~02~
翌朝。
食卓を囲むある家族の中で父親が新聞を広げている。
この情景はいつの時代も変わらないものであった。
21世紀も10数年が過ぎた頃には紙媒体がなくなり、小型の電子画面をタッチすれば記事が浮かび上がる「news screen」というものが主流になった。
定額料を支払うことで毎日ニュース記事が配信されてくるのである。
「お!『TAGAMIscienceついに完成!ボディーガード型アンドロイド』か~、すごい世の中になったもんだなぁ」
画面をタッチしページをめくった父親が思わず声に出した。
「何をボディーガードするの?」
彼の右手に座り朝食を共にしていた少女が興味を抱く。
「そりゃ、国のお偉いさん達だろうなぁ」
「ふーん。けどその守ってもらう側が悪党だったら最悪ね」
「ははは、恐ろしいことを言うな麗加は」
「狙われるようなことをしなければいいのよ」
毅然と言い放ち、甘い香りのアップルティーの入ったカップに口をつけた彼女の名は暮内麗加。
高校二年生。
160センチない背丈に少し細身の体型で、姿勢良く座っている。
サイドが長めの前下がりボブスタイルの髪は真っ直ぐに伸び、差し込む日差しに時折ブラウンに輝く。
制服は真面目を保ちそれが彼女の性格を物語っていた。
「麗加!グズグズしてると遅れるわよ」
「はーい!」
キッチンのカウンターから顔を覗かせ知らせたのは彼女の母親だ。
最後にもう一度アップルティーに口をつけ席を立った。
「おねーちゃん、いってらっしゃい!」
部屋を出るときに食卓から元気な少年の声が飛んできた。
手を振ってニコニコしているのは10歳年の離れた弟、麗雄だ。
「いってきます!」
麗加は笑顔を返した。
「今日、ママたち昼前におじさんのとこに向かうから学校終わったら直行で来てね」
「うん、分かった。いってきます!」
笑顔の見送りだった。
玄関を開けると激しい機械音が響きわたっていた。
車道は通勤する人々のモーターカーで混雑をしている。
上空には鳥のような翼をもつ銀色の小型の機体が飛び交う。
麗加は見慣れたいつもの風景の中を歩き進んだ。
明日は麗加の住む街から2つ隣の街に住んでいた叔父の三回忌。
そのため麗加家族は前日から叔父の家に行くことになっていた。
真面目な麗加は学校を休まず出席し、後から合流する形をとった。
麗加は生前の叔父をとても尊敬した。
きっとその訳を言うと怒られてしまうだろうから秘密にしているが、麗加は叔父が大好きだった。