~13~
豪が帰宅するとそのまま部屋へと向かう。
角へ差し掛かったその時・・・
ドン!!
「あっ!」
「うっ!」
ほぼ同時に発した声と衝撃に驚き、出会い頭にぶつかった二人・・・はお互いを見合わせる。
ぶつかった反動で床に座り込みこちらを見ていたのはC-M2X型・・・?
しかしその疑惑は次の瞬間にかき消されることとなる。
「あ、おかえりなさい!」
痛がる様子は一切見せずに満面の笑みを向けている。
今までとは人が違う様に豪は目を点にしていた。
そんな豪を不思議そうに見ているC-M2X型・・・麗加は続けて声をかける。
「どうかしたの?」
「いや・・・どこも壊れてないか?一応・・・見て貰った方が・・・」
そう言って豪は麗加に手を差し伸べる。
その言葉に先程までの笑みは一瞬で曇り、ムッとする麗加。
「失礼ね!人をロボット・・・・」
麗加は自分で立ち上がりながら言いかけたが、またも「あっ」と気づいたように発言を止めた。
そしてまた笑顔を見せるが先程とは違い少し曇った笑顔だった。
「うん、大丈夫。ありがとう」
「・・・いや」
豪が未だに状況が飲み込めないでいると、麗加は豪の姿を改めて確認しパッと笑顔を見せる。
「その制服・・・そっか、学校行ってるんだ!」
ちょっぴり羨ましそうに制服を眺めている。
「あぁ、お前と同じクラスだ」
「そっか!皆・・・元気にしてる?」
皆と言ってもそれは特定の人物に限られていることは直ぐに分かる。
「邦鷹なら元気だ。仲良くやってる」
麗加はそんなつもりで聞いてないと恥ずかしそうな顔をし、あわてて話題を変える。
「ち、千風と美兎だよ!!」
豪はクスッと笑った。
「あぁ、皆お前のことを待っている。そうだ、連絡を欲しがっていた」
「いけない、私全然連絡出来なかったから・・・ありがとう!早速連絡しておく!」
麗加は再び笑みを浮かべ、部屋へ向かい駆けていった。
豪も部屋へ向かい荷物を置いて着替えを済ませると賢の元へ向かう。
部屋へ入るとそこにいたのは仁だった。
「帰ってたのか。おかえり」
「賢はどうした?」
部屋の中を見渡したが賢の姿がない。
「根詰めて疲れていたから休んでいるよ」
「フン!」
豪は呆れ顔で冷たく放つ。
「それより、あれはどういう心境の変化だ?」
麗加の変貌振りを説明しろと豪が問う。
「あぁ、本来ならあの姿で起動するのが正常なんだ。今日メンテナンスをしてね。感情表出プログラムってやつが起動してなかった不具合があったらしい。だから人間らしさが欠けてしまっていたんだ」
豪はそれを聞いて大方納得がついた。
しかし、メンテナンスをしたのが学校へ行っている間だと気づくと、少し違和感を覚えた。
感情表出が十分に出来ない状態でも、時折感情らしきものが垣間見えた瞬間があったからだ。
それは特に今朝の様子にあった。
『いってらっしゃい』
あの時の行動の意思は感情によるものではなかったのだろうか。
人間らしさを感じたのは気のせいだったのだろうか。
プログラムが起動していない状態で錯覚させられていたのだとしたら・・・。
そんな事を考えているとも知れず、仁は続ける。
「これで何も問題がなければ麗加も復学させられる。情けない話だが、A-D2X型の事はまだ有力な手がかりがない。これから益々君達の力が必要になると思う・・・悪いが」
「悪いが!!」
同じ言葉で豪は仁の口を止めた。
「俺は頼まれるつもりはない。これは俺の意思だ。必要があればこっちからアンタ等を利用する。勘違いするな」
「・・・うん」
仁が言葉に困っていると、豪は部屋の中を移動し役に立ちそうにもない書類を手に取る。
「こっちもまだ何もつかめていない。まぁ、あんな学校の中に何かがあるとも思えないがな・・・」
そう言って手に取った書類をパッと投げるように机に置いた。
「さっさと回復して、せいぜいA-D2X型の外観的特徴だけでも早く解明するんだな」
そう言い残し豪は部屋を去った。