~17~
街が変わり果てた姿で落ち着いた頃、豪は必死でレッドタウンに戻った。
その時何かを捜査している男たちを見つけた。
そこにいたのは賢と2名の研究員だった。
豪は賢に近づき何があったのかを聞き、怒りを爆発させた。
「ここで俺の家族が待ってたんだ・・・
それをあんたらの「失敗」で失ったって言うのか!?
ふざけんな!!!!」
豪は賢に掴みかかり怒りをぶつけた。
最初は意味が分らなかった。
意図的に賢らが街を破壊したのかとすら思えた。
しかし、彼らも必死だった。
豪は深い悲しみと怒りを胸に刻んだ。
そして、自分の中にある決意が浮かんだ。
「あんたTAGAMIscienceの人間なんだろ
だったら俺を改造しろ!」
賢は豪の申し出に驚いたが、即断った。
「それは出来ない…
僕らのした事で被害に巻き込んでしまった上、それでは責任まで押しつける事になる」
被害者を更に巻き込むなんてことは到底出来ない。
「これは僕らの問題です
気持ちはとても感謝致します」
でも、自分たちの力で止めることも正直現段階では出来ない。
豪は家族を失い、生きる意味を失った。
それを奪った人造人間を自分が潰してやると心に誓ったのだ。
豪は諦めなかった。
「俺はヤツに大事な家族を奪われた
俺にはもう生きる意味がない
もちろんあんなものを生み出したあんたらだって憎いさ
でもヤツは俺の手で潰したい」
そのために、自らの体をサイボーグ化し、匹敵するプログラムを打ち込んでもらえば潰せるだろうと話を持ちかけた。
しかし、人間をサイボーグ化することは違法行為であった。
「仮に、君に強力な戦闘力をプログラムし、それを君自身の意思でコントロールして、感情によって爆大なパワーを引きだせればA-D2Xを停止させる事が出来るかもしれない…
だけど、人間を戦闘用にサイボーグ化させることは違法行為なんだ
君まで巻き込む訳にはいかない」
賢はなかなか首を縦に振らなかった。
「今更違法もクソもあるか!!
だったら他に手はあるのか!?
奴を止めなければこんな爆発は他にもどんどん起こるかもしれない!
地球そのものがふっ飛ぶ可能性だって有り得る!
時間はないはずだ!」
「君はどうしてそこまでしてくれようと…?」
「俺はTAGAMIに憧れていたんだ
今回のプロジェクトだってホントはすげぇと思った
いつか俺もプロジェクトに関われる日を目標にしてたんだ
こんなことになるとは微塵も思わなかったが…
憧れが憎しみに変わったが、逆に俺がTAGAMIのプロジェクトを潰してやれる
光栄なことだ」
賢は申し訳なさと有難さで何度も豪に頭を下げた。
「全く情けない話だ…
すまない…」
そして豪は言った。
「奴にあんたらは殺させない
あんたらを殺すのも俺だ」
豪は賢の研究所へ一緒に行った。
地下奥深くの部屋に入った。
性能なコンピューターに賢は一睡もしないでサイボーグ化するためのプログラムを打ち込んだ。
そして豪はコンピューターによりサイボーグ化したのだった。
それから1ヶ月以上が経ち、生まれ変わった豪が外へと出てみると、そこも爆発の跡地になっていた。
豪は怒りを覚え、賢の生命反応を頼りにこの街へとやってきた。
そして偶然麗加の事故現場を見て、麗加も同じサイボーグ化した人間なんだと思ったのだ。
「意味が分らない・・・確かに私も、あの爆発で家族が死んだ
でも、私は何もされてない普通の人間なのよ?
あなたがサイボーグだと言うのも、理解が出来ない・・・」
「でもお前も奴のせいで大事な家族を失ったんだ
お前も仇を討ちたいんではないのか?」
「それは・・・
でも私にはそんなこと・・・」
「この前の事故といい今日の俺を見たときに発したあの力はなんだ?
あの力が人間の体で出されているとしたら、お前は相当な力を持っていると思うがな」
事故があった現場で麗加の力を目撃していたのは豪だった。
「やめて!!」
麗加は豪の話を断ち切った。
豪は口を閉ざし、静かにこの場を去った。
宙に浮きゆっくりと飛んでいった。
「飛んで・・・!!?」
麗加は見えなくなるまで豪から目が離せなかった。




