~34~
仁が気を焦らせたのは勇夜ではなく他の患者だったのだ。
「駄目だって言ったのに!!」
険しい表情でとある患者の元へ駆けつけていった。
扉を勢いよく開ける。
そこではすでに数名の医師達により救急処置に取り掛かっていたが慌しかった。
ベッドに横たわり顔色を悪くしている麗加が今にも息絶えそうになっている。
「容態は!?」
「心拍数、脈、呼吸全て安定しません!」
「いつからなんだ!?」
「発見したのは30分ほど前です!」
仁は勇夜の姿を見た時に麗加が約束を破ったと実感させられていたのだ。
力を使った・・・。
しかも一度に大きなエネルギーを。
それは麗加の生命に関わる。
「暮内さん!しっかりするんだ!!!」
仁が麗加に必死に声をかける。
「彼は救われた!だけど君が死んでしまったら意味がないじゃないか!!」
勇夜が無事・・・
そう聞き一瞬安心した表情を浮かべた直後、けたたましい機械音が響いた。
ピピピピ!
ピピピピ!
「先生!!」
ピーーーーーーーーーーーー!
心拍数がゼロを表示させる。
麗加の手が力なくベッドの脇からスッと零れた。
必死に心臓マッサージを始めた仁だが、麗加の呼吸は二度と戻ることはなかった。
落胆の色に染まる病室。
急に静まり返った。
仁は無念で仕方がなかった。
麗加が死んだ。