~29~
麗加は自室に戻った。
自分が想っている人が弱っているところを目の当たりにしてしまった。
「力になんてなれないのに・・・」
あんなことしか言えなかった自分に嫌悪感を抱いた。
落ち込んでいると、誰かが戸をノックした。
コンコン
「はい」
戸が開くとそこには仁がいた。
検診にやってきたのだった。
「気分はどう?」
「大丈夫です」
笑って見せる麗加だが、元気がないのは仁にも伝わった。
「あぁ・・・採血が億劫・・なのかな?」
「あはは」
仁の問いに麗加は思わず笑った。
何となく勇也のことなんだろうと仁は感じていたが、話題には出さない。
それよりも仁は前の精密検査の時に気になった数値を調べて、そのことで麗加に伝える事があった。
採血が終わり一通りの検診が終わると仁は切り出した。
「一つ報告しておかなければいけないことがあって・・・」
仁は麗加のベッドの横に椅子を置き座った。
「前に精密検査をしたときに、異常がないと報告をしたのだけどね。
一つ気になる数値があったんでそれを調べたんだ」
「異常だったって・・・こと?」
「いや、定期検査のときは異常が見られないんだ。
だから問題はないんだと思う。ただ、ある時にだけ異常値を出していたんだ・・・」
仁自身も確証がない事だったので言いにくそうにしていた。
麗加は黙って耳を傾けていた。
「異常値が出たのは、最初に運び込まれた時と、以前君が僕と弟の話を聞いて飛び出した時と、精密検査の時のその3回だけなんだ。
1回目の時は君も言っていたようにレッドタウンでの時で、2回目も君はあの・・・不思議な力を使っている。
3回目の時は若干数値は下がっていたけど、精密検査の前にも使った覚えはある?」
麗加は思い返していた。
そういえば、精密検査の数日前に初めて豪に会った時に、力を使った。
「先生、それが何か関係するの?」
答えを言わなかったが使ったものだと仁は判断した。
「あの力、もう使ってはいけない。
君の体に大きな負担がかかっているのは間違いない。
一時的に君は危険な状態に陥る。
時間が経てば回復しているけど、もし大きな力を使えば・・・君の命が危なくなる。」
仁に言われ、麗加自身もどことなく体への負担は感じていた。
激しい頭痛がした事もある。
「あの力は制御は出来る?」
「分からない・・・けど、何も起きなければ大丈夫だと思う・・・」
麗加は下を向いて力なく答えた。
しかしそれは麗加の企みを悟られない為にわざと顔を伏せたのだ。
「そう・・・。じゃぁ出来るだけ使わないようにした方がいい。
いいね。」
「はい・・・」
仁は微笑みながら頷き、病室を後にした。
しかしどこか不安な気持ちは拭い去れないでいた。