~35~
今まで沢山の患者を見てきた。
そして沢山の死を見てきた。
だが麗加の死を仁はまだ受け入れられないでいた。
不思議な力を持つ謎の少女。
まだ彼女は生きている・・・なぜかそんな風に感じて仕方がなかった。
しばらく仁は一人呆然としていた。
主を失った一室。
そこに姿を現したのは豪だった。
麗加の死を知り、どうしても解きたい謎があったのだ。
『あのっ!』
以前少し息を切らしながらかけてきた麗加の姿が浮かぶ。
『私分からないの。自分がどうしたいのか。だからもう一度あなたに会って話したかっ
たの』
『お前が今、俺に話しかける行動をした。それがもう答えだ』
『え?』
そんなやり取りをしたのを思い出す。
「お前は、答えを見つけることが出来たか?あっけなく逝ってしまって後悔はないのか?」
豪は静かに呟いた。
そのままにされている麗加の私物を何気なく見渡す。
その中に一つだけ妙に引き寄せられるものを発見した。
麗加のE-noteだった。
豪はその機械から発せられる何かを感じ取り手帳を開いてみた。
手帳には麗加の今日までの日記が書かれていた。
真新しい今日の日記のタイトルには「私の答え」とある。
豪は迷いなくその日記を開いた。
~私の答え~
今私に出来ることは、大事な人を守ること。
だから私、彼のために自分に出来ることをやりたい。
この力を彼に使う。
彼の悲しむ顔を見たくない。
でも、この力を使うと先生が言ってたように私は死ぬかもしれない。
それで私が死んだらそれまで。
だけど、もし私がそれでも生きられるのなら、もっと大きな事が出来るのかな。
私にも出来るのかな。
家族を失った同じ境遇のあの青年みたいに・・・
私が死んでしまったら、もう間に合わないかもしれないけど、私も志願したい。
まだ守りたいものが沢山あるから。
麗加の答えは出ていた。
しかし麗加は死んでしまった。
だがあの二人の力があればまだ間に合うかもしれない。
豪は手帳を持ち二人の元へと急いだ。
仁は賢の病室にいた。
「今日患者が一人死んだ。今までこんな気持ちになったことなんかなかったんだけどな。あの子にはもっと生きてほしかった」
賢に胸の内を語っていた。
そこへ豪が慌ててやってきた。
「豪!・・・一体どうしたんだ?」
珍しい様子に賢が少々戸惑いながら問う。
「二人に頼みたいことがある」
豪はそう言って早速麗加の「答え」を二人に見せた。
そして麗加の想いを二人に伝えた。