~24~
麗加は自分の病室で日課の日記を書いていた。
E-noteのキーを叩いているとメールのアイコンが点滅していることに気がつく。
麗加はメールボックスを開いた。
「あ、千風からだ」
メールを開けて読んでみると、麗加は言葉を失った。
『麗加大変だよ!邦鷹が部活中に怪我して今麗加がいる病院に運ばれたの!!
膝痛めただけっぽいんだけど、もしかしたら会えるかもよ!!
怪我の原因は話すと長いんだけど・・・』
麗加は最後まで読み終わらないうちに病室を飛び出した。
千風は麗加を喜ばせようとして送った情報だったが、麗加は病院に運び込まれたという事に強い不安を覚えた。
ロビーに出てみると、病院の入り口で車椅子に乗った勇也が診察室に運ばれていくのを目撃した。
痛そうに目を向ける先の足は血も出ていて思ったよりも酷く見えた。
麗加はその場から動けなくなり、ショックで座り込んだ。
診察室では仁が処置に当たっていた。
「少し火傷もしているようだけど、一体何があったんですか?」
よろけた拍子に痛めただけでは無さそうな怪我に疑問を抱く。
付き添いの顧問が状況を説明した。
「一瞬のことで何が起きたのか・・・
ただ空から火の玉のようなものが突然降ってきて、そこに彼がいたので、その時他の教師が庇ってとっさに避けた拍子にこんなことに」
「火の玉?」
仁が疑問を抱く。
まさか、この街にも・・・。
仁は一瞬恐怖を覚えた。
それよりも今は目の前にいる患者が優先だと気持ちを切り替えた。
「痛みは酷い?」
「かなり・・・」
勇也が顔を歪め訴える。
「神経を痛めている可能性も考えられます。
念のため明日精密検査しましょうか。
異常がなければそのまま退院できると思います。
痛みも酷いようだし今日は痛み止めを打ちましょう。
効き目が強いと思うので今日はここで安静にした方がいいでしょう」
「そうですか・・・」
顧問が不安そうに言った。
勇也は病室へと移動した。
仁は痛み止めの準備をする。
「効いてくると痛みは和らぐと思うけど、暫く感覚もなくなるから上手く起き上がれなくなるので何かあったらすぐに呼んでください。万が一痛みが酷くなった時もね」
「はい・・・」
勇也に痛み止めが打たれた。
勇也はずっと気になる事があり、さっきから尋ねるタイミングを伺っていた。
仁が去る前に思い切って口にした。
「あの、先生・・・」
「はい?」
「二ヶ月くらい前からここに暮内麗加って患者がいると思うんですけど・・・」
仁は麗加の事は直ぐに分かった。
「あぁ、はい。いますよ。お知り合いですか?」
仁が優しく尋ねる。
「はい。クラスメイトなんです。
ずっと休んでるから元気なのか気になってて・・・」
勇也が少し照れくさそうに言った。
仁は微笑んだ。
「彼女は元気ですよ。
大分良くなりました。
もう少しで退院できると思います。
そしたら温かく迎えてあげて下さい」
「そうですか・・・良かった」
勇也が安心した表情で答えた。