~21~
豪と仁は賢のベッドを囲む形で座った。
「俺には何が出来る?」
豪がいきなり本題に入った。
賢は落ち着いた様子で説明を始めた。
「豪にはSky system(飛行)とInfinite power(無限の力)が備わっている」
「Sky systemについては習得済みだ。既に活用させてもらっている」
「Sky systemはあまり人目につくところでは自粛してくれ。君がA-D2Xだと疑われる可能性がある。
まだあいつの存在は世の中には知れていないハズだが余計に人類を困惑に導く」
賢が少し慌てて説得した。
豪は静かに答えた。
「・・・了解した」
豪は麗加に見られていることはこの場では伏せた。
賢の様態から余計な興奮をさせると面倒なことになると思ったのだった。
それに麗加の存在はいずれ必要になると豪はどこかで思っていた。
「君のタイプはC-A2X型、C-AはCyborg Attacrの略称だ」
「攻撃型という訳だな」
「そう、それに対してA-D2XはAndroid Defence。防衛型になる。
奴はプログラムされたカードを持つ人間の危機を察し防衛をするように作られた。
防衛方法として銃での遠方攻撃には弾丸も貫かない強力なボディで防衛者を守る、接近攻撃では正当防衛を働かせ攻撃することもある。
つまり攻撃要素も持ち合わせている。
正当防衛はその対象の力に合わせるシステムになっているけど、どんな攻撃にも勝るものでないといけないため、最大攻撃力を発揮すれば並みの攻撃力では敵わない相当な力になる」
「防衛の為の攻撃力も持ち合わせている。攻撃すればするほど比例してそいつも強さを出すと言う訳か」
「だから豪にはそれを越える力が必要だ。君には攻撃を重点に置いたプログラムを打ち込んだ」
「俺に守りは必要ないからな。それで問題はない」
豪は納得している様子で答えた。
それを聞いた仁はどこか安心した表情で言った。
「じゃあ、A-D2Xが見つかれば豪がすぐにそいつを抹消出来るってことなのか?奴の防衛力を越える力を豪は持っているんだ」
だが、賢の表情は一向に深刻そうなままだった。
「理論上はそう言うことになる」
賢は一瞬穏やかになった雰囲気を壊すのを躊躇ったが、すぐにそれも壊した。
「ただ、実際は・・・」
そう口を開いた賢に二人は視線を向けた。
「A-D2X衛星が機能してないはずなのに、A-D2Xは動いている。
これは理論上では起こり得ない話なんだ」
その一言に二人はさっきまでの余裕を失った。
仁は以前賢から聞かされた事を思い出した。
「管理元が破壊された場合、A-D2Xは作動不可能になるはずだった、そうだったな。
それが指示なしで動いているという事がどういう事なのか」
「それについて何か進展はあったのか?あんたの考えを聞かせてもらおうか」
豪は腕を組み冷静に賢に問いかけた。
「指示がない状態で機能している、これはもうA-D2Xには何らかの自立心が芽生えているとしか考えられない。
極論を言うと「感情」を持っていることになる」
「ロボットが感情を持つ・・・?」
その重大さを仁はすぐに理解した。
「さっきも言ったように奴は防衛型だ。
防衛の対象が何らかのトラブルで自分自身になったとすると、A-D2Xを阻止しようとした者から自身を防衛する為にシステムが作動する。
しかしその力は対象によって加減されるはずだ。
でも、町ごと爆発を起こせるなんて・・・そんな数値はプログラムされてはいないんだ」
「何が言いたい?」
慎重な賢に対し豪は早く結論が聞きたかった。
「A-D2Xは感情によって莫大な力を発揮できるようになっていると考えられる」
「まるで怪物だな・・・」
豪は吐き捨てるように言った。
「豪のInfinite powerも引き出すには君自身の感情が影響する。
それは感情が力を規制してしまうこともあるという事だ。
豪の体は半分が生身のままだ。
仮にInfinite powerを引き起こしたとしてもその身が先に悲鳴をあげる可能性が高いんだ。
理論上A-D2Xを超える力を持っていても、発揮できる力に差が出れば・・・」
「何故俺を完全なサイボーグ化しなかったんだ!」
豪は立ち上がり大声で発した。
「僕には、君から君自身を奪うことまでは出来ない。
それにそうしてしまったら、君の意思で復讐するという事にはならないだろう」
「ちっ!余計な情を・・・」
病室は険悪な空気で一杯になった。