとトレインは発車した。
風景を眺めながら勇也との出来事を思い出していた。
サッカー部所属の、麗加が密かに憧れる存在である勇也はチームのエースだ。
普段のクールな姿とは一変し、サッカーをするときには迫力と情熱の顔を見せる。
そのときの勇也はとても輝いて見えた。
その姿が麗加を虜にするのだった。