~25~
仁が病室を後にする。
仁の姿が目に止まった麗加は立ち上がり、仁を追いかけた。
「先生!!先生!!」
「暮内さん」
不安げな表情で仁を呼び止め、問う。
「今運ばれて来た・・・人、大丈夫なの?」
「あぁ、彼なら大丈夫だよ。
ただ、ちょっと神経を痛めてるかもしれないから検査入院してもらうことになった。
彼クラスメイトなんだってね」
「え?」
何故仁が知ってるのか疑問を抱いた。
「彼も君の事、心配していたから・・・」
「え、邦鷹君が・・・?」
麗加の頬が少し赤くなった。
その様子を見た仁は薄々と感づく。
「もしかして・・・恋人?」
麗加が思いもよらない仁の言葉に顔を赤くした。
「ち、違う!!違います!!!!そんな!!」
「あはは。痛み止めが効いて眠ってるかもしれないけど、良かったら顔見せに行ってあげなよ」
そういって仁は勇也の病室を教えてくれた。
麗加は緊張と不安な気持ちを抱えて勇也の病室の前へと来ていた。
ノックをしようとする手が躊躇していてなかなかドアを叩けない。
怪我の様子も心配だが、意中の相手に会うという緊張感がどんどん高まってくる。
ドアの前で寸止めした右の拳を左手で掴み、胸の前において深呼吸をした。
勇気を出し小さくトントン!と二回ノックをした。
「あ、はい?」
中から勇也の声がした。
こんなに近くにずっと会いたかった邦鷹君がいるんだ・・・
そう思うと胸が一杯になり、恥ずかしくてドアを開けられなかった。
ここにきて髪は乱れてないかなどと気になってしまい、アタフタしてしまう。
勇也はなかなか開かない扉に疑問を抱く。
「どうぞ?」
再度声をかけられた。
麗加はもう一度深呼吸をし、震える手でドアを開けた。
「失礼します・・・」
そっと顔を覗かせた麗加の顔を見ると、勇也は安心したように笑顔を見せた。
「暮内!!久しぶり!!入れよ!」
「うん・・・」
麗加はよそよそしく病室に入った。
「千風からメールがあって、大怪我したって聞いて、それでさっき先生に聞いたの。その・・・大丈夫?」
包帯が巻かれた右足は固定されており痛々しかった。
「あぁ、今は痛み止めも効いてきたし、大丈夫だよ。ありがとな」
勇夜が笑顔で答えた。
久々に見る勇也の笑顔に、胸がときめいて久しぶりにドキドキしていた。
麗加は勇也のベッドの横に椅子を置き座った。
「暮内も元気そうで安心した!」
優しい表情で勇也が言った。
「ありがとう・・・みんな元気?」
「そうだな。相変わらずだよ。
あ、一人転任の先生が来たんだ。
それが帰国子女で色んな国周ってたらしくて、話もすっげ面白くってさ!
世界史の先生なんだけど、スポーツも万能で今サッカー部のコーチなんだ」
勇也が少し興奮気味に話していた。
「そうなんだ!凄いね!」
麗加も微笑み和やかな雰囲気になった。
「あの先生サッカーも上手くってさ、同じ選手だったら絶対チーム強くなんのになぁ~~!」
「あは、でも邦鷹君だってエースじゃない!十分強いよ!」
麗加が褒めると勇也は照れくさそうな顔をした。
くすくすと笑い声が広がる。
不意に勇也は切り出した。
「実は・・・今日もその先生に、間一髪で助けられたから俺、足の怪我だけで済んだんだ・・・」
「・・・どういう事?何か、あったの?」
勇也の表情が曇っていった。
「うん・・・死ぬかと思った」
「え・・・」
思いもよらない言葉に一変し、嫌な空気が漂った。