~10~
「丹~波くんっ!!」
今朝のC-M2X型の様子を思い出していたのか、頬杖を付き自分の席でぼーっと過ごす豪に朝からテンションの高い声が届く。
声のする方を振り向くと登校したばかりの千風とその後ろに美兎が立っていた。
「おはよー!」
千風が額の横に大きく開いた手の平をひらひらさせながらにっこり微笑んでいる。
後ろにいた美兎も千風に続き、控えめにペコッとお辞儀をしながら「おはよー」と言った。
「おはよう」
豪は快く笑顔で返した。
不意に千風が豪の前の席の椅子を引き、豪の方を向いて座る。
「ね!ね!麗加が戻ってきたらさ、今度皆で遊び行かない?丹波君の編入と麗加の復帰祝い兼ねてさ!」
千風は目をキラキラとさせながら期待の眼差しを送っている。
彼女は恋煩いに悩むタイプではなく実に積極的である。
「そうだな、この街の事もまだ知らないことが多いし、是非お願いするよ」
豪は断る理由もなく、千風の誘いを受けた。
「やったぁ!」
千風は子供のように無邪気にはしゃいで大きくバンザイをした。
そんな素振りもつかの間、急変して真顔になると口の横に手を当て豪に耳打ちするような仕草をする。
「そこでお願いなんだけど、邦鷹も誘ってくれないかな~?」
そう言うと両手のひらを合わせお願い!と一言添えた。
豪はもちろん理由を察し「オーケー」と即答した。
そう話していると丁度廊下にに勇也の姿が見えた。
親友の星夜と楽しそうに話しながら教室の入り口を入る。
千風と美兎は「よろしくね!」と言い足早にその場を去った。
豪の隣の席に勇也が着く。
「丹波、おはよ!」
勇也が笑顔で挨拶をした。
一緒にいた星夜も「うっす!」と白い歯を見せて声をかけて来た。
黒くウルフスタイルの髪はワックスでスタイリングされており、腰から下がるウォレットチェーンや太目のリングはシルバー系のアクセで統一されている。
人懐っこく元気だけが取り柄と言わんばかりの明るい青年だ。
「おはよう」
豪は二人に返す。
席に着いた勇也に豪は早速誘いを入れた。
「暮内が復帰したら、オレの編入とあいつの復帰祝い兼ねて遊びにと誘われたんだけど、一緒に行かないか?」
勇也は楽しそうな表情を浮かべ「いいね!行こう!!」と嬉しそうに言った。
その時離れた席に着いた星夜がその様子を聞きつけ足早に二人の下へ戻ってきた。
「はいはいっ!!その話オレも参加していいっ??」
挙手しながら星夜は乗り込んできた。
「暮内ってことは、美兎も一緒だろ??行く行く!!オレも行くーー!!!」
そんな星夜の様子を見て豪と勇也は思わず笑う。
「お前、分かりやす過ぎだよ」
勇也が星夜の肩に手を置いて言った。
「何だ、あの子とは付き合ってるのか?」
豪が尋ねると星夜の頬が一気に赤くなる。
「や、そ・・・そんなんじゃ、ねーけど・・・さ。あいつとはただの幼馴染っつか・・・」
明らかに美兎の事が好きだと言う反応だ。
「残念だが、星夜を誘えと言う依頼は受けていないんだ。すまないな」
豪がちょっと意地悪そうに星夜に言うと勇也が堪え切れすに笑い出す。
「えーー!!えーー!!だってよ!!向こうも3人だろ??で!こっちも3人!!!はい!トリプルデート!!それで良いだろ~~!!!?」
必死になる星夜の姿に勇也と豪は声を出して笑った。
まだ成立していないこの相関図・・・この先どう展開を見せるのだろう。
ポーン・・ポーン・・・
そんなやり取りで盛り上がっていると、授業開始前のチャイム音が鳴る。
「もうっ!!絶対だからな!!!!」
星夜は最後にもう一度釘を刺し自分の席へと戻っていった。
「朝からうるさい奴でごめんな。悪い奴じゃないんだけど」
「あぁ、分かってるさ」
豪に親友のフォローをする勇也に豪が笑顔で返す。
久々に穏やかな時間を過ごしている事に豪は気づく。
高校生と言うのが例えもう仮の姿だとしても、クラスメイトと仲良くする豪の心に偽りはなかった。
「そう言えば、今日の1限目は須吾先生の世界史だな。すっげ面白いんだよ」
「ほお、邦鷹のお墨付きとは、それは楽しみだな」




