~15~
ガタッ・・・。
その時、病室の戸のあたりで音がした。
二人はハッとし、その方を見ると、そこには・・・。
「先・・生、あの・・・・」
そこには麗加がいた。
麗加は途中からの話を聞いてしまった。
すべてを理解したわけではないが、ただ事ではない話に困惑し、その場を走り去った。
「暮内さん!!」
仁は慌てて追いかけた。
話を聞かれた・・・。
「暮内さん!!待って!!!!」
仁は麗加の腕をつかみ止めた。
「先生・・・あの人誰??
レッドタウンの爆発って??
A-D2Xって・・・??
暴走マシーンって・・・??」
仁は何も言えなかった。
麗加は怖くなり、仁の手を振り払って再び走り出した。
「暮内さん!!!」
麗加は夢中で走った。
院外に出ており、仁は応援を頼んで後を追った。
『パパやママや麗雄は殺されたの!!?』
それだけは理解した麗加。
回りも見ずに飛び出したその時・・・。
ギュイイイイイイイイイ!!!!!!
急ブレーキを踏みながらモーターカーが麗加に迫り寄せていた。
麗加は道路に飛び出していた。
このままいっそ私も死んでしまおうか・・・。
一瞬そう思ったが、不意に勇也の笑顔が浮かんだ。
麗加はとっさにかがんだ。
「キャァアァ!!!!」
その時、麗加の半径1~2メートル程のところでモーターカーは跳ね返った。
「え・・・・」
その瞬間を見た仁は息を呑んだ。
「今のは・・・一体」
麗加は、そっと顔を上げた。
目の前には衝突で散ったであろうモーターカーの部品が散らばっていた。
それも麗加を避けるように円を描いて。
運転手は軽症を負っていたが無事のようだ。
しかし、轢きそうになった少女が無傷でそこにいることに驚いているようだ。
一体何が起きたのか・・・。
麗加は震えだした。
「何・・・何なの・・・?」
パニックに陥り、そのままその場で気を失った。
仁は倒れた麗加の元に駆け寄った。
「暮内さん!!!」
応援に駆けつけた医師らが担架に乗せた。
軽症の運転手も連れ病院へと戻った。
事故の衝撃で負傷したのではないことはすぐに分り、少し安心した仁だが、あれが麗加の言っていた不思議な力なのだろうか。
現場は騒然としていた。
すぐに警察も来て、野次馬も増えてきた。
その中に、じっとその光景を見ていた一人の男の姿があった。
麗加は鎮静剤で静かに眠っていた。
賢も安静にしていなければならないので話は一旦置く事にした。
仁は頭を抱えて一人悩んでいた。
世界的に名を広げるほどの才能を持った父親が最後に作った防衛用サイボーグが暴走。
そして麗加の不思議な力。
医学だけでは解明できそうもない問題だった。
父親は死に、賢も重傷を負った。
絶縁していたとはいえ家族の問題だ。
放っておけば世の中どうなってしまうのか・・・考えただけで背筋が凍る思いだった。
自分も同じ血を分けた人間だ。
何か出来るかもしれない。
でも・・・。
思いつめる仁の様子をそっと見つめる女性がいた。
「先生・・・大丈夫ですか?」
気遣いながら声をかけたのは青木真純。
過去に重い喘息を患い仁が助けた相手である。
真純も医学に目覚め、今では仁の片腕的存在だ。
「あぁ、大丈夫だよ」
「あまり、無理なさらないでくださいね」
「ありがとう」