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cyber girl ~REIKA~  作者: No_318
使命
44/68

~08~

パタン!


隣の部屋のドアの閉まる音がした。


その音でC-M2X型はフッと目を覚ます。


とは言っても体制はベッドに座ったままで、またもその仕草は静止中から復帰したコンピュータのように。


C-M2X型は一睡もすることなく自分の中の情報をずっと処理していた。


いつしか夜は明けており、白く眩しい日差しが差し込んでいる。


C-M2X型は立ち上がり部屋のドアを開け廊下に出た。


見るとそこには豪が制服を着て歩いていく後姿があった。


学校へ行くのだろう。


「豪・・・」


C-M2X型は声をかけた。


その声に気づいた豪が立ち止まり振り返る。


どうした?と言わんばかりの視線をC-M2X型に向けた。


「いってらっしゃい」


そこに立つC-M2X型がそう言って豪を見送る。


人が出かけるときにかける言葉も知っていた。


それをわざわざ行動に移している。


豪から見ると、いや、誰が見てもそこに立っているのは麗加にしか見えない。


しかし、それもC-M2X型が「人間」を意識しているからこその結果である。


豪は成長を目の当たりにし一瞬笑みを見せた。


「あぁ、行ってくる」


クールに豪が答え、再び歩き出した。





C-M2X型はその足で仁らの元へと向かう。


部屋に入るとそこには書類をまとめている真純がいる。


「おはよう、早いのね」


C-M2X型の姿に気づいた真純が声をかける。


真純の元へ歩み寄ったC-M2X型は「おはよう」と声をかけた。


仁と賢の姿がまだそこにはなかった為、C-M2X型は見渡している。


「先生達ならまだよ?」


真純にそう言われたC-M2X型は再び真純に視線を戻した。


「どうかしたの?」


C-M2X型の様子が気になり真純が尋ねる。


「真純さんには分かる?私にはどうしても分からない。どう処理して良いか分からない。これは何?」


C-M2X型の言うことが良く理解できない真純は詳しく聞く。


C-M2X型は一晩中麗加の持つ様々な情報を整理していた。


情報は大方まとまったのだが、どうしても勇也に対する情報だけが解読できなかった。


「恋愛感情」だ。


他の人間に対しては無い、勇也だけに対する特別な感情。


故に基本的なプログラムでは処理が出来ず固まっていたのだ。


「これは「心」がないと分からないもの。豪がそう言っていた。私には「心」がない。「心」とは何?」


そう言うC-M2X型の姿に真純はC-M2X型が完成し、起動した日の事を思い出した。


表情を持たず、機械的に言葉を発するC-M2X型に感情が無いと感じたあの日の姿。


それがほんの数日でここまで成長している。


「心とは何か」それを想う時点で「心」の芽生えであると真純は感じた。


真純は優しい笑みを浮かべる。


「一言で「心」とは何かを説明するのは難しいことね。「心」と言う物はとても抽象的で目には見えないもの。私達人間にすらその実態は分からないの。哲学的な説明をするより、貴女自身が感じるものがあると思う。それが「心」よ」


C-M2X型は少し考えている。


「感じるもの・・・」


「今貴女は「心」が分からなくてどんな気持ち?」


そう言われるとC-M2X型は再び考える。


「気持ち」と言われてもそれをどう処理すればいいのかを悩む。


少ししてC-M2X型が結論を出す。


「「暮内麗加」の情報には「心が分からない」と言う気持ちの情報がない」


あくまでC-M2X型は麗加の情報しか持たない為、情報に頼るしかない。


真純は質問を少し変えてみる。


「じゃぁ、その情報から想像してみて。もうすぐ貴女は復学して友達に会える。どんな気持ちがある?」


C-M2X型は情報を検索する。


「嬉しい・・・楽しみ・・・早く皆に会いたい・・・」


ヒットした情報を一つ一つ言葉にする。


「そうね。それはね、大きく分けて「喜怒哀楽」というものの「喜」の感情なの。「喜」を感じると人は笑顔になって、ワクワクしたりするでしょ?」


C-M2X型はキョトンとした目で真純を見ている。


「分からないのよね・・・ごめんなさい」


真純が少し不安そうな表情をして謝った。

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